始まりはアメリカ横断旅行

2019年11月、夫が会社を辞めた。

結婚した時から務めていた会社で土日の休日以外、朝から晩まで仕事に追われていた。長女を出産したとき、初めての育児でノイローゼ気味だった私は娘の夜泣きに自分が泣き出し、泣いている娘を放置。深夜帰宅した夫が家に持ち帰った仕事をしながら抱っこしてあやしていた光景を覚えている。

その後、私は正社員として働きながらも順調に第2、第3子と計画通り夏前に出産し、出産した翌年には4月入所で認可保育園にも入れた。(*第1子出産は期せずして8月であった。翌年4月に認可保育園に入れた時に、気づいた。4月から8月に子供を産むと翌年の4月に0歳児枠でスムーズに保育園に入所できることを。9月以降の誕生日は7ヶ月から11ヵ月枠の0歳児枠に入れず、1年以上産休を取得し、激戦の1歳児枠に申し込みとなる。*私の住むエリアの保育園は年間を通じて園児を募集しているが、実際はすべての学年で空きがなく、4月入所のタイミングで入学できないとなかなか認可、認証保育園に入れるのは難しい)

私は時短で働きながらも、夜の会食や海外出張もあったのだが、夫は起床後、シャワーを浴びてそのままオフィスへ出かけ、深夜に帰宅する毎日だったので、家事・育児全般は基本的に私一人で担当していた。

当時、保育園に子育ては丸投げという認識で箸の持ち方からお着換え、トイレトレーニングまで、子どもに何かを家で教えたという記憶がない。とにかく毎日ご飯を食べさせ、お風呂に入れて本を読んで寝かせる。朝起こして着替えをして荷物を持ち、保育園に連れていく。その一連の流れをこなすことで精一杯だった。

平日の夜に会食などがある際は同じ保育園のママ友にお迎えと夕ご飯をお願いし、21時過ぎにはピックアップするようにしていた。長期出張の際は、田舎の祖父母に1週間ほど交代で来てもらったこともある。良いファミリーサポートさんに出会い、3人の子どもをなんとかワンオペで育ててきた。

ようやく長男が保育園卒業という年に、夫が会社を辞め、2度目のサバティカルタイムに入った。(一度目は大学卒業後のユーラシア大陸バックパックの旅。)

私は学生時代に上海に1年間、交換留学で滞在していた経験があり、社会人になってからも3年半ほど上海で働いていた。夫は1度目のサバテイカルタイムでいろいろな国を旅したことはあったが、長期滞在の経験がない。

当時、私は夫より先に正社員をやめ、フリーで友人のビジネスを手伝ったり、かねてからやってみたいと思っていた自分のやりたいこと、好きな仕事をとにかくやってみようとわりと自由に働いていた。

そこへ、夫も自由な時間ができたことで、家族でゆっくり海外に住んでみるのもいいかもねと、その下準備を兼ね、その年の年末からアメリカ横断の旅に出ることになった。

当初は2019年年末に日本を出発し、米国西海岸から車で米国南部を横断し、東海岸を北上しニューヨークからニュージーランドに飛び2020年3月末に帰国しようと考えていた。

というのも、せっかくの機会なので、子どもたちに現地の学校生活を体験させたいと考え、冬だけど暖かいこと(←私のリクエスト)、IT先進国、多様性、住みやすさなどを総合的に判断し、ニュージーランドに短期滞在することに決めていたのだ。

しかし、ここで問題が起こる。

当時小学5年生だった長女が、3月頭に予定されている6年生から学校の校旗引継ぎ式の代表に選ばれたので、絶対に式典に参加したいというのだ。

また、保育園最終学年であった長男も3月10日ごろに卒園式があるので、先生からぜひそれに間に合うように帰ってきてねと言われた。

12月の米国は西海岸からフロリダあたりは暖かいとはいえ、その他の地域は雪が降るほどの寒さ。そこから南大陸に位置する夏であろうと考えていたニュージーランドでは持っていく衣類、また学校に通うための準備も異なるだろうと、アメリカから一旦日本に帰国し、荷物を入れ替えてニュージーランドへ向かおう。ニュージーランドの学校はなんとか3週間の短期留学ができる現地校を探し、最終的に12月20日に日本出発。米国西海岸へ。その後、車で東へ移動し、フロリダから東海岸を北上し、2020年1月末に東京へ戻る。すぐに荷物を入れ替え、中2日でニュージーランドへ向かい、2月の初旬から現地校へ3名通わせ、2月末には帰国ということで落ち着いた。

そんなこんなで飛行機の手配、米国でのレンタカーの予約、ニュージーランドでの住居の手配、学校とのやり取りといろいろなことが決まったのが12月中旬。

小学校では良い経験になりますね。と温かく送り出してくれたのだが、保育園で約2か月先生やお友達と会えないことで急遽サヨナラ会を実施してもらったようで、別れ際に長男が泣いたことには参った・・・不覚にも私まで泣いてしまった。

彼が泣く姿を見て、残り少ない保育園生活、卒園式の練習に入るこのタイミングでお友達と先生と離れていいのか・・・親の勝手な行動に子供を振り回してよいのか不安がよぎった。

が、翌日には荷物をまとめ成田空港へ意気揚々と向かう。




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