見出し画像

キャンプシーズンも残り一週間~桧山高原キャンプ場

福島県の公営キャンプ場は11月末でほとんどが冬季クローズに入る。クローズと言っても、凍結を防ぐために水道を閉栓するので水洗トイレも同時に使えなくなるだけのことで、水とトイレを自己解決して原状復帰さえ守れば立入禁止になるわけではない。あくまでも黙認、自己責任ということになる。
ただ、春の再オープンまで管理の手は一切はいらないから雪が降っても除雪はされず、現実的にはキャンパーには厳しい季節になる。

通年で利用可能な公営キャンプ場には、矢吹町の大池公園キャンプ場、いわき市の小玉ダムキャンプ場、夏井渓谷キャンプ場、芝山自然公園、福島市の荒川桜づつみ公園などは無料でキャンプができるのだが、芝山を除いては自分好み(完ソロの可能性が高いソロキャンプ)のキャンプ場ではない。

もちろん民間の高規格キャンプ場は通年営業しているけど、イベントもファミリーもソロキャンプも一緒くたにされるキャンプ場は限りなく完ソロに遠いし、何よりお高い。一晩のキャンプに数千円を支払うキャンプは自分には似つかないキャンプと思ってるので利用は避ける。
となると、天気を見計らってゲリラ的に何回かはするけど、私のキャンプも来春までは冬季クローズ期になる。本意じゃないキャンプをするくらいなら、思った通りのキャンプができるまで待ったほうがいい、という自分なりの理屈と経験値だ。

というわけで、残り少ない日数を有効的に使おうと、今季6回目になる桧山高原キャンプ場に行ってきた。桧山高原→高塚高原→日山キャンプ場の3転泊を予定していた。

今年はちょっと早いんじゃない?

いつものようにキャンプ場麓の坊主清水で水を補給してから山を登り、家からちょうど一時間でキャンプ場に到着。テント場へ登る前にトイレ。ん?使用禁止?まだ数日残っているのにトイレは施錠され、炊事棟の水道も閉栓されていた。
いつ来てもほとんど完ソロのキャンプ場だから、市役所の人も「ちょっと早いけど、今日は暇だし天気もいいから停めに行こうか」くらいの軽い気持ちなのかもな。

水は用意してきたし、明るいうちに穴も掘っておこう。
ちなみにシャベルはペグやハンマーやナタと一緒に工具バッグにいつも入れてある。最悪の状況を仮定してこそ最良のキャンプができるってもんよ。


ポツンと一軒家

テント場はいつもと同じ。吹きさらしの原っぱには誰もいない。今夜もぽつんと一軒家だろう。風は真正面の西風そよそよ、でも冷たい風だ。久しぶりにHusky Fighterを建てる。耐風耐水能力は申し分なし、スカートも付いているので隙間風も入らず、2m四方のインナーテントにストーブを入れればすぐに室温20℃の常夏になる。夏の相棒だった3.8m径のティピーテントのほうが広くて居心地は良いけど、容量が大きい分非力なストーブでは手に余る。冬のお籠りキャンプには小さいテントの方が何かと都合がいい。

コットも組み立てず、今回も銀マットと冬用寝袋のみ。
冬キャンプはコットとインフレーターマットが快適と言う人も多いけど、銀マットと寝袋で安眠できれば越したことはない。そういう耐性を持った体に育ってしまったのは、すごくキャンプ向きだと思う。
コットを使わないのにはもう一つ理由がある。2m四方のインナーに石油ストーブとコットを入れると、常時コットに座って過ごすことになる。そうなると頭がインナー天井ににあたって過ごしづらいのだ。銀マット寝袋にあぐらスタイルの方がずっとリラックスできるからだ。インナーが無いティピーテントや雪上で無い限り、Huskyにコットは入れないのがマイスタイルだ。

風に抗う勇者な気分

今は西風そよそよだけど、いつ何時強まるかも知れないし、風の方角だってどう変わるか予測もつかない。だからガイロープを含めて30cmペグ13本はがっちり根本まで打ち込む。手を抜いて不安な夜を過ごしたり痛い目を見るのは自分だから、ここ桧山高原では基本に忠実にきちんとやる。
この夜は陽が沈んでからは西風が強まり、真夜中過ぎたら嘘みたいに無風。ところが明け方から真南の風に変わり、撤収を始めた翌朝9時ころは南風の強風になった。
このキャンプ場の場合は、すぐ側に風車があるから風の向きや強さは一目瞭然、嫌でも風に敏感になる。

