取扱説明書【かつお節がうまく削れない方へ】
またまた書きますが、最近弊社では節がよく売れるようになっています。
正直、社長含めスタッフが驚くくらい、節の売り上げが少量でもずっと伸びています。
めちゃくちゃ嬉しいです。
でもそれと同じくらい、ある『お悩み相談』が増えてきました。
その相談内容が『かつお節がうまく削れません!(涙)』ということです。
これは仕方がないことです。
かつお節削り器という道具が、皆さんの生活から遠のいて、既に「珍しい道具」「骨董品」「丁寧な生活をする人が使うもの」「プロの使うもの」というイメージになっています。
『子どものころ使っていました』という方も、調整の仕方や手入れの仕方を教わっていない方が多く、調整や確認をせずに、買ってきたらすぐに使えるものと思われている方も、残念ながら少なくありません。
そこで、今回はかつお節削り器の調整の仕方をお伝えします。
『粉になっちゃう』『出てきてもボロボロになってる』という方、必見です。
まずは状態を確認
かつお節を削ると『粉になる』『ボソボソする』という方。
下に添付している写真のような状態に削れる方に向けての内容です。
原因は大きく分けて2つあります。
パターン毎に解説します。
パターン①
削り器が新しい。買いたて。
研ぎたて。刃があまり使われていない。といった場合。
これが一番多いパターンです。
新しい刃なのに、なぜこうなるかというと、ほぼ100%のケースで刃の出しすぎから起こります。かつお節の断面が、下の写真の左のようにボコボコになっている場合は、刃の出し過ぎです。適切な出し方なら、右の写真のようにツルっとした断面になります。
これの対処は非常に簡単で、刃を引っ込めることで対処できます。
(ただし、注意がありますのでそれは一番最後に記載します。)
刃を引っ込める、調整の仕方は以下の通りです。
刃の出具合 調整の仕方
まず、刃を引っ込めます。
写真のように鉋台を横向きにして、置いて、方向をしっかり確かめてください。
頭とお尻を確認してください。【鉋台の頭を】叩きますので間違えないでください。
いいですか?
叩くのは木の台ですよ。
この時絶対に鉋の刃を叩いてはいけません。
鉋台の頭を叩くものは、樫(かし)の木がヘッドに付いている木槌です。
金槌は絶対NGです!
鉋台がボッコリ凹みます。下手すると鉋台が割れます。そうなったら取り返しがつきませんので、必ず木槌で叩いてください!
木槌も樫の木です。これ、大事です。
鉋台は樫の木で作られています。叩く方と叩かれる方、両方とも同じ材質の木を使うことで、鉋台へのダメージが少なく、適切に調整ができるためです。ホームセンターなどで1本1000円程度で売っていますので、丸でも四角でもいいので、ぜひ1本手元に置いてください。
では、調整を始めます。
まず、木槌で鉋台の頭を叩きます。ガツンガツン叩かないでくださいね。
木槌で何度か叩くと、刃口から刃が引っ込んだか確認してください。
目視で引っ込んだのがわかったら、少しずつ、 <優しく>鉋の刃の頭をコンコンと木槌で叩いて、台から刃がギリギリ出ない程度まで出してください。
一旦、鉋台を箱にセットして、かつお節を滑らせてください。
多分刃に当たりませんよね?
そうしたら鉋台を外して、またすこーし、優しく、刃の頭を叩いて、箱にセットして、かつお節を滑らせます。
これを何度も繰り返します。
ある時、刃がほんの少しだけ出て、かつお節がなんとなく引っ掛かります。そうしたら、またほんのちょっと刃を出して、を繰り返してください。
少しずつ出していくと、しゅるっと薄く削れる瞬間があります。
そこから出したり、出過ぎたらまた鉋台の頭を叩いて引っ込めての微調整です。
出過ぎの目安は音がザクザクという荒い音と、ひらひらからぼそぼそになった時です。その時はふりだしに戻って、刃を引っ込めましょう。
これを繰り返す事で、ちょうど良い具合が見えてきます。
あとは、慣れです!
『何だよ、結局何度もやらなくちゃいけないのかよ』と思ったそこのアナタ!
そうです。練習あるのみです。
調整のやり方は、これで分かったと思います。
上手にできるかは、慣れだけです。
かつお節を削るのも、台を調整するのも、全て慣れです。
庖丁を扱うのと同じです。
初めは誰もが素人です。
私も初めはうまくいかなくて、社長に下手くそだの、がさつだのと、ボロクソに言われました。
かつお節もうまく削れなくて、何度も投げそうになりました。
でも、皆さん、考えてみてください。
庖丁だって、初めはうまく使えなかったけど、使えるようになりましたよね。自転車だって、初めは乗れなかったのに、乗れるようになりましたよね。パソコンだって、使い慣れたらブラインドタッチがなんとなくでも、できるようになりましたよね。
もう一度言います。初めは誰だって素人です。
だから、うまくいかなくったって、仕方ないんです。当たり前なんです。
上手にできるようになるまでには、練習あるのみです。
どうしてもうまくいかないのだったら、うちに来てください。
お手持ちの削り器と節を持って来られたら、削り方も調整の仕方も教えます。
だから、諦めずに、投げずに、チャレンジしてみてほしいです。
削りたてのかつお節のある生活って、めちゃくちゃ美味しくて楽しくて、一人でムフフ😇になります。
嫌な事あっても、「いいのか?私は家に帰ったらかつお節削るんだぞ?」なんて思えます。
さあ、皆さん、諦めずに続けた先にある、素敵なかつお節 Life にたどり着いてください!
