龍崎翔子氏講演「観光クリエイティブ論」
テーマ:観光業におけるデザイン思考の使い方
京都大学MBA特別公開授業にて、尊敬する龍崎さんの講演があったため、備忘録を残します。
龍崎さん率いるL&G GLOBAL BUSINESSは、従来の観光業の常識を覆す様々な企画で有名ですが、その企画までの考え方を教わりました。
業界外からのアプローチという認識が革新を生む
自分たちは、業界の中から変革を起こしているのではなく、あくまでも業界の外(一般の目線)からホテルというアセットを使ってアウトプットをしている。その結果、図らずも業界の枠を超えた企画になっているとか。
ホテルをどう定義するかによって、誰と仲間になるかが決まるし、フィールドの大きさ(円の大きさ)は変わってくる。
現在取り組まれている産後ケア施設を例として解説してくださいました。
・産後が大変→ニーズ
・経営者の目:付加価値→高単価
・メディアの目:日本でまだない取り組み→とりあげやすい
・神の目:少子化/出産を望まない→全体観としての課題
おもしろいだけで企画を立てるのではなく、すべての選択に「意味」をもたせるべし。それぞれの選択のラインが重なる部分の調和がうまくいっていることが、よい企画である。
L&G GLOBAL BUSINESSの考えるホテルとは
地域らしさを再解釈し、新たな価値を定義・提供することで「行く意味のある場所」にする。
他の業界と異なり、ホテルの商圏はある意味「地球全体」。そして、ホテルだからこそ、日常生活や人生にかかわることができる。
以上の考え方で事業をすると、商品はホテルだけではなくなる。ブライダル向けのサブスク商品やアパレル、またホテルを用いてではあるが演劇までも手掛ける。
パネルディスカッション
リピート率
KPIにリピート率を置いていない。同じ人が来訪するより、その人の周囲の人がどのくらい来てくれたかを重視している。
ホテル来訪者の7割はインスタグラムから。HPからの直接予約は45~50%。普通の都市型ホテルだと5%が平均。
OTAに求めているもの
正直そんなにない。来てくれる人は多いほうが良いため、登録している。
比較検討によって、ミスマッチが生まれていることが課題。そのため、写真等でいわゆるビジネスホテルでないことを強調している。
龍崎さんにとってデータとは?
データは戦術のためにあり、戦略をそこから立てることはない。データは自分の肌感の感覚が正しいかどうかの裏付けに過ぎない。
コンセプト
考えるときは、1on1。龍崎さんと2人で2時間くらいの壁打ちを複数のメンバーとひたすら繰り返す。
ニッチ・マス
ニッチなものも、ホテルという不特定多数が泊まりに来る空間に施すことでマス化する。やってみたいことは、保護猫や保護犬と泊まれる空間。ただ、倫理観の問題で踏みとどまっている。
どのような人材が必要か?
観光業界の人材は、純粋培養な印象が強い。新たな風を吹かすためにも、業界外から人材を採用している。
いわゆるビジネススキルが高い人は、観光業界で今後重宝すべき人材。これまではホスピタリティが評価基準だが、それだけでホテルは成り立たない。
納得感を持って自己決定をできている世界へ
龍崎さんの今後の目標、理想とする世界は「納得感を持って自己決定できる」ということだそうです。これにはすごく共感しました。長いものに巻かれて心のもやを見過ごす人生より、自分の正義を曲げずに生きれる社会が理想です。
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