2022年真夏の大冒険㉘ 札幌最終日 マジックスパイス
3泊は早い。あっという間に札幌最終日。
今日の予定は札幌住みの従兄弟夫婦とご会食。15時三越ライオン前待ち合わせだ。だがその前に行っておかなきゃならない店がある。スープカレーのマジックスパイス(通称マジスパ)である。
マジスパに行かずして札幌を後にしたら悔いが残る。この悔いだけは断じて残しちゃならない悔いなのだ。
今日も胃袋にはかなりの負担をかけることになりそうだ。
マジスパがある南郷7丁目駅も琴似からの地下鉄東西線1本で行ける。ハツラツと宿を出発したのだがハツラツ過ぎて時間を間違えた。早すぎた。開店1時間前に着いてしまう。
気がついたのは大通公園を電車が発った時。公園をぶらついて時間を調整することも出来ない。ちょっと土地勘がある菊水駅で下車、豊平川河畔をうろついて時間をつぶすことにした。
幹線道路を外れて住宅地の中を通り川岸の道路を歩きながら河原に降りる道があれば川に近づいてみるだけ、一条大橋と東橋の間をただあてなく歩いただけ。青空を背景に建つビルを眺めているだけで気持ちがいい。
行き交う車も皆さん仕事中で目的があって走っているんだろう。そんな景色の中を、ただ時間が経過するだけが目的の男が歩く。
「皆様、今日もお仕事ご苦労さまです。申し訳ないけど今日も私は遊んでいます。いいお天気ですね。」なんてことを独り言。
「このへんの家は3階建が多いな。半地下がガレージ、透明の風覆いが付属する階段を登ったら玄関、屋上に登るハシゴも付いている。雪対策なのかな。ところ変われば家の形もずいぶん変わる、面白いなー。」なんてことを考えながら住宅地の中で立ち止まったりしてるんだから絶対に怪しいヤツに見えていたと思う。
傍目から見たら立派な不審者、通報されたり職質を受けなくて良かった。
1時間以上は不審者だった。そしてまた地下鉄に乗って南郷7丁目駅下車、マジスパ到着。
何年ぶりだろう?変わってないなー。
注文に迷うことはない。いつもチキンカレーとビール、辛さは虚空。いつもこの一択だ。
マジスパのスープカレーは辛さによって呼び名が変わる。覚醒<瞑想<悶絶<涅槃<極楽<天空<虚空<裏メニューのアクエリアスと辛さが増していく。
虚空は二番目に辛いランクなわけで、辛さには耐性がある方だと思っている自分としては一番辛いアクエリアスの味世界も、もちろん興味はあるけれけど、虚空の上に行く気は一切ない。
スパイスの効き具合と辛さのバランスをいちばん感じる虚空が好きだし、虚空の辛さがリミットかなとも思ってる。虚空にしたっていつも最初の一口は「辛っ!大丈夫かな?」と思う。激しく発汗しながらも「やっぱり旨いわー」になって一滴のスープも残さず完食することになる。
食は我慢大会ではない。精一杯耐えて我慢しての達成感は必要ない。味わうと耐えるのギリギリのラインがいちばん美味いが持論。挑戦や我慢大会に挑むことはないと思っている保守的な男なのだ。
マジスパとの付き合いは20年前までさかのぼる。
当時にはWebページにブログのように気軽に発信できるものはなく、HTML言語でタグを打ったりホームページビルダーなどのソフトを使ってホームページを作ってWebにアップする時代だった。流行りに乗って私も日記みたいなものをホームページで公開していた。
ある日見知らぬ人から一通のメールが届いた。それが札幌でスープカレーというまるで初耳の食べ物を作っているというマジスパのマスターだった。
今思えばどこでどう繋がったのか、今で言うエゴサ検索をマスターはしていたと思うけど、ネットのおかげでまったく面識もない札幌男性との関係が始まったわけだ。
心当たりはあった。偶然ラジオで聴いて気に入った一十三十一(ひとみとい)と言う新人シンガーソングライターのことを日記に書いた。その日記がマスターのエゴサに引っかかったらしい。一十三十一さんはマスターのお子さんだったのだ。ちなみに一十三十一さんのことは相変わらず絶賛応援中だ。
その後「住所教えてもらえれば自著を送りたいのですが?」のメールが来て、自費出版らしい本が送られてきた。タイトルは『一辛入魂』この本がすごく面白かった。
