2020年度の蒅が完成しました
こんにちは、藍屋テロワールの湯浅です。
藍屋テロワールでは、先日2020年度の蒅(すくも)が完成しました。
藍の染料となる蒅は、藍の乾燥葉を発酵させて生み出します。
藍屋テロワールとしての2度目の蒅づくりの流れを写真と共におっていきます。
寝床づくり
藍は寝床と呼ばれる場所で発酵させます。
寝床は簡単に言うと土間のようなもので、砕石を敷き、その上から粘土質の土で固めます。
土は、淡路島の粘土を使います。淡路島は淡路瓦の産地であり、日本の三大瓦の一つともされ、淡路島では良質な粘土がとれます。藍の本場徳島でも、淡路島の粘土が寝床に使われ、今回は淡路島まで土をとりに行って寝床にしました。
発酵が均等に行われるように中心にかけてやんわりとドーム状になっており、山のように積む藍の高さをそろえるためです。
寝せこみ
夏に収穫し、乾燥させた藍の葉を、10月2日の大安、縁起がいいと言われる日に仕込み始めます。この作業を寝せこみと呼びます。
ここから今年は16週間、藍を発酵させていきます。
↑一週目の写真、白いカビが藍の葉を覆っています。
切り返し
寝せこみを終えた後は週に一度、切り返しという作業を行います。
乾燥した藍の葉に、水を打ちながら、かき混ぜていきます。
その水の量は、感覚としか言いようがなく、水分量が多いと腐敗し、少ないと発酵しきらない。手触り、見た目、香り、五感を使って発酵の調子を確認する姿に、まさに職人の技術を目の当たりにしました。
ふとん
3週目からは「ふとん」と呼ばれるむしろをかけていきます。
このむしろは、藁を編み込んだもので、最近では作っているところも少なく、福岡の方から取り寄せています。
効果としては、ふとんというように、発酵の際に必要な温度が下がりすぎないように、温めてあげます。
10月は四方を囲むようにしてかけてあげますが、冬になり寒くなるにつれて、ふとんをかけてあげる枚数は多くなり、最後には60枚ほどかけてあげます。
ふとんを何重にもかけて温めてあげるその様子は、本当に我が子を温めて可愛がっているように思われます。
発酵の香り
3~4週目あたりから、藍の葉はだんだんと温度が上がり甘い香りが寝床中に立ち込めます。
1ヶ月を過ぎたあたりから、甘い香りはだんだんとアンモニアに近いような鼻の奥にツンとくる香りになってきます。
通し
3か月目に入る12月頃は、すでに最高温度が70度近くになり、発酵のピークを迎えます。切り返し中は、においも強く、湯気が立ち込めます。
藍の葉も粘性をもち、ゴロゴロとしてくるので、12月の終わり頃、通しと呼ばれる作業を行います。
通しは、ゴロゴロと石状になっている藍をもう一度粉々にし、最後もう一段階発酵させようとする工程です。
しかし、発酵が進みすぎるのもよくないので、坊主が現れます。
坊主
通しが終わったころ、終盤になると、坊主と呼ばれるむしろを丸めたものが登場します。
通しが終わった後からは、これまで台形のように整えていたものを、すり鉢状にし、温度の上がりやすい中心に坊主を埋め込み、温度が上がりすぎないようにします。
祈り
蒅づくりでは藍神様が宿ると言われます。
大安の日に寝せこみを行い、ねどこに神を奉り、一週間に一度だけ、切り返しを行い、あとは藍に頑張って発酵してもらう。
蒅づくりはまさに、祈りが込められた作業だと感じます。
大げさだとは自分でも思うが、やはり藍の寝床にはいると、どこか気持ちが引き締まるような感覚を覚えました。
3月から種を撒き、1月に完成するその蒅は、多くの祈りが込められて完成するものなのかもしれません。
そんな、完成した蒅の藍色を早く見てみたいです。
追記
今回、蒅づくりの工程はすべてフィルム写真で収めようと思いシャッターをきった。
寝床は暗く、なかなかうまくはとれていないが、僕はフィルムで収めたかった。
フィルム写真と藍はどこか似ている気がする。
藍は、種を撒き、収穫し蒅にして、藍建てを行わないと藍色には出会えない。
フィルムもそうだ、充填し、シャッターをきり、現像し、やっと出会える感動は少し藍と似ているのかなあと思う。