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マッチングアプリとZ世代の恋愛事情


 Facebookで友達が面白い統計をシェアしていました。1930年から2024年まで「カップルがどうやって知り合ったか」の推移を動画にしたものです。





 約100年前は、友達や家族を通して知り合うのが主流であったのが、女性の大学進学率と社会進出の増加に伴い、職場や大学で出会うケースが増えてきます。それが、1990年代から目に見える勢いでオンラインが台頭してきて、あっという間に60%を超えるのです。




 6割超!!!


 たしかに……うちの息子はゲームを通じて知り合った日本人数名と、お互い本名を明かさないままX(旧ツイッター)で交流を深めています。部屋から漏れ聞こえる通話の声からは、だいぶ打ち解けている様子が伺えます。なんなら高校時代吹奏楽部で苦楽を共にした仲間よりも仲が良いのでは?と思うぐらい。一昨年、息子が日本に行った際そのネッ友と初めて会うと言うので、名前も知らない、どこに住んでいるかも分からない人と会って、監禁でもされて殺された挙句バラバラにされてコンクリートと共に湖の底に沈められるのではないかと心配していたのですが、ネッ友からアメリカへのお土産にと菓子折りまでもらって無事に帰ってきたのでした。その後も彼らとはネットでつながり続け、日本に行く度に親交を深めているようです。



 どうやら殺される心配はなさそうだということが分かったら、次に心配になってきたのは、そのネッ友の中に女はいるのか?ということです。恋愛感情を抱かれでもして、ストーカーになったらどうするのかと。ネッ友のイメージどんだけ悪いんだという話ですが、やはり昭和世代の私には、ネットが犯罪の温床であるというイメージを払拭できないのであります。



 一方では、大学4年の娘までもが、キャンパスでの出会いに見切りをつけ、マッチングアプリに登録したとのこと。すでにマッチングされたアルメニア人の青年と一度デートをしたと言うではありませんか。ネットを通してしか人と出会えないうちの子たちは、きょうだいしてコミュ障なのか?と嘆いていたのですが、この統計を見ると、うちの子たちは単に世相そのものだった、ということです。



 カタログを眺めるようにマッチングアプリで無邪気にデート相手を選ぶ娘を見ていると、昭和な私はなんだか彼女が可哀想に思えてきました。だって、若い頃の恋愛の醍醐味は、「え?もしかしたら私あの子のこと気になってるかも?」という恋心の芽生えから、「あの子、なんか私のこと意識してる?」なんていう戸惑い、気になる子と遭遇した時のときめき、「付き合ってる人はいるのかしら」なんていうもどかしさ、「ちょっと待って、これって両思い?!」というマックスの高揚、その過程にあると言っても良いのではないでしょうか。マッチングアプリは、それを丸ごとすっ飛ばしてしまうのですから。



 逆に言うと、マッチングアプリは始めからデート相手を探している前提だし、お互い外見や学歴や趣味を見て「いいね」しているので、意を決して告ってみたら「え?お前とはいい友達だと思ってたし、オレ全然そういうつもりなかったんだけど」なんて言われ撃沈する恐れがないわけです。



 うちの子らが撃沈から免がれているのは恋愛だけではありません。友達と衝突することも少ないように思えます。私なんか、中学とか高校の時は、ハブられたとか誰某が嘘をついたとか約束をすっぽかされたとか言って些細なことで喧嘩して、かと思えば笑い合いながら疾走して青春を噛み締めたり、ジェットコースターのような毎日でした。息子は多分、友達と喧嘩をしたことは一度もないのではないでしょうか。娘は、日頃SNSで友達とその周辺の動きを注意深く観察しているので、自分と友達の微妙な距離感を把握しており、ショックを受けるような展開が少ないようなのです。デイトレーダーが株式市場を見るような目でSNSを慎重に操作します。LINEやショートメールなどのやり取りは、即レスしたら負け。少し寝かしてから返信するとか。メッセージを送信した直後に言い忘れたことに気づいても、自分から連続送信はせずに相手からレスが来るまで待つとか。私から見たら、何じれったいことしてるんだろうと不思議なのですが、そうやって、ヒエラルキーが生じないよう牽制し合うのが、SNS世代なんだと思います。



 昭和世代の私にとって恋愛の頂点は、両思いが発覚してから付き合い始めの1、2年だと思っているので、マッチングアプリで出会うカップルの頂点はどの段階なのか、想像もつきません。お互い興味がある前提で会い、会話が盛り上がれば再度会い、繰り返し会っていくうちに「まじで好きになったかも」と気分が盛り上がって、向こうはどうなのか気になり……。けど、次のデートは誘われないこともあったりして……。



 あれ?それって普通の恋愛と一緒?



 そう考えたら、オンラインで知り合っても、実際に会った時の化学反応によって続いたり続かなかったりするので、やはり傷つき傷つけることは避けられないのですね。でもやっぱり、「どうせ出会いはオンラインだし」って思うと、うまくいかなくても後腐れないのかな。



 朝寝坊して、トーストを口に咥えながら走っていたらイケメンと衝突してノートを取り違えて……なんて。昭和は遠くなりにけり。



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