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簡易的なトレーニング計画のシュミレーション
先日の記事へのご意見のお礼
先日投稿した記事(FTPとトレーニング負荷の考察)について、たくさんのご意見を頂くことができました。
多くの方よりリアクションをいただけたこと、誠に感謝しています。
そして頂いたご意見の全体的な印象としては、やはり理論値をつなぎ合わせても実状にそぐわないケースは体力水準が高い場合に多いということです。
皆さまそれぞれの経験と方法論のバリエーションが増えると、一つの曲線としてまとめてしまうことに無理が生じるのは必然で、ここに科学と実践のギャップが生じてしまうのがスポーツ科学の難しいところだと思います。
しかしながらそのギャップを少しでも埋めていくことは、きっと多くの方の役に立つことだと考えています。
ギャップが広すぎて意味がないと思われることも、そのギャップを少しでも埋めることで新たな意味を見出せることは、この世の中多いのかなと感じています。
そのため今後も引き続き考察を行っていきますので、また読んでいただけると嬉しいです。
頂いたご意見と皆さんの実状データなどから、今回の記事を役立ててもらえそうな対象としては以下のような方を想定しています。
最近ロードバイクでトレーニングを始めた方
FTP(1時間維持できるパワー)が4.0w/kg以下(下の図の赤で囲った活動レベル)の体力水準の方
長期トレーニング負荷(CTL)とFTPの関係性が概ね一致している方
以上のような方にとって、この記事が有益なものになれば幸いです。
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はじめに
先日の記事ではトレーニング負荷量とFTP(1時間維持できるパワー)の関係性の考察を行い、長期トレーニング負荷(CTL)とFTPについて全体を俯瞰してみました。
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今回の記事では週間トレーニング計画を簡易的に(5分ほどで)作ってもらって、目的とするレースや大会に向けて長期トレーニング負荷(CTL)のマネジメントをしてみてもらいたいと思います。
そして先日ご紹介した長期トレーニング負荷(CTL)とFTPの関係表を利用して、
目的のレースや大会までに必要なFTPをどう培っていくかを計画する
現実的にFTPをどれほど向上できそうかを把握し、タイムや順位などの目標を具体的にする
FTPを高めることは思っているほど簡単にはいかないことを実感してもらう
ことなどを皆さんご自身の状況に即して体感してもらえるものになればいいなと考えています。
添付している資料を5分ほどで埋めてもらうと以下のような結果が出てきますので、
説明はいいから資料が見たいよという方は、こちらからダウンロードしてみてください。(説明を見なくてもExcel上で完遂できると思います)
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トレーニングストレススコア(TSS)
今回の記事ではトレーニングストレススコア(TSS)について、皆さんがその存在を知っているものとして話を進めていきますね。
先にTSSについて知りたいよという方は、こちらの記事をご参照いただければと思います。
長期トレーニング負荷(CTL)
「1ヶ月前はあんなにきつかったトレーニングが、今日は何だか余裕を感じる」
このような経験をしたことがあると思います。
これがいわゆるトレーニングへの適応で、皆さんがトレーニングを頑張った証です。
こうした体の適応を促すためにはトレーニングの量(時間)と強度の両方をモニタリングすることが有効で、トレーニングストレススコア(TSS)は大変理に適ったモニタリング指標です。
このTSSの日々の流れを追ったものが長期トレーニング負荷(CTL)と呼ばれるものになり、直近6週間分のTSSがCTLの値に反映されます。
記事に添付している資料では週間のトレーニング内容を計画し、CTLの推移を視覚的に捉えてもらえるようにしました。
実際に計画してみましょう
「今のCTLが30、8週間後の大会にはCTL50で臨みたいけれど、どういう計画がいいのかな?」
「目標の大会まで残り3カ月。FTPを0.2w/kg上げて臨むためには、どれくらいトレーニングをして、どれくらいCTLを上げる必要があるのか?」
こういった疑問を解決するには、少し面倒ですが実際に計算してみることが近道です。
そこで、簡易的にトレーニングを計画・立案して未来のCTLがどれくらいになるのかをシュミレーションする資料を作成してみました。
