佐々木朗希がInFA扱いであることは適切か?


【はじめに】

 この記事を書き始めた時点の今日(2025年1月23日(日本時間))、佐々木選手の入団会見が行われ、大方の予想通りめでたくドジャース・佐々木朗希が誕生した。さて、佐々木朗希がMLBに渡米するにあたって一悶着あったことは(この記事を読むような方であれば)ご存知であろう。特に議論の的となったのが以下の2点だ。

①25歳以下ルールがあるにも関わらずロッテがポスティングを認めたこと
②国際FA(以下InFA)扱いでの移籍であったこと

 ①に関して、入団当初から球団とのサイドレターがあったというような噂話も囁かれるが、私のような素人が何か書いたところで憶測の域を出ないし、地元紙であるロサンジェルス・タイムスが密約はなかったと報じている。では本記事では何を扱いたいのかというと、記事名にもしている通り、②の方である。前提として、InFA並びに25歳ルールとはどういうものなのか書き出す。

【前提】

・InFAとは

 日本語では国際FAとも訳される本単語であるが、これを理解するためにはまずMLBのドラフトを軽く理解する必要がある。MLBのドラフト対象となる選手は、アメリカ、カナダ、プエルトリコに住む、高校、大学、短大、独立リーグの選手である。細かいルールはあるが、本記事においては以上の理解で問題ない。では、その他地域の選手がMLBに挑戦するにはどのような手段があるのか。そこで登場するのがInFAである。InFAの対象となるのは以下の条件を満たす者だ。
① 上記地域在住でない
② 16歳以上25歳未満である
③ 海外リーグで6年以上のプレー経験がない

 InFA対象となる選手に対しMLB各球団は、諸条件でそれぞれに付与されたInFA用のボーナスプールからお金を出し、契約する。対象となる選手は主にドミニカやベネズエラの選手で、特に有望とされる選手は事前に球団からの接触を受け、契約を果たす。InFA出身の有名選手と言えば、フアン・ソトやフェルナンド・タティスJr、マルコ・ルシアーノらが挙げられる。

・25歳ルールとは

 これは「InFAとは」の項を読んでくださった皆様であればもう理解可能だろう。つまり、InFA対象選手となる条件の②で述べた25歳未満であるという部分のことだ。つまり、25歳以上選手の移籍においては、InFAルールでの移籍にならず、NPBからポスティングされた多くの選手のように実質的な海外FAの扱い(ポスティングルールの変遷や譲渡金などの海外FAとの違いは省略)での移籍となる。

 簡単にルールについて書き出したが、件の佐々木選手は2001年生まれの現在23歳であるため、上記ルールに則りInFA扱いでの移籍となったわけだ。

【本題】

 さて、ルールについての振り返りは済んだがいよいよ本題へと移る。それは表題にも掲げた通り「佐々木朗希がInFA扱いであることは適切か?」という点だ。言い換えればこれは「海外リーグで明確な実績がある25際未満の選手が移籍する際、InFA扱いすることが適切か?」ということである。私の考え、結論から申し上げれば、「適切である」ということになる。なぜ適切であると考えているかというと、以下の2点である。

①今後このようなケースが発生することが考えづらい
②他に適用すべきルールが見当たらない

①について

 あくまで話をNPB→MLBに絞って考えるが、今回の佐々木選手のような移籍の例は異例と言える。2018年にポスティングルールが改定され、選手側が自由に球団を選べ、譲渡金の設定もできなくなった今(この辺りは別noteでまとめるかも)、【前提】の項で確認したルールがある以上、【はじめに】の項、①で示したように、そもそも現行ルールにおいて25歳未満選手のポスティングをNPB球団が認めるのは、(少なくとも金銭面においては)球団にとっても選手にとっても極めて不合理的な選択と言え、今後その例が増えるとはおおよそ思えないというのが筆者の見解である。多くの人がそのように考えているからこそMLB機構が調査に動いたのだ。よって、そもそも「ルールを新たに設ける必要がない」というように考えている。ルールの抜け穴的に機能し得るのならまだしも、今回の件も少なくとも表向きは密約など無かったらいしし、ポスティング制度を介する必要がある以上、NPB球団側が(少なくともルールの上では)ストップをかけられる構造になっているからだ。

②について

 これは身も蓋もない話である。①にて、今後新たにルールを設ける必要性がない考えを示したが、では現行ルールにおいて佐々木選手に他に適用すべきルールがあったか、と言われれば無い。【前提】の項で示したInFA選手の例にピッタリと当てはまっているし、2017年では大谷選手もその例に則って移籍を果たしている。(大谷選手の場合は先述のポスティングルール改定前のため、移籍金は球団側が定められた)

【まとめ・今後どうすべきか】

  ここまででおおよそ2000文字ですが、まずはここまで読んでくださりありがとうございます。私の考えとしては、以上から「佐々木選手にInFAルールが適用されたのは適切だし、今後もルールを設ける必要性がない」ということになります。
 ではあえてこのルールに手を加えるならどのようにすべきか、という事も最後に私の考えを示し、結論とします。まず考えられるのは、NPB-MLB間で連携し、日本からポスティングされた選手は一律で海外FAのような扱いとすること(譲渡金は現行ルール通り)というルールを設けることがあります。ただしこれにはNPBファンの目線から反対で、若手人材の過剰な流出を招く結果になったり、有原選手・上沢選手の件で度々とりあげられるような移籍方法が増えてしまう可能性があるためです。(実際佐々木選手がLADを今季限りでクビになりNPBに復帰する選択肢を取った場合大問題になりそう)
 
あるいは、InFAの条件の③海外リーグで6年以上のプレー経験がないのルールを緩めるような方法はあるかと思います。ただし、これは高卒選手(19歳)が6年後には25歳になる、というところから逆算して出したような数字である気がしますし、丁度良い年数は何なのか、全く違う条件で「実績」を求めるなら何が適切か、というまた別の議論へと発展してしまうでしょう。
 総じて、今回の件というのは結局のところ合理的に考えれば有り得ないポスティング承認が起こったからこそ起きている問題であり、ロッテ球団側にどのような意図があったか私には分かりかねますが、あえてルールの問題にすることでもないだろう、というのが私の結論です。
 次にnoteを書く機会があれば中盤少し触れた、「ポスティングルールのあるべき姿とは?」というテーマで書こうかな、と思っております。本noteについてのご意見や感想は、私のX「あいうえおおかみ(@kyoda555)」、もしくは本noteのコメント欄にて頂戴いただければ幸いです。改めて、読んでくださりありがとうございました。



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