2022年 秋の小冒険⑤ 札幌最終日 大仏とモアイ像と紅葉と
猛烈な喉の乾きで夜明け前に目を醒ます。コンビニに走って牛乳1Lをがぶ飲み。禁煙なのは承知だけど、禁を破って少しだけ窓を開け隙間にへばりつくようにタバコを吸いながら刻々と明るくなってく街を眺める。カーカー鳴きながらぴょんぴょん跳ねてゴミを漁るカラス、カラスと競うように空き缶を火ばさみではさむ老女、新聞配達のお兄ちゃん、いわくありげなカップル、大都会札幌の早朝風景は眺めてるだけで十分面白い。
今日もいい天気になりそうだ。
札幌最終日は友人の運転で札幌観光だ。
9時に着いたよと電話が入り、降りていく。「さあ、どこに行く?どこでも運転するよ。」今回どうしても行ってみたかった場所があり「頭大仏」と一言言うと「ん?」と怪訝そうな顔。スマホのメモを見て「正式名称は真駒内滝野霊園」と言うと「お墓だよ。なにかあるの?」と納得がいかない様子。
どうやらネットで見たいものを探して来た外の人と、その地で普通に生活している内の人とは観光地のイメージが大分ズレてるようだ。
「コロナ前は東南アジア系の観光客も大勢来てたらしいよ。」ネットで得た知識を披露しても怪訝さは消えなくて「まあ、場所はだいたいわかるから行ってみようか、30分くらいかな。」とスタートした。
真駒内へ向かう途中、石山地区というエリアを通る。このあたりは火砕流が冷え固まってできた軟石という文字通り加工がしやすい柔らかい石の産地で、昔はダンプがたくさん行き交っていたという。言われてみれば立ち並ぶ家の塀には皆同じような石が使わている。こういう地元ならでわの風土情報を提供してもらえるのは嬉しい。
「街道沿いに黄金色のでかい涅槃像がある。札幌有数のパワースポットらしいから寄ってみる?」大涅槃聖堂にさっそく寄り道。
記帳するだけで無料で拝観できた。たしかにデカい、しかも金ピカ。カタログによれば全長45mの日本最大の涅槃仏らしい。しかし金ピカってのは...東南アジア系の人はいかにも好きそうだけど、純日本人からすれば有難みは欠片も感じない。これから行く霊園でも同じ思いになりそうだけど、新造の巨大建造物をなにがなんでもパワースポットにしてしまう風潮はいかがなもんなのかねー。
写真を2-3枚撮って先へ進んだ。
看板が見えてきて真駒内滝野霊園に到着。
広い、とにかく広い。案内板を見ると霊園エリアは複数個所に別れていて全ての完成はまだなようで建設中の区域もある。考えてみれば北海道は明治以降に入植した人たちが開拓した土地だから先祖代々の墓の数は他県と比べて圧倒的に少ないはず、札幌中、いや全道の墓を全部ここに集めたとしても余りあるほどの広さだ。
子供の頃、墓場は遊び場だった。かくれんぼも鬼ごっこも、三角ベースもお墓でやっていた。でもそれは家と墓が近い距離にあったから。だから頻繁にお参りも出来たし、かくれんぼ中に「どこに隠れてたの?」「じーちゃんの墓の陰」なんて会話も生まれた。
こんな人里遠いだだっ広いとこに埋められたら、ご先祖様も寂しいだろうな。
入口をくぐるとモアイ像のお出迎えに度肝を抜かれるが、そこは我慢。
まずは第一目標の「頭大仏」へ向かう。
遠くか見ると名前の由来に合点がいく。
近くで見上げるととてもハンサムな仏様だ。新しいから汚れも加齢劣化もなく肌もすべすべ。見とれてはしまうけど、手を合わせる気分にはれなかった。
隣のエリア、なぜかモアイ像。
墓場になぜモアイ像?きっとこんな事は考えてはいけないんだ。ただただ映えに徹するだけ。それでいいんだと思う。
生まれたてで歴史の重さは微塵も感じないけど、巨大モアイ像が立ち並ぶ様は壮観だ。
そのとなりはイースター島からイングランドに飛ぶことになる。
