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FTPを知るための5つの方法

前回の記事ではトレーニングストレススコア(TSS)について説明してみました。このTSSを記録するのにはFTP(1時間持続できる最大のパワー)を知る必要があります。また富士ヒルなど明確な目標があれば、正確にFTPを把握しておくことは本番のパフォーマンスを予測する上で大事なことですね。

FTPを知りたい理由は、

  • 今の実力を知りたい

  • 富士ヒルなどのイベントでどのくらいのタイムを出せるのか予測したい

  • TSSの基準を作るためのFTPを設定したい

などが挙げられるのではないでしょうか。今回は皆さんご自身のFTPを知るための5つの方法をご紹介します。


1. 1時間の本気タイムトライアルを実施する

FTPは1時間に発揮し続けられる最大のパワー値を指すので、最も信頼できるのは1時間本気で走ることに尽きると思います。しかし、それはなかなかハードルが高いですね。道路で1時間止まらず、周りに何の気兼ねもなく走れる環境はそうそうにないと思いますし、一人でローラーを1時間本気でこぎ続けられる猛者も少ないでしょう(私はできません)。


2. パワーカーブを参照する

皆さんがパワーメーターをつけていて、STRAVAのようなアプリで有料会員(TSSを表示するために)になっていることを前提とすると、一番手っ取り早いのがパワーカーブのFTP推定値をそのまま使うことだと思います。パワーカーブは下図のように、数秒〜数時間継続できた最も高いパワー値をつなげたものです。

STRAVAで2022年の記録を表示

このようにアプリでは日々のライドの中から最高出力を割り出して、自動で図を作成してくれます。私の場合パワーカーブから推定されるFTP推定値は297W(ワット)となりました。

実際には富士ヒルの記録から推定すると280Wだったのでやや高い推定値です。その理由をここで詳しく書くと話が逸れますので控えますが、恐らく15分ほどの峠のタイムアタックの記録(315W)からクリティカルパワーという計算式を当てはめた数値なのかと思います。

私のように普段本気のタイムアタックを15-20分以上行わない方はパワーカーブの推定値が上振れしてしまうかもしれません。でも誤差が4%ほどなのでそれほど逸脱はしていません。

逆に40分前後の本気タイムトライアルが行えれば、パワーカーブはかなり精度の高いものになると思います。

注意点はFTPの推定に使う参照区間を短く設定すると(たとえば6週間など)、その区間に本気のタイムトライアルなどを行わなかった場合にFTPはかなり低く見積もられてしまいます。最近6週間の記録と2022年の記録を出力してみました。

最近のトレーニングでは高い出力を出さずに長く走るようなものを実践しています。6週間分のトレーニングはそれが反映されるので、FTPの推定値は210Wとなりました。

一方2022年全てを参照すると、富士ヒルや峠のタイムアタックなどの全力走の記録が反映されてFTPの推定値は297Wになりました。

パワーカーブを利用する際には、指定したトレーニング期間のうちに全力走を含むものがあるかを確かめましょう。


3. FTPテストを行う

スマートトレーナー(ローラー台)をお持ちの場合、Zwiftやその他のアプリでFTPテストが用意されています。代表的なものには20分テストとランプテストがあります。

20分テストはある程度きつめのウォーミングアップを行った後に20分間全力走を行うものです。

ランプテストは始め軽い負荷からスタートして、1分毎に20Wずつ負荷が増えていきます。もうこれ以上は漕げないところで終了です。だいたい十数分で終了します。

どちらもテスト後にはFTPの推定値を自動で算出してくれるので、煩わしい計算は不要です。全力で頑張るのみ!

しかしテストで計算されたFTPは本来よりやや高いFTP値が推定されているのでは?と感じている方もいるようで、私もその一人です。ちなみに私はランプテストを行った結果、富士ヒルの実走から推定されるFTP(280W)よりも高い295Wが推定されました。

このようなテストでの推定値と実際の違いについて2022年に論文が発表されていて、20分テストから推定されたFTPの値で何分間走れるのか?を色々なレベルのサイクリストで実験が行われました(文献2)。

結果はサイクリング初級者からプロ選手に至るまで、どのレベルの選手も平均すると60分間持続できませんでした。初級者で平均35分、プロでも平均51分でした(下図)。

Sitko, S (2022)より引用

つまり、推定されたFTPが高すぎたということです。また2021年に発表されている20分テストに関して調査した論文では、テスト結果からさらに5%低く補正を行うことが現実的ではないかと述べられています(文献3)。

他にも3分間全力走などのテストも考案されていますが、いずれにしてもFTPの推定には誤差がつきものです。論文が推奨しているようにテスト結果からもう少し低くFTPを見積もる方が現実的かもしれません。


4. 富士ヒルなどの大会の結果からFTPを推定する

もし大会に出場したことがあればになりますが、以前ご紹介した富士ヒルのタイムからFTPを逆算するのも一つの方法です。こちらはFTPを体重比で示していますので、体重比(標高0m)×皆さんの体重(kg)で計算してみてくださいね。今後色んな大会のものを作ってみたいなと考えています。


5. サイクリストレベル別一覧表から決める

こちらは主にTSSのためのFTP値を決めるための方法です。パワーメーターを装着し始めの頃で、トレーニングデータもまだあまり蓄積されていない時期にはレベル別一覧表からざっくりと決めてみてください。こちらも以前ご紹介した表になります(パワー・トレーニング・バイブルを参考にしています)。

体力に自信がある場合には少し上のレベルを、逆に自信がない場合には少し下を選択すると良いかと思います。数値×皆さんの体重(kg)でFTPを計算してみてください。

表中の色は富士ヒルのメダルに相当するパワー値
表中の色は富士ヒルのメダルに相当するパワー値


以上、FTPの値を決めるための5つの方法をご紹介しました。それぞれの特徴を踏まえながら、是非活用してみてください。

まとめ

・1時間の本気タイムトライアウトを実施する
 →かなり信頼できる!

・パワーカーブを参照する
 →推定値から5%低い値を採用する

・FTPテストを行う
 →推定値から5%低い値を採用する

・富士ヒルなどの大会の結果からFTPを推定する
 →誤差(低いor高い)があります

・サイクリストレベル別一覧表から決める
 →はじめの第一歩として!

皆さんの日々のライドがより有意義なものになりますように。





参考文献

  1. ハンター・アレン, アンドリュー・コーガン. パワー・トレーニング・バイブル第2版.

  2. Sitko, S., Cirer-Sastre, R., & López-Laval, I. (2022). Time to exhaustion at estimated functional threshold power in road cyclists of different performance levels. Journal of Science and Medicine in Sport (Vol. 25, Issue 9, pp. 783–786).  https://doi.org/10.1016/j.jsams.2022.06.007

  3. Mackey, J., & Horner, K. (2021). What is known about the FTP20 test related to cycling? A scoping review. Journal of Sports Sciences, 39(23), 2735–2745. https://doi.org/10.1080/02640414.2021.1955515


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