優しさのおすそ分け
2021/09/06
先日、犬の散歩に行く際、玄関脇の花壇をふと見たら、うさぎの置物の足下に、雑草と落ち葉に紛れて異物が目に入りました。近寄ってよく見ると、なんと、可愛らしいてんとう虫が描かれた石が置いてあったのでした。
じつは、2、3年前、庭に飾っていたウサギや犬の置物を4、5体ごっそり盗まれてしまいました。何年もかけてコツコツ集めたコレクション。売っても大した儲けにもならないだろうに、家の一部となり生活に彩りを与えてくれていたささやかなものを盗むような心ない人がいると思うだけで、心が沈みました。思いがけなく贈られたてんとう虫は、この沈んだ心を再び持ち上げてくれました。誰がどういう意図で置いてくれたのか分かりませんが、奪う人もいれば、与える人もいるんだなぁ、世の中捨てたものじゃないなぁと思わせられました。
あまりに嬉しかったので、このことを地域の掲示板サイトに投稿しました。主に防犯や迷子のペットの家探し、個人売買に使われているサイトですが、可愛い石のお礼を書きました。
すると翌日、また新しい石が置かれていたのです。
今度は、アザラシの赤ちゃん!
調べてみたところ、カラフルに絵つけをした石をこっそり人の庭に置いて、それを見つけた人を笑顔にしよう、そして優しさや希望を拡散しよう、という静かなムーヴメントが北米にはあるようです。コロナ禍でも何かポジティブで生産的なアクティビティを、ということで趣味人口が増えたのかもしれません。いずれにしても、私の心はその日一日優しさで満たされ、笑顔で過ごせたように思います。
家には数カ所、防犯カメラがあります。好奇心を抑えきれず、夫と共に、その日の防犯ビデオをチェックしました。異変を確認できたのは昼過ぎ。我が家に近づく中年女性の影が。白状すると、可愛らしい子供か、もしくはアリエッティ一家がえっちらおっちら運んでいる光景を妄想していたので、中年女性の単独行為だったことに、私は少しがっかりしました。やはりこういう夢のある行為は、詮索してはいけなかったのだと、反省しました。
でも、私と同じ世代の女性がサングラスにマスク姿で、誰かに見られてはいまいかさと周りをキョロキョロ気にしながら足速に石を置いて去って行く様子は、決してメルヘンとは言えないものの、それはそれでいじましく思えたのでした。
空の巣を持て余している今日この頃。私もやってみようかなぁ、石ころ運動、なんて思ったのでした。