ストーンヘンジが出迎えてくれる。「なんで?」は禁句だ。
ふしぎ発見をただ楽しめばいい。映えればいい。
この他にも餓鬼の群れの石像や、ありがたい観音様などもあるのだが、みんなが新しくてお肌がすべすべ。わざわざ汚すことはしなくていいと思うけど、時が経って肌に歴史が浮かんできたときでも、ここに建つふしぎ発見ちゃんたちは今の映えスポットやパワースポットの位置にいるんだろうか?時間を早回しして確かめてみたい気がする。
運転してくれた友人も「中はこんなだったんだ。知らなかった。」と新鮮だったようで、紹介した私もトンデモ観光地、ただの珍スポットでなくてよかったとホッとした。
コロナ禍が功を奏したのか外国人観光客はまったくいないし、この広い敷地内で10人にも満たなかった。ほとんど人ともすれ違わずに想像以上に穴場だった。
ここから先はまた友人にお任せ。
10分ほど走って「国営滝野すずらん丘陵公園」へ。
入口の案内図を見ただけで、笑っちゃうほど広い公園だ。キャンプ場やスキー場まであってとてつもなく広い。国営だけあって整備もキッチリされており、過ごしやすい公園だ。入口から近いアシリベツの滝往復だけ、小学校低学年並みのコースを歩いて紅葉を楽しんだ。
紅葉ならあそこがきっと見頃なはずと1時間走って定山渓の一寸先の豊平峡ダムへ。
ここは山の下の駐車場までしか車は入れない。先の豊平峡へは歩くか有料の電気バスで運ばれるかの二択のみ。当然じーさん二人は電気バスでトンネルをくぐった。
トンネルを潜ると秋が燃えていた。ドンピシャなタイミングで紅葉真っ盛り。
持つべきものは地元の友人だ。旅先に友人がいればその人に頼るべき、旅先に観光バスがあればバスに頼っても恥じゃない。今回の旅で得た教訓だ。
北大近くの彼の自宅に行って奥様にご挨拶。
歩いて北大の構内を散歩。北大構内の紅葉はまだ先のようだった。銀杏並木もポプラ並木もまだまだ青みが強い。
いよいよ今日のフィナーレ。
大冒険最終日に琴似で会った彼女の仕事終わりを待って3人で回る寿司屋でオフ会。ネットを通じて知り合った3人だけど、知り合ってから20年以上が過ぎ何度も会っていて今更オフ会と呼ぶのも変な気もするけど、お互い呼び名は知り合った当初のハンドルネームだし、その方がしっくりする。
人の目や耳が直ぐ側にある回る寿司屋さんでは実名で呼び合っていたんだけど、話が盛り上がれば盛り上がるほどハンドルネームがぽろっと出ては大笑い。楽しいオフ会だった。
今回のようにたまたま安い航空券が取れて、たまたま安く宿が押さえられれば小旅行もぜんぜんアリなのでアンテナは広く広げていたい。
でも実際に旅行をするとなると予約は避けては通れないし、予約を取れば出発からゴールまで決まったスケジュールからは外れないように気を使ってスケジュールをきっちり消化するのが旅行という本末転倒な状態にもなりかねない。
今回はたまたま天気に恵まれていたけど、もしも毎日が荒れ模様だったらどうしただろう。雨の中を空港まで運転して欠航にならない限り千歳まで飛んで、札幌ではなるべく地下ばかりを歩いて、散々な天気ですねと不満を言いながらバスツアーに参加したただろうと思う。楽しむよりも予約を一つ一つ消化するのが目的になってしまう。
そう考えると、天気次第で出発して予約無しで利用できるキャンプ場を探して泊まってのキャンプ生活のほうが性に合っている。しばらくは、たまにの旅行よりも、ついついまた行っちゃったキャンプが中心になるだろう。
オフ会お開き後はホテルに戻って安らかに睡眠、爽やかに起床してスケジュール通りの旅程を消化して事故もなく安全に帰宅いたしました。
秋の小冒険、これにてお終いです。