Re:シロとメロの画集 2/5
この記事を書いている2020年4月、COVID19が全世界で感染拡大し大混乱を引き起こしている。。
Re:シロとメロの画集について・・・この記事は、2019年に刊行された書籍/あけたらしろめ作品集「シロとメロの画集」を、webを介して新たな角度から捉えるべく再編したものです。テキストと掲載画像はすべて再編し、「シロとメロの画集」を補完するものとして公開します。
(※今回は漫画ないです)
まずは音楽を再生してほしい…
apple music - シロとメロのBGM 2 -雪-
Selection / Accistant by Saki Takeda
Book Design by azuzzi
Artwork / Text by aketarasirome
BGM playlist / selection by aketarasirome
2章 Re:かわいい絵をかく理由
書籍版の第二章では、言葉で説明するのが面倒だったり、とっつきにくいテーマを扱う場合でも、かわいい絵で描けばスッと入ってこれるというようなことを書きました。web版では、絵を志す人からよく質問される、どのような考え方で絵を描いてきたか、なぜキャラクターを描くかについて、なるべく分かりやすい言葉で書けたらと思います。
目次
〈基礎編〉
1:人はいつも絵に込められた意味を読み解こうとする。
・絵の言葉を知らないと、絵の意味は理解できない。
・難しい絵を描きたくなる理由。
・シェアされるのは適度にわかりやすい絵。
2:キャラクターの力。
・キャラクターの視線が人を引きつける。
・学校で習わない「表情」という言葉。
・人は絵をどこまで見るか。
3:絵で何を伝えるのか
・深読みは楽しい。
・不思議なことは目の前に溢れている。
〈 基礎編 1 : 人はいつも絵に込められた意味をわかろうとする。 〉
僕がシロとメロの絵を描き始めたきっかけは、SNSの向こう側で活躍するイラストレーターに仲間入りしたいという思いだった。僕はここにいます、こんなことを考えて、こんな絵を描いていますと、誰かに見つけてもらいたかった。それまで僕にとって絵は自分のために描くものだった。でもその時から僕は意識的に、誰かに見せるための絵を描くようになった。
それからまたしばらく、シロとメロの絵を描いて気がついた。人は絵や文章を目にすると、それを読み解いて、わかろうとする。意味がわからないと気持ち悪かったり、不安に感じるだろう。それは例えば、知らない国の人に知らない言葉で話しかけられる居心地の悪さに似ている。
シロとメロがいることで、僕の絵はかなりわかりやすい。どの絵にもシロとメロがいるから、みんな安心して見られる。僕も安心して描ける。実はシロとメロの物語や世界の設定はかなり複雑で、ネガティブな要素もたくさん含んでいる。それでも描き続けられるのは、みんなが見てくれるのは、シロとメロがそこにいるからだと思う。
・絵の文法を学ばないと、絵の意味はわからない
絵を描き始めた頃は、自分の絵がどれくらい人に伝わっているかわからなかった。結論としては、「絵がわかる人」には伝わっているけど、「絵をよく知らない人」にはあまり伝わっていないようだ。それはつまり、自分と同レベルの人にしか届いていないということ。
英単語や英文法を知らないと英語が聞き取れないのと同じように、絵の中に何がどうやって描かれているか、わからないと絵の意味は理解できない。加えて絵描きは、過去に描かれた絵の要素を引用したり、絵以外の、例えば作者の空想の一部を、ごく当たり前に描き入れたりする。鑑賞者はその元ネタを知らない限り、一枚の絵に込められたメッセージを読み解けない。
世の中には絵の読み方をよく理解している人と、そうでもない人、或いは全くわからない人もいる。(それはちょうど日本人で英語を使いこなせる人、少しわかる人、全く分からない人がいるのと同じ感じ。)大勢の人に受け入れられる絵が描ける人は、きっと意識的にみんなに愛されるモチーフや表現を研究し、絵に取り入れているのだろう。
美大を卒業する時、先生に「サザエさんやちびまる子ちゃんの感覚がわからなければデザインはできない」と言われた。デザインや美術オタクのままでは、大衆に受け入れられるデザインは描けないという意味だ。シロとメロの絵には、自分の中にある庶民の感覚も少しだけ織り交ぜるようにしている。
・難しい絵を描きたくなる理由
SNSや美術館で誰かの絵を見るとき、その絵の意味を自分にも分かるよう簡単に解説してほしいといつも思う。(僕はそうだけど、みんなはどう?)
