アマツツミ プレイ後感想
2016年にpurple software様より発売された「アマツツミ」を全√クリアしました。素晴らしい作品だったので、自分の気持ちを整理しつつ少しでもこの作品の良さが伝われば良いなと思いながらこれを書いています。
主人公の誠は言葉によって人を操ることのできる、”言霊”という力を持っています。この言霊の力というのはとても恐ろしいものであり、断定口調で相手に強く念じたものであれば、なんでも実行されてしまいます。(人間が実行できる範囲のことに限られますが。)彼の一族は神の末裔と呼ばれており、その力のためか人里離れた村で暮らしていました。そうはいっても、どうしても聞き漏れてしまう里の外の世界。誠はそんな外の世界に強いあこがれを持って、許嫁である少女、愛を里に残して外に飛び出してしまいます。
丁度季節は夏真っ盛りであり、三日三晩夜通しで歩き続けた誠は歩くことに疲れ果て、倒れてしまいます。
そんなところを喫茶店の娘であるこころに拾われ、身寄りのない誠は喫茶店で住み込みのアルバイトをしながらそこで暮らすことになります。
異能の力を持つため、あまり人とコミュニケーションをとってこなかった誠。そんな誠が、外の世界で暮らし始め喫茶店の店主であるあずきさんや、その娘であるこころ、周囲の人たちと関わりながら”言霊”という力の本質に迫っていく…という物語です。
正直、この”言霊”の力って若干なんでもアリ感があって、ここからどう話が膨らんでいくんだろう…ってプレイ前は気になっていたところがあります。だって、これ恋愛アドベンチャーゲームなんで「あなたは私のことが好きにな~る、好きにな~る」って言ってしまえばおしまいですよね?もちろんこの作品ではそんな無粋なセリフ一斉出てきませんが…
しかし、実際には愛ちゃん√で心をわしづかみにされ、今はクリアしてしまった喪失感、寂しさの中でこれを書いています…これが御影先生マジックって奴か
個人的には、「言霊の力は確かに話の要所で大事になってくるけど、その詳細や歴史はある程度ぼかしつつ、主人公の誠がいろいろな人と触れ合い、成長していく」ことに主軸が置かれていたのが面白かったなーと感じました。このゲームはいわゆる脱落方式と呼ばれるものらしいです。攻略順が決められていて、各ヒロインの√途中で選択肢が出てくるのですが、そこでヒロインを受け入れる選択肢を選ぶと日常シーンがやや多めな派生√に移ることができます。メインヒロインであるほたるの本筋√に進むためには酷な選択肢を選び続けなければいけないのがつらいところではあります…同じような形式の作品だと「G線上の魔王」がそれにあたるのでしょうか
自分が今までプレイしてきた美少女ゲームの大半は、最初に3.4時間程度の共通パートがあり、そこから進みたい個別√に進むことができる…というものでした。これはこれでヒロインと主人公という一対一の構図がわかりやすく、また†相思相愛†感もでていいものです。
しかし今作「アマツツミ」においては主人公はそれまで他人とほとんどコミュニケーションをとることができていなかったので、個別√に入って急に女の子とイチャイチャされても違和感があります。そのためこの脱落方式がばっちりはまっているなーと感じました。事実、攻略順でいうと一番初めであるこころちゃん√の序盤のほうでは主人公の感情表現は薄く、口数も少なめです。それが最終パートのほたる√に差し掛かると愛ちゃんや響子とも対話し、コミュニケーションをとったことにより角が取れ、人間らしくなっています。
また少しネタバレになってしまうかもしれないのですが…メインヒロインであるほたるが、完全な善とも悪とも言い切れない存在だったことがとてもよいと感じました。最初、誠は人とコミュニケーションをとってみたいという欲求を抑えきれずに里を飛び出しました。そこで彼を助けてくれたこころちゃん、アルバイトとして採用してくれたあずきさんは間違いなく”善人”です。響子は卑屈な感じは否めないですがそれも彼女の境遇を考えると仕方のないことであり、根底には優しい心を持っています。許嫁である愛は、里を飛び出した誠を追いかけ、一緒に喫茶店で暮らし始めます。そもそも非があるのは誠のほうなのだから、言霊を使って誠を里に連れ帰っても何も問題はないはずです。しかし、彼女は彼の「他人とコミュニケーションをとりたい」という意思を尊重し、近くで見守ってくれます。ほんと、なんでこんないい子がいるのに里を飛び出したんや…
しかしほたるは、一概に善とは言い切れない存在であり誠はそんな負の側面を持つ”彼女”に対してさえも、真正面からコミュニケーションをとろうとします。人間がみんな良い部分ばかりなわけはなく、汚い部分、醜い部分とも合わせて向き合っていく必要がある…そういう当たり前のことを再認識させられました。
https://www.youtube.com/watch?v=bUc0os0quVo&list=LLbFhfgIuQ64qPbVRHcVS3fw&index=16&t=0s
最後に、こころちゃん共通√が終わり、これから物語が動き出しそうって時にOPが流れるんですけど…これが本当に最高なんですよ。まずイントロからして、何かが始まりそう感があって良いですよね。それから、サビの盛り上がるところで作中のCGが走馬灯のように映し出されるのも良い。”大好き”って黒板に書いてあるのも切なさポイントマシマシで良いし、最後に映るほたるが美しすぎますね…このキービジュアルは天下とれますわ。タイトル画面で放置してると勝手に流れ始めるので、多分50回以上はこの映像見てます。初めて聴いたときにこれはきた!と思い自転車こぎ倒してゲオに橋本みゆきさんのアルバム借りに行ったのはいい思い出です。
最後の最後に、お決まりの†鑑賞モード†です。ほんと、克先生、あなたは最高です…