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JJ Voice No.26 竪石洋美さん

プロフィール

竪石 洋美(たていし ひろみ/旧姓:福田)
1953年東京都生まれ
講道館柔道女子五段
主な戦績:
1978年、1980~1982年 全日本女子柔道選抜体重別選手権大会 65kg超級、66㎏級 優勝 
1981年 アジア女子柔道選手権大会(インドネシア)66㎏級 優勝
1982年 世界女子柔道選手権大会(フランス)無差別級 準優勝

私は今から50年前に講道館の女子部で柔道を始めました。当時の女子柔道は試合など無く、稽古と言っても乱取は僅か30分足らずで、あとは昇段のための形の稽古が終了時間まで続けられました。柔道を始めると同時に柔道の魅力にはまってしまった私は強くなりたくて形の時間になると女子部を抜け出して大道場に行き、男性の練習生に稽古をつけてもらっていました。ただ、規則に厳しい先生に見つかると「なんで女子がここで稽古をしているんだ!さっさと女子部に戻りなさい!」と追い返される事もしばしばでした。強くなる為に自宅近くの町道場にも通い、女子部の後に町道場で稽古するという毎日でした。女子部で外国人の練習生に、ヨーロッパでは女子も男子と同じように試合が行われているという話を聞くと試合がしたくてしたくて、悶々としていました。その思いをぶつけるために男子に混ざって大田区の大会に何度も出場しました。もちろん女性は私一人です。「大田区、初段の部5位!」私が柔道でいただいた最初の表彰状です。そんな思いが通じたのか世界女子柔道選手権大会がニューヨークで開催される事が決まりました。それまで頑なに女子の試合を禁じていた日本も世界の情勢に合わせるように第1回の全日本女子選手権大会が行われました。私は全日本で4度優勝し、第1回・第2回の世界女子柔道選手権大会の代表になりました。当時の女子柔道はまだまだ競技人口が少なく、私は両大会とも、自分自身本来の階級の66㎏級と無差別級の2階級にエントリーしました。第1回のニューヨークの大会は両階級とも3位決定戦で敗れメダルを逃しました。しかし、無差別級を連覇し世界の女王と呼ばれたベルギーのベルグマンス選手と僅差の試合をし、旗判定で負けはしましたが、試合経験の少ない日本でも世界に通用すると自信が持てました。第2回のパリの大会ではニューヨークの経験を生かして無差別級で念願のメダルを取ることが出来ました。試合後、メダルを取れなくて落ち込んでいる八戸さんに「初めての国際試合がいきなり世界選手権じゃきついよ!大丈夫!私が銀メダルを取れたんだから、かおりも頑張れ!」と声を掛けました。八戸さんは第3回世界女子柔道世界選手権大会で銅メダルを取り、第1回の無差別の全日本女子選手権大会で61㎏級の小さな体で日本一になってくれました。インタビューで「パリの大会で竪石さんが無差別で銀メダルを取るのを目の前で見て私も頑張れた!」と語ってくれました。ただただ柔道が好きでがむしゃらに頑張って来ましたが、後輩はしっかりと私のタスキを受け取ってくれていたんだと嬉しくなりました。

最後に女子柔道家の皆さんへ。人生は競技を引退してからの時間の方がずっとずっと長いです。貴重な現役時代を大切に、練習後は体のケアをしっかりやって大好きな柔道を楽しんで下さい。

27竪石 3(写真コメントはWord内に記載)

第1回世界女子柔道世界選手権大会(ニューヨーク)ベルグマンス選手(ベルギー)との試合風景(立技の攻防)

27竪石 4(写真コメントはWord内に記載)

第1回世界女子柔道世界選手権大会(ニューヨーク)ベルグマンス選手(ベルギー)との試合風景(寝技の攻防)

27竪石 5(写真コメントはWord内に記載)

第1回世界女子柔道世界選手権大会(ニューヨーク)フェスト選手(アメリカ)との試合風景

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次回は講道館女子部で共に汗を流した、笹原美智子さんが登場します。

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