なぜ私たちは人の期待に応えるのか
「期待に応える」というワードは普段よく使うものですが、なぜ私たちは期待に応えるのでしょうか?この疑問に答えるために、私たちの脳の働きを理解する「予測誤差最小化」という仕組みを使って、期待に応えることについて考えてみましょう。
予測誤差最小化
人の脳は実世界の状況を予測し、その予測誤差を最小化する働きがあります。つまり、私たちは実際の状況を脳内に持つ内部モデルを持ち、その内部モデルにズレがある場合は修正します。これが私たちの認知や推論のプロセスなのです。同時に、内部モデルから立てられた予測を実現するために行動することで、ズレを抑えることもできます。これが私たちの行動決定のプロセスです。つまり、脳への情報を処理し、行動を決定する過程は、予測誤差、つまりズレを最小化するプロセスなのです。
「期待に応える」
では、「期待に応える」とは具体的に何でしょうか?それは、期待というある種の予測からのズレを抑えることです。つまり、他人の予測に応えることで、ズレを最小限に抑えるのです。しかし、ここで重要なのは、その期待は他人の予測であり、自分の予測ではないことです。予測誤差最小化は自己の内部モデルの予測誤差を抑えるものであり、他人は外部の存在であるという点がポイントです。
自分の中にいる相手の期待
私たちは他者の考えを予測し、心の理論を持っています。つまり、相手の考えや期待を予測できるのです。脳の中の内部モデルには、他者の考えや期待の内部モデルも含まれています。つまり、自分が思う相手の期待を実現することで、自分にとっての予測誤差を最小限に抑えることができるのです。これが「期待に応える」という行動の本質であり、予測誤差最小化の観点から見た正体なのです。
期待を相手に正確に伝えることが大事
予測誤差最小化で実現されるのは他人の期待そのものではなく、内部モデルの中の期待です。例えば、親が子供の成長を期待しながら、「そんなこともできないの」と叱咤を続けると、親の真の期待が子供に届かず、子供は「親は自分がダメな子であることを期待している」という間違った内部モデルを持ち、その「期待」を実現しようとしてしまいます。ですから、相手に正しく期待を伝えることが非常に重要なのです。期待のズレを最小限に抑え、共に成長できるような関係を築くためには、正確なコミュニケーションが欠かせません。
期待に応えることは、相手との良好な関係を築く基盤です。予測誤差最小化の観点から見ると、自分自身の内部モデルと他者の内部モデルを理解し、正確に期待を伝えることが重要なのです。これによって、お互いのズレを最小限に抑え、共に成長し合えるのです。
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