マスターは私のひとつ上の世代、学生運動が盛んだった頃の世代だ。大学はロックアウトと称して授業を放棄、出入口を封鎖した時代だ。大まかに分ければ、当時の大学生は学生運動に走る者と大学への希望を捨てる者の二種類に分かれた。
マスターは後者で海外放浪の旅に出た。やがて世の中は落ち着き、マスターも結婚して二人の子を授かることになる。
海外放浪時代に体験した摩訶不思議なトリップを子どもたちにも体験させればきっとプラスな経験になると思ったお父さんは、まだ小さかった子どもたちを連れて海外に行った。
一家揃っての全員トリップは危険すぎる、私だけはシラフでいて見守っていなければと、それがマジックマッシュルームだったか煙だったかは忘れたけど、子どもたちだけを異空間に旅立たせたそうだ。
その時、まだ幼かった一十三十一さんが「お父さん、すごいよ。わたし飛んでるよ。」と言ったそうだ。
このエピソードは常識で言えば褒められるものではないだろうし、今のコンプラレベルなら一発アウト。でもこのエピソードで一十三十一の音楽ルーツがわかったし納得もできた。お父さんの行動は全面賛成だし拍手を送りたい。何よりも自分がいちばん感動したこと、自分のターニングポイントだった出来事は子供にも伝えたい。
思いはあってもなかなか実行できるものではない。
マスターとも久しぶりに話したかったが、あいにく外出中とのことだった。
相変わらずの虚空をたっぷり堪能し、噴き出した体液(汗と鼻水)をきれいに拭って店を後にした。
店外のベンチに座って一服。これがめちゃくちゃ旨い。まさに至福の一服。
虚空の後の一服、ダイビングで海から上がった後の一服、絶景の中にテントを建てた後の一服。最高の旨さとタイミングを知っているのでタバコは止められない。
地下鉄で大通公園に着いたけど待ち合わせ時間にはまだ少しあるので、燦々の午後を過ごす幸せそうな人たちを見ながらベンチで休憩。
時間が来たのでライオン像前で従兄弟夫妻と合う。
近況などを話しながら狸小路まで歩いてライオンビヤホールに入店。創業100年の歴史あふれるビヤホールだ。
「120分でいい?」ちょ、ちょっと待ってくれ。ジンギスカンは2日連続も平気だけど、食べ放題飲み放題はキツイぞ。待ち合わせ前に食べてきたとも言えないし...。
「いや、もう若くないんだからアラカルトでいいんじゃない」と食べ放題から逃げた。
ビヤマイスターが注ぐ渾身の一杯の生ビール、ローストビーフ、生ラム鉄板ジンギスカン、ソーセージ、ポテト、チーズ、、、いろいろ頑張って食べたけど、夫妻には「◯◯君も昔の勢い無いねぇ。体悪いわけじゃないよね。」と心配までされる始末。
いえいえ、いたって健康です。本気を発揮できない胃袋事情なだけなのです。
「夜は琴似のホテルでしょ、お弁当買ってあげる。」とデパ地下で弁当と日本酒のお土産まで頂いて別れた。
ダメだ、休まなきゃ動けん。はて、どこで休もうか?
そうだあの手があった。若い頃使った秘策を思い出した。エアコンが効いてて何時間いても均一料金、おまけに観光までできる秘策、札幌市営の路面電車だ。
すすきの停留所で電車を待つ。今はおしゃれでかっこいい新型電車も走っているのだが、やって来たのは昔の東急目蒲線や池上線を思い出すような緑色のオールドタイプ。まあ、こっちの方が落ち着くわ。
すすきの→中島公園→藻岩山ロープウェイ入口→旭山公園通→中央区役所前→狸小路などを通ってすすきのに戻る環状線。一周約1時間の市内観光が200円でできるスグレモノだ。
そう言えば、与那国帰りに極寒の大阪で寒さしのぎの環状線一周したこともあったなーと昔を思い出した。尻をホカホカ温められてすぐに眠っちまったっけ。
さすがに2周目に入る気は失せてすすきのに戻ったところで下車。大通り公園までブラブラ歩いて地下鉄で琴似に帰ってきた。
今日も充実した1日だった。
明日の夕方にはゴールか...家を出てから24日目、札幌最終日が終わった。
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