高地トレーニングについて知る
こんにちは、川崎です。今回は高地トレーニングについて書かれていた海外記事のご紹介です。
今回ご紹介する記事では、
「高地でトレーニングを行うとパフォーマンスが良くなるってホント?」
「高地トレーニングってどんなもの?」
「どういう効果があるの?」
こういった疑問に答えてくれています。
高地トレーニングのアウトラインを整理してくれていますので、是非読み進めてみてくださいね。
それではご紹介していきましょう。
ご紹介する記事
アスリートにとって、パフォーマンスを高める新たな方法を模索することは自然なことです。その一つの方法となるのが高地トレーニングでしょう。
この方法は酸素が薄くて息が苦しくなるような高地でトレーニングを行うことを指します。
息が苦しくなる所でトレーニングをする、何だか魅力的には聞こえませんが、この戦略には生理学的な利点があります。トレーニングに対する体の反応を改善して持久能力を向上することができ、競技で良い成績を挙げられる可能性があります。
高地トレーニングについてこの記事で理解を深めてみてください。トレーニングについてのヒントや注意事項とともに、このトレーニング方法についての研究成果をひも解いていきます。
高地トレーニングとは何か?
高地トレーニングとはその名の通り高地でトレーニングを行うことを指します。スポーツにおいて高地とは少なくとも標高2,500mを意味します。
この標高では酸素が薄くなっているので、トレーニングはいつもより辛く感じ、いつもより疲れを感じやすくなるでしょう。
高地トレーニングのアイディアは、あなたの体を低酸素状態に適応させることにあります。それによって海抜レベル(標高0mといった、いつもの標高)でのパフォーマンスが向上する可能性があります。
高地トレーニングを行う人たちはランナー、サイクリスト、クロスカントリー、スイマーなど様々です。
Living high, Traing lowというアプローチ
高地トレーニングのポピュラーな方法の一つに「live high, train low(頭文字をとってLHTL)」というアプローチがあります。
この方法では高地(標高2,500mほど)で生活をして低酸素状態を体に慣らし、その標高では軽いトレーニングを行います。そしてより高強度のトレーニングは標高の低いところ(たとえば標高1,200m)で行います。
このアプローチの目的は高地で生活することで得た適応を高強度トレーニングに持ち込むことです。
高地トレーニングの利点は何か?
まだまだ研究は発展途上ですが、高地トレーニングの利点はいくつか解明されています。
1.筋肉へ多くの酸素が行き届くようになる
トレーニング中、あなたの血液は酸素を筋肉に送り続けています。酸素はエネルギーを作り出すために消費され、筋肉が収縮するために利用されます。
しかしトレーニング強度が高まるに従って、あなたの血液は必要分の酸素を筋肉に送り届けることが難しくなってきて、筋肉は疲労状態に陥ります。
2016年の研究では高地トレーニングと海抜0mでのトレーニングの効果が比較され、高地トレーニングがエリスロポエチン(EPO)という物質の産生を増やすことで筋の疲労を軽減することが報告されています。
エリスロポエチン(EPO)は酸素を運ぶ細胞である赤血球を作るためのホルモンです。EPOを多く作るほどに赤血球は増え、それによって酸素を体中に送る能力が強化されます。
エリスロポエチン(EPO)というホルモン分泌が増えることが高地の低酸素状況に体が適応する一つの方法です。
先ほどご紹介した研究によれば、この適応効果は普段の標高に戻った後でもある期間続きます。より多くの酸素を筋に送り届けられる適応が、普段の標高で競技を行うときの利点になります。
2.有酸素能力の向上
赤血球による酸素運搬能力の向上に付随し、高地トレーニングは酸素摂取量(VO2、VO2max)を高めます。VO2max(最大酸素摂取量)は高強度のトレーニング時に体が消費できる酸素の1分あたりの限界量を意味します。
有酸素能力の向上は2013年に行われた長距離エリートランナーの研究でも確認されており、28日間の「Living high, Traingn low」メソッドによって選手のVO2maxが向上しています。
同じように2020年に行われた研究においても、12名のランナーが11日間の高地トレーニングによってVO2maxの向上が見られました。
3.乳酸耐性の向上
高強度トレーニング中あなたの筋が酸素を使うに従って、乳酸とよばれる物質が作り出されます。
乳酸が作られると同時に水素イオン(H+)も作られ、筋線維内が酸性に傾くことなどによって疲労が起こります。その結果、同じトレーニング強度を持続することが難しくなります。
2018年の研究で、高地トレーニングが乳酸耐性を高めるという結果が発表されました。乳酸耐性が高まるとは、より高い乳酸値にも筋線維が耐えられるようになるということです。
そして2020年の思春期のランナーを対象に行われた研究では、高地トレーニングが様々な血中乳酸レベルにおいてより高いパフォーマンスを発揮できたことが報告されました。
マスクトレーニングの効果はある?
