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#16 筋トレは巡行中の主観的運動強度を下げラスト5分のパワーを向上させる

最大筋力が高まることで一踏み一踏みの主観的な運動強度が下がって、心拍数も低くて済む。そして終盤のラスト5分の平均パワーも高くなったよというお話です。

筋力トレーニングとロードバイク関連の論文レビュー第三弾は、主観的運動強度にスポットを当てたものを紹介していきます。

第一弾、第二弾も是非併せてお読みください。




この論文が検証したこと

論文レビュー#14と#15では、筋力トレーニングで変化するサイクリングエコノミーやRFD、筋線維タイプなどの客観的な現象についてご説明しました。

今回のレビューのキーポイントは主観的運動強度(RPE)で、以前にメンタル関連の論文レビューでも扱ったこの主観的な指標が変わるのかを検証しています。

検証の方法は実際のロードレースを模した内容となっていて、比較的強度の低いパワー(テンポ強度)で185分間巡行し、その後に5分間全力走を実施。

自転車トレーニングのみのグループと高強度の筋力トレーニングも併せて行ったグループで、どのような違いが出たのでしょうか。


RPE(主観的運動強度)

ここで主観的運動強度についておさらいしておきます。

RPEとはRating of Perceived Exertionの略で、日本語では主観的運動強度と言います。

「今、どれくらいキツイ?」を数値化したものとお考え下さい。

もしキツさを言葉で表現するとしたら、

まだまだイージー
けっこうキツイ
もうダメ

運動中に感じる主観的なキツさは言葉に表すと色々なバリエーションがありますね。ご自身の今の状況を表す言葉は千差万別。

このままでは主観的なキツさというものを検証することができませんが、表現は違えど共通して感じているキツさ加減を数値にすることは可能なのではないか?

そう考えた科学者が検討を繰り返して誕生したものがRPEです。

使い方は至ってシンプルで、下図のRPE表にあるように今の状況に最も近い表現を選び、その横にある数値を記録する。これだけ。

すごくシンプルなのですが、あるRPEの数値から限界の20に至るまでは割合一定の間隔で徐々に数値が上がっていくといった科学的な裏付けもされており大変便利な指標です。


検証方法

今回の検証には週に10時間前後トレーニングをしている一般の男女サイクリストが参加。

参加者は以下の2グループに分けられました。

  • 12週間通常の自転車のトレーニングを行うグループ

  • 12週間、高強度の下肢筋力トレーニングも併せて行うグループ

高強度の下肢筋力トレーニングはレッグプレスなどを4-10RMで二日に一回実施しています。

検証として12週間のトレーニング前後で比較的低い強度(テンポ強度)による185分走+その直後に5分全力走を実施。185分走の強度はトレーニング前後で変えずに同じ強度を採用しています。

高強度の筋力トレーニングも併せて行ったグループで、低い負荷で185分間巡行している間のRPEはどのように推移していくか、そしてラスト5分の全力走の平均パワーに違いがでるのでしょうか。


検証結果

検証の結果、以下のことが分かりました。

高強度の筋力トレーニングを併せて行うことで、

  • 下肢の最大筋力が26%アップ

  • 12週間後、強度の同じ185分走を-6%低い心拍数で巡行できた

  • 185分走を-8%低いRPEを保ったまま巡行できた。つまり主観的に楽になった

  • ラスト5分の全力走で高いパワーを維持できた

自転車トレーニングのみのグループでは12週間の前後で変化が見られなかったことから、上の結果は筋力トレーニングを併せて行った効果であると解釈できます。

論文の筆者は最大筋力がアップしたことで、ペダリングの負荷が主観的に楽になり、ラスト5分も高いワット数を維持できたのではないかと考察しています。

185分走のRPEが低くなり楽に感じていると同時に、心拍数も少なく済んでいることから体への負担度も少なくなっていることが伺えますね。


まとめ

筋力トレーニングで巡行中の主観的な運動強度が変化するのか、そしてラスト5分のパワーが改善するのかを検証した結果、主観的な運動強度が下がり楽に巡行できてラスト5分のパワーも高くなりました。

パフォーマンスが主観的な運動強度(疲労感)にかなり左右されてしまうことを以前のレビュー記事でご紹介したように、体の状態が同じだったとしても疲労感を低く抑えられることは大きなメリットです。

筋力トレーニングがロードバイクのパフォーマンスアップにつながるのか?は賛否両論ですが、今回の論文も含めご紹介した三編の論文は高強度の筋力トレーニングはパフォーマンスアップにつながることを支持しています。

高強度の分類は少しあいまいですが、最終的に4-6回ぎりぎり繰り返せる重量でスクワットやレッグプレスなどの種目を3セット、週に2度前後行うことでご紹介した論文は効果を認めています。

このような高強度のトレーニングはフォームが大切になります。フォームが崩れた状態だと腰や膝への負担が大きくなりますので、いきなり実施するのはおススメ致しません。

軽い負荷からフォームを作っていって、ケガのないよう取り入れてみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローをいただけると大変励みになります!


ご紹介した論文

Rønnestad, B. R., Hansen, E. A., & Raastad, T. (2011). Strength training improves 5-min all-out performance following 185min of cycling. Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports, 21(2), 250–259. https://doi.org/10.1111/j.1600-0838.2009.01035.x


<筋トレに関する論文レビュー記事>

<論文レビュー記事一覧>


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