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#49 コルビジュエの弟子 坂倉準三

初めて伊賀市役所の前を車で通りかかった時、”懐かしい建物”だなーと思う不思議な体験をしました。調べてみたらコルビジュエの弟子の一人、坂倉準三さんの設計した建物だとわかり納得しました。私が生まれた岐阜県羽島市の市役所も坂倉さんの設計した建物で、コルビジュエの作風にどこか似ている雰囲気を醸し出しています。私の通っていた中学は市役所の隣に建っていたので、美術の写生の時間には、画板を持って坂倉さんの建築をスケッチしてました。坂倉さんは市役所の近くの酒蔵(さかぐら)”千代菊酒造”で生まれて、フランスのコルビジュエの元に無給で弟子修行をしていたそうです。地元の体育館など、いつも見慣れた”普通”の建物と思っていたのが、実はとてもスゴい建物だったのでした。自分がいつも見ている世界は、日本中どこにでもあると思っていました。岐阜市の高校まで電車とバスを乗り継いで片道1時間半を毎日通ったのですが、バスからいつも見ていた岐阜市民会館も坂倉さんの設計でした。東京青山にある岡本太郎記念館(旧宅)も坂倉さんの設計で、中に入ると坂倉さんらしさを感じたのですが、途中から??と思いスタッフの方にたずねると、やはり一部増築部分がありそこは坂倉さんではないようでした。”その人らしさ”が伝わる建築って、すごいなぁーと思います。

 二度目に伊賀市役所の前を車で通ったのは平日の昼で、新市庁舎の建て替えで旧庁舎のたて壊し議論が盛んな頃でした。同じ頃、宮崎県の菊竹清訓さんの旧都城市民会館のたて壊しがニュースで流れていました。ロビーからはいると、凝った内部空間の設計で、上野城忍者屋敷がすぐ近くにあり観光客も多いためか”見せる”ことにも気を使い使われていました。二階屋上には庭園があり、壁面コンクリートに埋め込められている小石は、坂倉さんの建物でよく見られ”懐かしく”感じます。一回受付の方に写真撮影の許可をたずねた時、坂倉さんの同じ出身(岐阜県羽島市)で地元の市役所と雰囲気がとても似ているので立ち寄りましたと告げたら、修復時の図面やら竣工時のパンフレットなどなどたくさんの資料を拝見させていただけました。2020年1月24日に「市指定有形文化財旧上野市庁舎保存活用計画」が策定され保存され、坂倉さんの建築ファンとしては嬉しい限りです。伊賀市さん、ありがとうございます。

 古代ローマ人は、橋やドーム状建物など作ることも名人でしたが、メンテナンスして使い続けることも名人でした。日本の高度経済成長時期の建物群が、一つでも多く残こして使い続けてもらえることを願っています。きっと坂倉さんも、酒蔵の影から見ている事でしょう。