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プロジェクト ザ・ガーデン-移住編③-


繁忙期がやってきた

地域おこし協力隊(農業)に入隊すると、年間1960時間を農作業に費やすことが必須条件となる。これは1日8時間働いて、お盆と年末の休暇を入れた週休二日制とほぼ同じである。

ところが、サクランボ農家の繁忙期(4-7月)は月間の実肉体労働時間が平均230時間ぐらいになる。これは毎日10時間くらいの肉体労働を週一休みぐらいでの感覚である。

57歳にはきつくないか?

肉体が限界を迎えそうになると、人間というのはiPhoneのような電源セーブモードに切り替わることが分かった。どういうことかというと、まず脳の活動がセーブモードになり、集中力、記憶力、判断力、思考力が著しく低下する。要は頭がバカになるのだ。

車で事故起こしたり、命の次に大事な財布をしょっちゅう無くしたり、大事な約束を全く忘れたりと、日常生活が危うくなってくる。(私も愛車で自損事故って、修理費用で1か月分の給料が吹っ飛びました)
意外にも、体の方は慣れてくるので、そんなにしんどくはならない。
歳をとっていても毎日ちゃんと食べて寝れば、ある程度体力は復活するのだ。それでも体力のゲージは日々10%ぐらいしか復活しない(高齢のため)ので、日々気力だけで頑張っている感じである。

まさにブラック企業でこき使われている状況だが、都会のオフィスで働いていた頃にくらべれば、はっきり言って大した事ないと思う。
よく農家は大変だとよく言われるが、農家は農業のことしか知らないので、こういう屋外での肉体労働がシンドイっていうけど、私はそうは思わない。農家が向き合うのは基本的に“自然”だけだ。ストレスをもたらすのは、常に他人なのだ。

都会では、お金のためにやりたくもないつまらない仕事も真面目にやらなくてはならず、だんだん責任も重くなりプレッシャーも大きくなる中、嫌いな上司や苦手な部下や注文の多いKYなお客や、納期を守らない取引先等から、こうしろああしろと文句や注文を言われ続け、それでもキレずに我慢して表向きはいい人を演じてはいるが、心の奥では「みんな死んでしまえ」という黒い怨念めいた感情が渦巻きながら毎日すごすオフィス生活。
はっきり言って、こっちの方がしんどいよ。農業なんかよりさ。

繁忙期の1日

★さくらんぼ農園:
6月は毎朝4時に起きて、朝6:00からサクランボの収穫が始まる。
山の中にある農園を2.5Mもある脚立を持って歩いて、脚立を上り下りしながら食べ頃のサクランボを見極めて収穫する。

12時までには20分くらいの休憩が一度あるが、6時間ずっとひたすらサクランボを収穫する。お昼ご飯が終わると、今度は収穫(日々200Kg程度)してきたサクランボを大きさ毎に選別する。選別機の前に立ち、ひたすらサクランボを一個一個投入してMサイズから4Lサイズまでの仕分けを行う。
2時間くらい選別をすると、次にその選別したサクランボを大きさ毎に箱に詰める仕事となる。5時には宅急便がくるので、それまでに箱詰めとパッキングを行わなければならないので、時間との闘いがはじまる。

終わりの目途が付くと解放され、やっと帰宅できるようになる。帰宅後は風呂上りにビール1杯飲むと、もう朝になっている感じだ。
これが1か月続くのである。

★葡萄農園
7月は毎朝毎朝4時に起きて朝6:00から葡萄の手入れが始まる。
葡萄というのは長い期間(5か月)手を入れて管理し続けないと、決して良いものはできない。この農園は大規模で葡萄を栽培しているため、朝6時から、夕方の5時頃まで、ひたすら同じ作業をしなければならない。

これには理由がある。
適した時期に適した処理をしないと葡萄は美味しく育たないのだ。
なので大規模栽培の場合、当然時間に追われて作業をすることとなる。それが何日も続くのだ。

作業的には、葡萄の種無し化処理(2週間)、摘粒(2週間)、袋かけ(2週間)が繁忙期のメイン仕事である。
この中で、摘粒という葡萄の形を整えるために粒を抜く作業があるのだが、これが一番時間がかかるうえ、難しい仕事である。
上手く葡萄の形が揃えられず、自分の不甲斐なさを感じながら10時間ぶっ通して仕事をするのは、結構精神力が試されるのだ。
ようやく袋掛けまで仕事が終わると、あとは収穫まで手を入れないので、ようやくホッとすることができる。

そして、くそ忙しい合間を縫って、休日はサーフィンへと出かけます

体力は限界です。。。

メンバーシップ型(長期雇用型)とジョブ型(短期雇用型)

「アイザワさんって、クズですよね。自分のことばっかり考えて自己中ですよね」
葡萄農園の新卒入社2年目は、私に向かってそう言い放った。

この葡萄園は日本でまだ終身雇用を維持している大企業の子会社である。
当然そこで働く若者たちはメンバーシップ型の雇用体系で働いており、
自分の評価以前に、常に互いに気を使い、助け合うのが大前提条件となっている。

一方私は超ジョブ型で30年も働いてきており、自分の責務をまず最初に全うすべきであり、チームメイトを気軽に助けるなんて、相手に失礼にあたるし、私の責務をまず全うしろよと怒られるぐらいの環境で働いてきた。
そんな人間がメンバーシップ型の組織で働くと、他人に目を向けないで自分のことばっかりしてる自己中に映るというのは新鮮な感覚だった。

農業はどっちの体制がいいのだろうか?

農業仕事の内容的にはメンバーシップ型のほうが適しているように思われるが、自分としてはジョブ型を目指して組織作りはしていきたいと思っている。理由としては、個人のやりたいことを最大限応援できる農園を作ってみたいからだ。ジョブ型だって互いに助け合わなければ仕事は上手く回らないが、大前提として自分の責務を全うすることから始め、そしてチームメイトを決して見捨ずフォローしあえるような関係が望ましいと思う。

とはいえ、私がクズ野郎なのは変わらないのですが。

地域おこし協力隊の金銭事情

すべて税金で賄われているこの生活。月に手取りで22万円もらえて、別途家賃補助5万円もらえるということは、3年間で約1000万円近い税金がもらえることになる。(ちゃんと規定時間働けば、であるが)

さらに受け入れ先の農家には年間200万円の予算が与えられ、ここから隊員を受け入れるために必要な農機具、交通費、事務処理費、家賃補助等使うことができる。ここで購入した農機具などは、私が独立する時に安く譲ってもらえるようにすれば、受け入れ先と隊員でWinWinの関係が作れることにもなる。なおかつ行政側は農業従事者を増やすことができ、”3方良し”の政策だと思う。

しかも田舎での生活はほとんどお金がかからない。
光熱費と飲食費と交通費を合わせても一人で月5万円も使わない。
(お金を使うところが少ないというのもあるのだが。)
勝手にお金が溜まっていくのだが、除隊後にはこのお金は全て農園投資にまわることになると思う。本当に助かります!


9月にはHappy Harvestを迎えます!




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