あくまで「トレーニング計画ってこうやって作っていけばいいのか」という感触を掴んでもらうためのものですので、5分ほどで記入が完了する簡易的なものになっています。
資料をダウンロードすると、以下のようなシートが出てきます。
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資料内では記入してもらいたいところを黄色で示しています。(以下の項目)
目的のレースや大会まであと何週間か
現在のCTL(目安も載せています)
体重
年齢
何曜日に何時間トレーニングするか
どのようなトレーニングをするか(2択にしました)
リカバリー週を入れるか
みなさんに入力してもらうものは以上になります。5分ほどで記入できるかと思います。
入力してもらった情報をもとにFTP基準、CTLを計算していきます。
週ごとの推移と目的とする週に予想されるCTL、FTPを出力するようにしました。
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日々のトレーニング内容の設定を細かくすると慣れていない場合に面倒な作業になってしまうので、今回の資料ではトレーニング内容を
・スイートスポットトレーニング(強度0.82):「1」
・脂質代謝向上(zone2)トレーニング(強度0.62):「2」
の2択にしました。(1か2の数字を打ち込みます)
肝になってくるところは、この週間トレーニングの計画です。
いきなり計画と言われても難しいかもしれませんので、まずは今皆さんが行っているトレーニングに近い状況を設定してみてください。
だいたいで構いません。
私の場合の計画例
例えば私の場合、3カ月後(12週間後)に大会があるとします。
現状では週に5-6時間トレーニングを行っていて、今回の資料のトレーニング選択肢で言うと、
・スイートスポットトレーニング:3h
・脂質代謝トレーニング:2-3h
といった内容で実施しています。
CTLは現在44、FTPは3.6w/kgほどになります。
今のままトレーニングを継続しても目標のタイムには少し届かないため、何とかFTPを3.8w/kgまで高めたい。
そう考えた場合、CTLを高めるにはいくつかの選択肢があります。
①トレーニング時間をもう少し確保する(週に6→8時間前後に)
→トレーニング量(時間)を増やす
②トレーニング時間は変えないで、内容を変える
→トレーニング強度を高める
①のチョイスをした場合、週の脂質代謝トレーニングの合計時間を+1.5時間すると8週後までにCTLは44→52に上がり、推定FTPは3.8w/kgほどになります。
②のチョイスの場合には、脂質代謝トレーニング(軽め)をスイートスポットトレーニング(ハード)に1日置き換える必要がありそうです。
今よりもトレーニングに割ける時間は捻出できそうにないので、②のトレーニング強度を高めることが選択肢になりそうです。
と、今回の資料を使ってもらうとこのように計画を練る作業を進めることがでます。
計画したトレーニングを実際に遂行していくと、ハードすぎて疲労が抜けないことや、反対にまだ余力が十分にあるといった状況になることもあります。
また、FTP(もしくはパフォーマンス)が想定以上、想定以下で推移することもあります。
そういった場合は本番に向けて週間計画を再度見直し、目標実現に向けての戦略を立て直しましょう。
トレーニング計画は、トライ&エラーの繰り返しで洗練されます。
そんな過程も、是非楽しんでもらいたいなと思います。
おわりに
今回作成した資料はトレーニング計画を作る楽しさを知ってもらうため、広くみなさんに活用してもらう目的で公開しています。
そのためお金が絡むような目的での無断使用は相互信頼に欠ける行為ですのでお控えください。(内容についても責任が取れません)
なお資料は一通りエラーチェックを行っていますが、詳細に作りこんだものではありません。
もしチェック漏れがありエラーなどが発生した場合、この記事にコメントいただくか、https://twitter.com/kawasakiakitoにアクションいただければ幸いです。
もちろんエラーでなくても、何かお気づきの点があれば是非コメントをくださいね。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
皆さんのライドが豊かなものになりますように。
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併せて読んでみてください
参考
ハンター・アレン, アンドリュー・コーガン. パワー・トレーニング・バイブル第2版.