ここで一呼吸おいて、話題を変えてみましょう。
マスクをしてトレーニングを行うことは、疑似高地トレーニングになるのでしょうか?
答えはNOです。
マスクトレーニングは吸い込める酸素の量を制限するため、より強い呼吸を促します。このことが高地トレーニングを模しているとされていました。
しかし2016年の研究によってマスクトレーニングは酸素分圧の低下は起こらずに(高地のような低酸素状態ではなく)、高地トレーニングを模しているとは言い難く、高地トレーニングのような効果は得られないと結論づけられました。
ただ、マスクトレーニングは呼吸機能の強化にはつながると考えられます。
高地トレーニングをする際のアドバイス
高地トレーニングを効果的に行うためのアドバイスに以下のようなものがあります。
トレーニング強度を下げましょう
低酸素環境のため、高地ではトレーニング強度を落とす必要があります。それによってより安全に体の適応を促せて、元の標高に戻ってもトレーニングにハードに取り組めます。
もとの標高に戻ったら、軽めのトレーニングから始めましょう
体が標高の変化に順応するために、軽めのトレーニングから始めましょう。
標高は徐々に高めましょう
高地に適応するため、いきなり標高の高いところで行うのではなく徐々に標高を高くしましょう。
丘や峠でインターバルトレーニングをしてみましょう
丘や峠を登って、ゆっくり下り、また登ります。このようなインターバルトレーニングが高地トレーニングのための準備になります。
呼吸トレーニングを行いましょう
呼吸機能を高めるために、普段から呼吸トレーニングを行うことをおすすめします。
高地トレーニングのデメリット
高地トレーニングはパフォーマンスを高められる一方で、デメリットもいくつかあります。高地を訪れてすぐにハードなトレーニングを行うと、高山病になる可能性があります。これは高い標高にいきなり訪れることでも起こり得ます。
高山病の兆候には以下のようなものがあります。
頭痛
疲労感
吐き気
食欲低下
嘔吐
ひどい場合には、脳浮腫や肺浮腫などが引き起こされる可能性もあります。
このような高山病のリスクを低めるために、以下のことに気を付けてください。
こまめに水分を摂取しましょう
高地では呼吸を強く行うためにいつもより多くの水分が失われます。こまめに水分を摂取しましょう。
高地トレーニングをする前に医療検査をしましょう
肥満傾向であったり心臓や肺に問題を抱えている場合は特に注意を要します。
栄養士に鉄分についての状況を評価してもらいましょう
鉄分が低い場合ヘモグロビンが損なわれ、高地トレーニングの利点である赤血球の増加は見込めません。
高地トレーニングは有酸素能力や乳酸耐性、酸素運搬能力の向上が期待でき、総じて持久的な能力の向上に役立つ可能性があります。高山病のリスクを抑えるためにゆっくりと標高をあげて、トレーニング強度を落としましょう。
安全な高地トレーニングを是非実施してください。
みなさんも一度は高地トレーニングに興味を持たれたことがあるかもしれません。
今回はそんな高地トレーニングの効果、実施に際してのアドバイス、高山病への注意などが分かりやすくまとめられた記事をご紹介しました。
今回出てきた「Living high, Traing low」は、富士ヒルクライムのゴール地点である五合目(標高約2,400m)で暮らして、スタート地点である富士北麗公園(標高約1,200m)あたりでトレーニングをするイメージかと思います。
富士山山頂まで登ったり、富士ヒルクライムに参加することで高い標高がいかに息苦しいものであるかを体感したことはありますが、私自身は高地トレーニングを行ったことはありません。
高地トレーニングの効果、一度経験してみたいなと今回の記事を書きながら感じました。
今回も最後までお読みくださりありがとうございます。
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