でもいざ自分が絵を描く側に立つと、難解で、高尚で、ミステリアスな絵を書きたくなる。なぜなら誰しも自分自身のことをわかってはいないから。。人にわかってもらえる絵を描くには、まず自分のことをわからなくてはならない。もしくは、少なくとも、その絵の役割をわからなくてはならない。
絵を描くことは、自分の心や描きたいものを理解していく作業だと思う。わからないものをわからないままに描いても、絵は永遠に完成しない。
絵を描く過程で、僕らはたくさん意思決定する。どれくらいの太さの線で、どんな色で、どんな形を描くか、心に描いたイメージと照らし合わせながら紙の上にしるしをつけていく。
ひとつひとつの意思決定が正しいかどうかはそんなに重要ではない。けれど1枚の絵を描き上げるまで膨大な意思決定を繰り返した結果、描く前には見えていなかった「描きたいもの」の輪郭が見えてくる。
絵が完成するということは、自分が描きたかったもの、人に伝えたかったことを理解することかもしれない。自分の心や世界のことなんて、どうせ一生かかっても分からないから、理解というより妥協や納得に近いのかも。だから殆どの絵は、解説するのが難しい。人生の妥協点に過ぎないからね…
・シェアされるのは適度にわかりやすい絵。
人がシェアボタンを押す動機のひとつに、「わかる」がある。人はなにかを理解して、感動したとき、それをみんなにもわかってほしい、わかる快感をシェアしたいという思いでボタンを押す。
絵で食っていきたいなら、なるべくたくさんの人にシェアされる絵が描けた方がいい。SNSでシェアを稼ぐことを、くだらないと思う気持ちも分からなくもないけど、僕の場合はSNSフォロワー数やファンのみなさまの拡散力がきっかけで仕事を頂くことがあるのは事実だ。
そもそも絵はイメージをシェアするために発明されたもので、SNSが生まれるより遥か昔から、シェアを稼ぐ絵には高い価値がついた。宗教画も、肖像画も、浮世絵も、みんなでその価値を共有できるものが良いものとされた。だから、まあ、ここでは、シェアを稼ぐ絵の話をしますけど。
内容を簡単に理解できるものばかりが、たくさんシェアされるわけでもないらしい。「わからない状態」から「わかる状態」に至るまで、何日も何年もかかるものから、数秒でわかるものまでいろいろあるけど、SNSのように情報量の多いメディアでは、20秒ほど考えてわかるくらいが丁度いいのかなと思う。
ここまで書いた、まずは目に止まること、そして、少し眺めて、意味を考えてもらうこと、20秒くらいで何か発見や、なるほどと、メッセージがわかるようにしておくこと、今までかなり感覚的に、なんとなくやっていたけど、シロとメロの絵を描くときは、いつもだいたいそうしてきたように思う。
〈 基礎編 2:キャラクターの力 〉
東京と大阪で、あけたらしろめと秋山慶太のキャラクター展というのをやった。当時はまだキャラクターという言葉をかわいいキャラとか形態とか文字とか、かなり広い意味で捉えていた。
当時のブログ→ http://aketara-sirome.blogspot.com/2013/07/blog-post_24.html
展示後のブログ→ http://aketara-sirome.blogspot.com/2013/11/blog-post.html
ふしぎデザインのサイト→ http://fushigidesign.com/works/2017/09/post-2.html
あの頃はまだ、キャラクターを描き続ければ、きっといいことある、くらいにしか考えていなかったけど、今はキャラクターというものの凄さを少しだけ言葉にできそうなので書いてみる。
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