第18回「鉛筆」2分

幸田町淳太(38)

男(25)引越し業者

○幸田町アパート・外観(夜)

○同・内(夜)

幸田町淳太(38)は落選通知が書かれた葉書を持っている。


幸田町「またか」

と引き出しの中へと突っ込む。

葉書で溢れる引き出し。

幸田町、小さくなった鉛筆を握り、原稿用紙に向かう。

筆が止まる幸田町。

窓の外に浮かぶ月を見る幸田町。

○幸田町アパート・ 外

引っ越しの荷物を運ぶ男。

男「これぐらいですかね?屋根裏とか、大丈夫ですか?」

幸田町「屋根裏?そんなんあるんすか」

男「こういう作りだとあると思うんですけど、よくいろんなの残ってるんで、はは」

幸田町「ふーん」

と室内へ向かう。

○同・内

屋根裏を探す幸田町。

男が入ってきて

男「ここっすね、ここ」

と押し入れの天井を開ける。

男「なんかありますよ」

幸田町「え?まじすか」

男はダンボールや一斗缶くらいの缶詰を屋根裏から下ろす。

男「どうします?」

幸田町「ど。どうしよ」

男「お金だったり」

幸田町「開けてみましょう」

男がダンボールを開ける。

ダンボールには原稿用紙、落選通知葉書。

缶詰には小さくなった鉛筆が満杯に入っている。 

男「あー、残念っす」

幸田町「……」

幸田町、小さな鉛筆を拾い上げ、愛おしく見る。 

幸田町「あの、引っ越し、辞めてもいいですか?」

男「あ、ああ、まあ」

幸田町「すんません、なんか」

幸田町は小さな鉛筆を握って、

幸田町「前もここ自分が住んでたかもしんないですわ、はは」

と、原稿用紙を撫でる。

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