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バグり飯「みそしるパエリア」

 あるとき、ふと気付いた真理。

「パエリアでみそしる作れるはず」


 それが、すべての過ちの始まり──。

 7月某日。わたしはひどく悩んでいた。この味噌、減らねぇ~。いつも同じ味ばっかりだとアレかなっ? と思ってうっかり買ったけど、しじみ、あんま好きじゃねかった~(なんで買った?)。

 いやうまいけど! 普段は飲まないからこそ旅館とかでふと出てきて「あ~貝ニガテなんよなぁ~」と思いながら飲むと意外としじみの味しみわたるけど。

 そもそもは弊近所のスーパーがフリーズドライみそを置かなくなったのが悪い。なんでだよあれめっちゃ便利やん。まあ家族持ちなら普通味噌で普通に使い切るからそっちのがコスパいいでしょうよ。わかるよ。

 ていうかフリーズドライの具まで壊滅してて泣いている。なぜおれのみそしるライフを……おまえたちはこうも容易く破壊するのだ……。

 子供こそカップやきそばの乾燥野菜めっちゃ好きやん? なあ? フリーズドライみそはともかくフリーズドライ野菜は後生だから残してくれよ。ネット通販頼みはなんかヤなんだよ。宗教的理由で。

 まあそういうことにだったのである。

 せっかく寄り道させられるなら有意義に寄り道しようぜ? ってなワケで、案の定、寄り道が迷い道に変貌したのである。ナムサン。だがしかし、タダで転んでやるべきか。人生七転び八起きである。わたしは思った。


「パエリアのみそしる作れるはず」


 作れねえよチャーハンでラーメン作れるワケねえだろと思わないでほしい。なんでそんなひどいことゆうの。ラーメンライスはみんな食べるよ。そういうことだよ。逆に考えるんだ。みそしるでパエリアうまい貝をやれないか、という問い。

 問おう人間マスターよ。あなたの脳みそはしじみか。

 このしじみ感をどうにかみそしる以外でもみそしれないか? ピンチはチャンス。わたしは炊飯時、釜に米粒がこびりつかないよう、必ず汁物をやる。3合炊いたら角形Ziplock3パックに詰めて残りを汁物にする。これでお百姓さん怒られ対策バッチリなのだ。それでも毎回しじみそしるだと減らないのだ。もう少しなんとかしないといけないのだ。

 わたしはみそしる聖典を心に思い浮かべた。

 できる。できるよ!

 洋風みそしるできるからできるよ! 

 すかさずパエリアを参照。なんか……たぶん……パプリカとかぶっこんだらパエリアみそしるっぽくなりそう! イケる! ピーマンの肉みそ炒めとかそういうのあるからきっとイケる!

 いやだから炊飯時みそしるだけだと減らねぇって話であって。もっと逆に考えるんだ。パエリアでみそしるをやるんじゃない。みそしるでパエリアをやっちゃえばいいさ。そう考えるんだ。

魚介類も肉も入れたパエリアをパエージャ・ミスタ(paella mixta, ミックスパエリア)と呼ぶが、比較的新しい種類のパエリアであり、邪道と考えるスペイン人もいる[要出典]。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 じゃ、じゃじゃじゃ邪道だと……? やりたいじゃん。パプリカに続いて豚バラ参戦ヨシ、追いオリーブオイルヨシ、アボカドヨシ! Go、おれの食材ピストルズ! 「ブッこむ」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!! そうだろ兄貴。

「みそしるでパエリア作れるはず」


 そうと決まればウッホホうっほほーい♪

 ためらいなく豚バラ(冷凍)にしじみのみそをブチまけた後、パエリア感を出すためにオリーブオイル、なんかマルチスパイス塩、胡椒を多めに突っ込む。脂が沁み出てきたらミックスベジタブル(冷凍)、余ってたアボカド(冷凍)を入れる。うっほほ。

こうしてこうしてこうじゃ

 最近、別件でも使ったのだがアボカドはマグロの代用品(?)であるため、肉に突っ込んでも大トロ化するところがある。たぶんうまいだろって思った。後悔はない。うほうほ。

で、俺が産まれたってワケ

 こ……これが……パエリア風チャーハン(貝抜き)……。

 いや大丈夫か? サフランがないので見た目は普通のチャーハンすぎてドキドキするが味はしじみになってるはず。大丈夫かしじみになってて。と思った我、一口目でひゃっほいした。

 うほーーーーーうめーーーーー本当に見た目はただのチャーハンにしか見えないけどうめーーーーーー。お焦げ(パエリア風にはソカラと言うらしい)もうめーーーーー。しじみ、ふわっと効いてる。やはり中華の秘法「うるせえ油ケチんな」は伊達じゃねえ。油にひよってたらうまい痛飯イタメシは食えねえ。食べ終わった後に油の雫が見えなきゃよお……。

 いやはや他人に食わせたらヤバそうな気はする。見た目と味が完全にバグっている。油分もさることながら、この面構えで味としてしじみっちゃうとダメだよね。しじみらない感じなのにしじみっちゃうと人は驚くものなので。具に貝は入れないと。サフランで色付けしないと。

 後は性癖の扉を蹴破る勇気爆発な諸君に任せる。

 ではさらばだ。

われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……