13.大人の世界の入り口
出会い系サイトにハマった僕は、そこでのオフ会に参加するようになりました。主催者である明るく陽気なSくんは、僕の一回り歳上で、当時個人のホームページ(まだブログとは呼んでなかったと思います)全盛期だった頃にかなりのアクセス数を稼ぐちょっとした有名人でした。人の数倍人脈があるSくんは、オフ会をする度に色んな人を呼んでお酒を飲んでは、酔った勢いで僕に毎回こう言いました。
「たい!いいか?人生なんか楽しくないとダメだぞ!やりたいことやって、酒飲んで、いろんな人と関わって、知らないこと教えてもらって、もっと楽しく生きろよ!」と、言葉の通り僕が知らない世界をたくさん教えてくれました。
僕は『自分は人見知り』だと思っていましたが、こういう機会を幾度となく経験していくうちに、全く知らない人とでも割と打ち解けられるようになっていきました。
Sくんのおかげで僕が出会ったのは学校の先生、大学の教授、大手企業のサラリーマン、空手道場の師範、伝統工芸の職人、お医者さん、風俗のお姉さんなどなど…色んな人の話を聞いて、僕はちょっと大人の仲間入りをした気がしました。
そしてそんなことを繰り返していると、何度目かのオフ会で『僕の人生が大きく変わる』ことになります。
その日のオフ会はオシャレな居酒屋の個室で、僕とSくんと、親くらいの歳のスーツを着たオジサンが2人、あと綺麗な服装の大人の女の人が2人と同い歳くらいの女の子が1人いました。いくら人見知りが治りかけて(?)いたとは言え、圧倒的に場違いな気がした僕は、とても緊張しました。というか今考えるとこれはオフ会だったのかどうか分かりませんが、そう言えばみんなネット上で使う"ハンドルネーム"で呼び合っていたような気もします。『こんな人達も出会い系とかやるなかな…?』と思って不思議な感じでした。スーツ姿のオジサン達は僕を見ると、
「うちの息子くらいの歳だな!」
「まだまだこれからなんだから、遠慮せずいっぱい食べて、いっぱいお酒飲んで、楽しんだらいいんだよ」
と教えてくれました。Sくんは相変わらず陽気で、相変わらずお酒に酔ってて、僕にもっと「飲め!」ととても楽しそうに言いました。少し緊張が解けた僕は、綺麗なお姉さんに「これ美味しいよ!」と知らないお酒をすすめられて、Sくんと場違いにゲラゲラ笑いながらたくさんお酒を飲みました。
あっという間に終電の時間になり、オフ会は解散することとなりました。Sくんは「俺は明日用事があるから帰るけど、たいはどうする?」と聞いてきたとき、スーツ姿のオジサンの1人がこう言いました。
「若い2人(僕と女の子)はまだちょっと飲める?知り合いの店に行くんだけど、良かったら一緒にどう?」
僕が返事を迷っていると、女の子は僕より先に
「じゃあよろしくお願いします」
と答えました。それを聞いたオジサンは僕の肩を叩くと
「女の子1人とオジサンだけじゃ不安だろうから、君もおいで」
と言って僕と女の子の背中を押して歩き始めました。駅に向かうSくんと残りの人たちは「じゃあ、また!お疲れ様でしたー!」と言って帰って行きました。
僕たちはタクシーに乗ると、オジサンが話し始めました。
オジサン「俺の名前はK。で君の名前はなんだった?」
女の子「私はRです」
僕「僕はたいって言います」
Kさん「Rちゃんとたいくんだね。歳は聞かないけど、2人ともまだ若いからあんまり夜の街のこと知らないでしょ?だからちょっと面白いところに連れて行ってあげるよ。最近若い子と喋ることもあんまりなかったし、今日は楽しいなー(笑)」
Kさんはずっとニコニコして、「お酒は無理に飲まなくてもいいからね」と言ってました。僕はこれから初めて会った2人の人と何が起きるのかかなり不安になりながらも、知らない世界が見れる好奇心でワクワクしていました。
僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