今宵の我が家

テントを建てて中に荷物を放り込んで石油ストーブに火を入れる。
持ってきている熱源は石油ストーブと焚き火だけ、アルストもガスバーナーも持ってきてないので、ストーブは大切な熱源になる。まずは湯を沸かして美味しいインスタントコーヒーでリラックス。
そりゃあ、ミルでガリガリ豆挽いてドリップしたコーヒーは美味いと思う。でも家でもやってないことを山ん中でできるわけがない。家で普通に飲んでいる粉末インスタントで十分だ。ところが家のテーブルから瓶を持ってくるのを忘れたらしい。リュックの底から「カフェオレ大人のほろにがスティック」を見つけて呑んだら激甘!薄めの芋酎お湯割りにチェンジした。

熱々芋酎で体の中から温まり、石油ストーブの真っ赤な赤外線を真正面から受けて体の外側も室内もポカポカ。冷たい風が吹く外になんて出たくない。あっさり焚き火は中止に決定した。

冬キャンプと焚き火はセット。焚き火で暖を取る。
当たり前のように言われているけど、「地域によっては」という一言を付け加えなきゃおかしな信じ込みキャンパーが増えるだけだと思う。
マイナス気温、ましてや冷たい風が吹いていたら、焚き火が与える熱よりも奪われる体温のほうがずっと大きい。寒さに耐えながらの焚き火なんて拷問に近い。寒い日はテントの中でストーブを抱いていたほうがずっと気持ちいい。
菓子パンもあるし、柿の種もあるし、インスタントラーメンもあるし、芋焼酎は1.8Lある。夕暮れと星空と朝焼けが見れれば、それで十分。火に癒やされてる暇など無い。

「風が強いから焚き火はやらない」としたり顔で言う人がいる。間違いじゃないけど、風の強い日でも焚き火台の形状を変えれば危険じゃない場合もある。そのために焚き火台はシチュエーションに応じた数種の台を用意すべきだと思うのだけど、理屈がわかってその準備をしている人は案外少ないんじゃないかな。

ずいぶん南に陽が沈むようになった

そしてお待ちかねの夕焼けタイム。
桧山キャンプ場は今季6回目と言っても7月以来4ヶ月半ぶり、ずいぶん南に沈むようになったなー。
ここでテントを建てるのはたいていは同じ場所、西側のいちばん南端。
ほとんど定点観測だから分かる季節の移り変わり。毎回違った場所に建てて新しい景色を探すのも楽しいけど、同じ場所に建てるのも面白いもんだ。

何度も撮ったアングルだけど、やっぱりここの夕陽が好きだ

ひとしきり夕陽を楽しむ。
夕陽フェチで、本音を言えば与那国島の民宿よしまる荘のテラスから台湾に沈む夕陽がいちばん好きなんだけど、キャンプ場部門では知ってる限りじゃ桧山高原の夕陽がいちばんと言っていいと思う。
まだ行ったことがないキャンプ場にも夕陽絶景キャンプ場はたくさんあると思う、でも桧山は東側の風車越しの朝陽も素晴らしい。そのうえ山の頂上の原っぱだから遮る木々もなく大きな星空まで広がっている。夕方~真夜中~朝の総合点ならば、かなり上位に位置する絶景キャンプ場だと思う。
それが予約不要で無料、家から一時間の距離にある。幸せだわー。

温室状態のテントに戻って濃いめの芋酎を呑み始めたら、たちまち眠気がやって来た。
ソロキャンプの鉄則、時間に縛られないこと。ストーブを少し絞って寝袋に入ったの時は19時のNHKニュースが流れていた。


真夜中深夜徘徊中
真夜中深夜徘徊中
真夜中深夜徘徊中

目を覚ましたのは真夜中2時頃。たっぷり眠ってしまったので二度寝とかのレベルではなく朝までずっと起きているつもりだ。あれ?静かだ。風車がほとんど回ってない。無風の真夜中って気象設定も初めてかも。マーキングと換気を兼ねた星空観賞真夜中徘徊→ぬくぬくテントに籠もって深夜ラジオと対話、この繰り返し。テント入口付近の凍った結露を頭でパリパリ剥がしながら外へ出ると-5℃、体が冷えるまで深夜徘徊してテントに戻ると20℃、まるでサウナだった。