パターン②
いつのまにかうまく削れなくなっている場合。
かつお節の断面はほぼツルツルだけど、削られたものがボソボソの状態になるときは、刃が鈍ら(なまくら)になってます。要は全然切れない庖丁と同じです。
これは、しっかり使い込まれた証でもあるので、誇っていただいていいと思います。(でも、刃が欠けているなら、誇らずに早く研ぎに出してね。)
刃を研ぎ直さなくてはいけませんが、同時に、鉋台(木の板)も一度見てもらって、すり減ったり歪んでいるなら、台直しも必要です。
鉋刃の研ぎ直しは、鉋を扱っている工務店さんや大工さん、または取り扱い方を知っている刃物屋さんにお願いしてください。
表と裏の研ぎに加え、台直しまで理解できている方でないと、単純に刃を研いだだけでは解消しない場合がパターン②では多々あります。
(これまでの経験上ですが、特に、流し(移動でやってくる人)の刃物研ぎは、できると言ってもできていない方が多殆どです。)
一番ベストなのは、製造しているメーカーさんにお問い合わせいただく事です。メーカーさんは殆どの場合、砥ぎ直しのできる刃の場合はちゃんと相談を受けてくれるので、メーカーさんが一番手っ取り早いです。
もしもメーカーが廃業している、メーカーがわからないという方は、うちにご相談いただいても大丈夫です。
ただし、研ぎや台直しは、時間と手間もかかり、専門の知識と技術と道具も必要となる為、有料とさせていただいています。これは手入れをできるようになる為に、何度も新潟や京都に足を運んで、泊まり込みで勉強して身に着けたものですのでご理解ください。
鈍になっている場合は、大抵長期間使われている場合が多いです。
物によっては、本当に親の代から、祖父母の代からという年代物もあります。
その場合、刃が錆びついて鉋台から外せなくなっていたり、木が虫食いなどでボロボロになっていて叩くことが難しかったり、割れてしまったり、そもそも刃のつくり自体が、砥ぎ直しに向かないものもあります。
場合によっては砥ぎ直しなどの処置ができないものもありますので、大事なものの場合には、よくよく確認やご相談ください。
そして、どうしようもない場合は、諦めて手放すのも手です。
新しい削り器で、気分一新して削るのも、すごく楽しいものですよ!
刃を出し過ぎた後の注意
さて、パターン①の刃が出過ぎていた場合の調整方法はお伝えしましたが、たまに困ったことが起こります。
それは、刃を出し過ぎて、刃口が広がりすぎてしまった状態になっていることがあります。
鉋の刃というものは、何か留め具で留まっているわけではありません。
木の板に穴をあけて、その狭い隙間に刃を差し込むことで、いわば木で刃を挟み込んで留まっているのです。
その隙間が必要以上にこじ開けられてしまうと、一度開いてしまった刃口は締まりません。
ということで、抑える力が足りなくなり、刃が動いてしまう場合があります。
そうなると、刃の調整云々ではなくなります。
また、古い削り器でも、鉋台が経時変化で痩せてしまい、刃口が開いてしまうことがあります。
そういった場合は、刃と台の間に紙などを挟み込んで隙間を埋め、動かなくするといった手段がとれるのですが、その場合はものによっては挟み込んだ分の厚みを調整しなくてはいけません。
こうなると素人では手に負えません。
上記に上げているような、扱える人達にご相談ください。
おわりに
今回は少し長い記事になりました。
かつお節削り器が、皆さんの生活から遠のいてしまっている現代で、どのように説明をしたら理解しやすいだろうか、扱えるだろうかと、試行錯誤の日々です。
疑問や質問がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
かつお節は、決して楽なものでも、簡単なものでもありません。
ただ、それを超えた先には、やってよかった!と思える喜びが待っています。それを見つけて、感じて、その魅力にとりつかれますと、段々と習慣として身についてきます。
楽しいですし、何より美味しいです。
少なくとも、うちのかつお節なら、美味しいと思っていただける自信を持っていますし、そう思っていただける節しか出さないと決めて仕事をしています。
削ったものの簡便さもいいのですが、削りたての味香りは別格です。
うまくいかなかった、難しいと思っていらっしゃる方が居ましたら、今一度挑戦いただき、その壁を乗り越えていただけたら嬉しく思います。
尚、私の出汁とり教室にお越しいただいたときに、かつお節削り器と節をお持ちいただけましたら、その場で調整や削り方のレクチャーなども致します。
よかったら、たまにある出汁とり教室にもご参加ください。
(出汁とり教室の案内はHPにてお知らせしております。)
最後までご覧いただき、ありがとうございました!