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Startup Weekend審査基準解説その①~Validation~


はじめに

最近の投稿がStartup Weekend(以下、SWと記載)の開催裏話的な話ばかりなので、少し経路を変えて、審査基準について解説してみたいと思います。

SWって何?という方は、先だってのファシリテーター就任所信表明内で記載しておりますので、そちらをご覧いただければ幸いです。

上記の記事にも書かれている通り、SWは全世界共通のフォーマットで行われており、審査基準も全世界共通です。
認定ファシリテーターとしてSWの理念を拡げていくにあたり、イベントのファシリテーション提供だけではなく、実際の内容についての解説をしていくことも一助になるのでは?と思い筆をとった次第です。

これを見た方には「審査基準の解説なんて書いたら、読んだ人と読まない人で前提知識に差が出て不公平なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的には別にそれはそれで良いのでは?と思います。
前提知識によって学びの深度に差が出るのなんて当たり前の話だし、この解説を見たところでイベント内で優勝が保証されるわけでもありません。
喩えるなら、有名店のレシピを公開したところで、そのレシピ通りに作れるかは料理人の技量次第、という話でもあります。

ただ、一方で、イベント内では時間の制限もありあまりクドクドと解説しているわけにもいかないので(しても良いんですが、Actionの時間が減ってしまうのは本意ではない)、興味がある人がアクセスできるようにnoteに書き起こしておきたいと思います。

また、加えてお断りしておくと、SWのファシリテーター認定プロセスとして審査基準についての厳密なトレーニングがあるわけはありません。(期待外れかもしれませんが)
ファシリテーター自身も繰り返しこの審査基準に触れることで、自分なりの学びを得て解釈を深め、参加者にお伝えしているものです。
そういった意味では、ファシリテーター同士、あるいはオーガナイザーとの意識のすり合わせにも役立つかもしれませんし、結果として記事の内容をUpdateしていく事で、より良いUXにつながるかもしれないと期待しているところです。(反対に、あまりにひどい場合は本部からの指導が入るかもしれません(汗))

ということで、下記点にご留意のうえご覧いただければ幸いです。

①本解説を読んだところでSWでの優勝が保証されるわけでは無いこと
②本解説自体、私の主観も入っており正解とは限らないこと

それでも、ファシリテーターとして何度も触れることで改めて良く出来た審査基準だと思うので、一緒に眺めていただくのも一興かと思います。
今回は一旦、1つめの審査基準「Validation-検証-」についてです。

審査基準①~Validation-検証-

では、一つ目の審査基準を一緒に見ていきましょう。

項目①~Did your team get out and talk to costomers?

はじめの項目はこちら。
日本語に直すと「あなたのチームは外に出て、顧客と話しましたか?」です。

のっけから起業家体験としてのSWの神髄だなぁと感じます。
SWはビジネスアイデアコンテストではなく、あくまでも起業家体験イベントです。
”No talk, All action"という標語に表されるように、チーム内で語り合って、さも良さそうなアイデアを語るだけでは評価されません。
そのアイデアが刺さる相手がいるか、あるいは顧客の痛みに立脚しているかきちんと検証出来ているか?という項目となります。

「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こってるんだ!」…というネタもそろそろ通じ難くなっていますが、きちんと顧客の声を聴くことが起業家としての第一歩ということですね。

さらに言えば、”外へ出て”というのもポイントで、ネットでアンケートを取っただけでは課題の深掘りは出来ない、というメッセージでもあります。(今ではWebMTGなどでインタビュー/ヒアリング出来るようにはなりましたが)
この辺りも踏まえて、私がファシリテーションするときは「アンケートではなくインタビューを」というメッセージをお伝えしています。

項目②~Are you actually solving a problem?

次の項目はこちら。
日本語に直すと「本当に課題を解決しているのか?」です。

注目すべきはこの項目が”検証”に含まれていることです。
自分たちで語ったり強弁するだけでなく、それが客観的に見て検証されている状態にどう持っていくか。

それには「顧客は本当に課題を抱えているか?」「課題は何らかの方法で解決することが出来るのか?」「解決策は製品やサービスとして成立するのか?」「製品やサービスはビジネスとして成立するのか?」といった項目をきちんと検証出来ていなければなりません。

各地でSWを開催していると、上記のうち「顧客は本当に課題を抱えているのか?」という検証すら出来ているのはごく一部、後は課題でもなく「あったら良いな」レベルの問題提起に留まっているのが実態と感じます。

特に共感性の高い社会課題解決系のテーマは、一般的には解決すべきと考えられているものの、お金を払ってまで解決したいと考えている顧客は存在しない、とまでは言わずとも顧客を見つけられていないケースも多く見受けられます。(ソーシャルビジネスを否定しているわけではないので悪しからず)

項目③~Have you identified a specific target market?

3つめの項目は日本語に直すと「具体的なターゲット市場は特定できているか?」です。

これは二つ目の項目にも関連しますが、具体的にこの人、と指し示せるくらいに具体的なターゲットが明確になっているか、という事であり、更にこの項目自体も「検証」という基準に含まれていることが示唆深いです。

良くある例では「買い物弱者に向けたサービスを考えました」「観光客向けのサービスです」「ペットと暮らしている方向けに届けたいんです」といった、解像度が荒すぎるものです。
買い物弱者は日本に700万人いますし、観光客は月次でも300万人、ペットの中でも犬猫の飼育頭数は1,800万頭を超えます。
アクセス可能な全体数として規模を挙げるのは良いものの、それだけの規模があれば大手が当然参入しているでしょうし、全員に共通する課題などあり得ません。
その中でも、自分達だからこそ持っている深いインサイトは何なのか、それを求めている人が実在していることをどう証明するのか、というのは生存戦略として大事なものです。
「より少ない数の人がより強烈に求めているものは何なのか」を考えるためには、解像度を高められるだけ高めて検証を進めていく必要があります。

解像度を高めたところで、現実的にただ一人しか求めていないサービスであっても意味がないのですが、規模の概算などはフェルミ推定を用いるなりで表せられます。ただ、少なくとも明確に1人は存在することが検証出来ていなければ必要条件としては満たせない、という事です。

終わりに

審査基準の一つ目、検証、いかがでしたでしょうか?
簡単にいえば「足を使って検証したか?」ですが、実際には出来ていたでしょうか。
これまでSWに参加されたことがある方は、イベント内で自分たちが発表した内容と上記の解説を照らし合わせて出来ていたところ、出来ていなかったところを振り返っていただければと思います。
ファシリテーターの同志からのツッコミなども大歓迎ですので、もっとこういう伝え方したら?などのご連絡お待ちしています。

それでは、残りの基準「実行とデザイン」および「ビジネスモデル」についてもお楽しみに。

追記

当記事を公開したところ、同じくSWファシリテーターの方から下記フィードバックをいただきました。

顧客検証の目安として、自分が活用するだけでなく周りにも教えたいくらいの熱狂的なファンを1人でも見つけられるか?その人の動機はなにか?そのファンを増やす方法は?(これはビジネスモデルにつながる)みたいな話もお伝えしたりしていました。

これも実際その通りですね。SWという54時間の限られたイベント内では予約販売まで実施されることは稀(皆無ではないものの)なので、現実的には熱狂的なファンを見つけられるか、そしてその人の動機を深掘りすることは検証としてとても良いのではないかと思う次第です。

そして審査基準の二つ目についても解説を記載しましたのでご覧くださいませ。

再追記

審査基準の三つ目、Business Modelについても記載してます。こちらも併せてご覧くださいませ。


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