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ぼくと絵の話

小さな頃から音楽が好きでした。

ウォークマンにカセットテープを差し込み、ガチャと再生ボタンを押せばひろがる宇宙のサウンド、心震わすメロディ、見たことのない遠くの誰かが紡いだやさしい歌詞が私を包み込む、あの感じが大好きでした。

家で音楽を聴いていると、すかさず母がやってきます。宿題やったの?テスト勉強はいいの?お風呂に入りなさい、早く寝なさい。私は足音が近づくと急いでヘッドホンを隠し、勉強しているふりをしました。

だから私は学校が終わると家には帰らずに、ウォークマンと画材を持って絵画教室に行きました。河原のみちを颯爽と、ゴーイングステディを聴きながら。

絵画教室はいつも私ひとりでした。ここなら誰にも邪魔されず、何時間だって、音楽を聴いていられたのです。私は青春時代をこの狭いアトリエで、ずっと絵を描いて過ごしました。音楽だけが、耳元でずっと流れていました。

私は音楽が聴いていられたらそれでよかったのです、でも先生は言いました。「きみには洋画の才能がある。」父は言いました。「画家はやめなさい、デザイナーにしなさい。」私は少し考えて、「オーディオのデザインがしたい。」と言いました。

それから私は美術大学でプロダクトデザインを学び、オーディオメーカーに就職しました。私がデザインしたレコーダーは、楽器や声の音をとても綺麗に録ることができました。レコーダーは世界中の楽器屋さんに並び、ミュージシャンに届いて、そこから新しい音楽が生まれました。

私はいつしか、私に幸せを与えてくれた音楽と美術に恩返しがしたいと思うようになりました。

音楽が私の心をふるわせ、絵が私をここまで導いてくれました。こんなに素晴らしい世界があることを、これから私は私の子供達に伝えていきたい。

私はまだまだ未熟で、これからどれくらいかかるか想像もつかないけれど、絵を描き続け、音楽を愛していたいです。


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