冷暖サウナ状態

NHKラジオの選曲も秀悦で「女性シンガーソングライター特集」とのこと。ジョニ・ミッチェル、キャロル・キング、ローラ・ニーロ、ジャニス・イアン、、、朝まで飽きないラインナップだった。
真夜中星空観賞中にテントから漏れてくる音楽がCarole King ”I Feel the Earth Move”なんて出来すぎじゃね?”Oho,baby, when I see your face” なんてハモっちまったじゃねーか。
調子外れの星空ライブも立派な迷惑キャンパーだけど、それが許されるのが完ソロだ。冬の夜中に素足にベンサン+ヘッドライトで歩き回る変質者もどき、でも誰にも迷惑をかけようがない。なんて贅沢なんだろう。やっぱ、完ソロは癖になるわー。

そんなこんなで瞬く間に6時。まるで時報を待っていたかのようにグォングォンと風車が回りだした。方角はきっちり90度変わって真南。
日没や日の出近くになると風力が増すのも、このキャンプ場で学んだこと。それがきちんと教科書通りに実行されるのも面白かった。

ラジオの天気予報では、夕方までは晴れるものの夜は前線通過で激しい雨になる模様、前線が過ぎてしまえば朝には晴れが戻ってくるらしい。
さてどうしましょ?

予定ではさらに高くて寒い高塚高原に居を移してもう一泊のつもりだったんだけど、過去の経験だと高塚高原での南からの湿った暖かい風をたっぷり含んだ前線通過は必ずガラガラドカーンの雷と土砂降りがつきもの、翌日の晴れは確定しているのでウッドデッキにテントを建てて乾燥撤収はできると思うけど、厳しい夜になるのは間違いない。
AMラジオがバリバリ鳴り始めて雷の接近を感じ、ピカッと光ったと思ったら間髪を容れずにガラガラドッカーンと地面まで揺れる。時間にすれば一時間にも満たない落雷タイムを無事に過ごしてももれなく着いてくる土砂降り。避けれるものなら避けたい天候だ。

出直せばいい。来春になったとしてもキャンプ場は逃げない。素直に家に帰ることにした。天気と相談して当日予約の電話をいれるつもりだったので、役場に変更を申し出るまでもない。なっぷなどの予約サイトを使わなきゃならないキャンプ場だと予定を変えるのも大変なんだろうな、などと思いながら日の出を楽しんでいた。

夜明けちょい前

ならば薄めの芋酎お湯割りの軽い酔いから抜け出さなくては。テント内のストーブとコーヒーセットと寝袋以外の備品はすべて車に積み込んでから幸せな二度寝に入った。

いい天気なんだけど…

起きた時は12時になろうとしていた。
ん?テントが揺れてる。頭上の風車はドカドカうるさいロックンロールバンドのように勢いよく回っているようだ。外に出て風車を見上げるとけっこうな南風。風速10mは超えているかも?テントは東西に向けて建てているのできれいに畳んで撤収するには都合が悪い風向きだ。

ストーブから燃料タンクを抜いて本体の残燃料でマルちゃん醤油ラーメンを作り、コッペパン小倉&マーガリンを温めて腹を満たす。最後に甘ーいカフェオレを飲んでストーブもお役御免になる。ストーブを消してほんの少し残った燃料をスポイトで吸い出してストーブと寝袋も車に積み込む。ガイロープを外してポールを抜いてぺしゃんこになったテントは南側のペグだけを残して風にはためく。風には逆らわず風に協力してもらえば上手くテントも畳める。我ながら上手くなったなーと自画自賛しながらテントもバッグにきっちり入れて撤収完了。

さて今年はあと何回キャンプができるだろう?
取り憑かれていたようにキャンプを繰り返していた昨年よりは50泊ほどは少なくなりそうだけど、回数なんてものはさほど大きな後悔ではない。思い通り、狙い通りのキャンプができたのかの方がずっと大事だ。
幸いにも、狙った完ソロ率は去年よりもずっと高い。自分なりのキャンプができてることを褒めてやろう。

いいなと思ったら応援しよう!