⑧まさかの展開に…
色んなモヤモヤと出会いながらも、気付けば僕の小学生生活は6年の3学期を迎えていました。相変わらず誰かを好きになったりできなかった僕は、周りの同級生たちが異性に告白したりされたり、一緒に下校したり、休みの日に遊んだり、そういう話だけをなんとなく聞いては、何とも言えない興味だけが湧いていました。
それによく考えたら、『誰かを好きになることはあったけど好かれたことってないな…きっとカッコよくもないし、男らしくもないからだ』そんなことを思っては、僕はちょっとだけ寂しくなったりしていました。
でもそんな僕も、『あと少しで小学校を卒業するんだ。中学校に行ったら、僕の中のモヤモヤしたもののことも何か分かるようになるかな…?』なんてちょっとだけ淡い期待もしていたような気がします。そんな中、今回の事件は起こりました。
ある日、僕は放課後も教室に残っていました。この頃は女の子の間でプロフィール帳(?)みたいなやつが流行ってて、溜まってたものをまとめて書いてたと思います。すると、同じクラスの女の子が
「たい!ちょっと来て!」
と言いました。彼女は僕が苦手なグループの子で、以前僕に『変態ー!』と言った女の子の1人でした。だからなんで呼ばれたのかが僕は分からず、ただ廊下の奥にある物置きになった部屋の前まで連れて行かれました。
彼女の名前はNさん。僕はNさんのことはあまり知らないし、もしかして、また「たいってホモなの?」って聞かれるんじゃないかとドキドキしていました。
しかしNさんからは、僕が予想もしていないことを言われたんです。
Nさん「たいって好きな人いる?」
僕は、なぜNさんがそんなことを聞いてくるのか分かりませんでした。
僕「好きって何か分かんない。だからいないよ!」
すると、Nさんはこう言いました。
Nさん「私ね、たいのことが好きなの。」
僕「…えっ!?」
頭の中が真っ白になりました。だって僕はカッコよくないし、男らしくもないし、女の子に好かれることなんてきっとありえないと思っていたので、まさかの展開にパニックになりました。
Nさん「私ね、授業中もずっとたいのこと見てたし、もっとたいと仲良くなりたかったの。本当は恥ずかしいけど、でも私はたいが好きだから…ちゃんと言いたかったの。」
僕は初めての出来事に戸惑いながら、でもドキドキしていました。だって『初めて女の子から好きって告白されちゃった』んですから!
Nさん「たいのこと、私はカッコいいと思うよ!でも…急に変なこと言ってごめんね。明日からも今まで通りにしてくれる?」
僕は恥ずかしくて、どこかこそばゆくて、でも生まれて初めてカッコいいって言われて、なんだか不思議な気持ちに包まれました。言葉になってたかどうか分かりませんが、『うん…』とだけ言って頷きました。
Nさん「じゃあ、教室に戻ろ?」
そう言って、彼女は僕の手を握って歩き出しました。寒かったからかなんなのかは分かりませんが、Nさんの手は最初冷たくて、でも肌の奥は暖かくて、そして柔らかくて、僕はなぜか恥ずかしくて…少しだけ今までのモヤモヤが少しだけなくなったような気がしていました。僕はちゃんと返事もできなかったクセに、初めて自分を男として見てくれたNさんを、もしかしたらこの時ちょっと好きになったのかもしれません。
僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