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BioMechanics研究室を希望する学生さんへ

 鈴鹿高専電子情報工学科の伊藤研究室の紹介です。読み手として想定しているのは、R6年度の卒研配属予定学生さんです。どの研究室に希望を提出しようかな?という際の、参考になれば幸いです。
 同時に、卒研配属には関係ない一般の皆さんにとっても、高専での教育・研究の一部としてこのような活動事例が知っていただければ幸いです。 

<おもなテーマ>

  •  質の高い胸骨圧迫動作の解明とその教育方法

  •  ベッド介助時の腰痛予防のための教育支援システム

   ※その他の内容も研究しています。

共同研究者:3つの高専・大学.3つの分野(工学・医療・体育)の合計7人
 鈴鹿高専:電子情報(箕浦),体育(舩越)
 鈴鹿医療科学大学:看護(河尻,林),救急救命(神藏)
 愛知教育大学:体育(村松)

<背景>

胸骨圧迫の研究がなぜ必要?

救急救命法の一つとして行われる胸骨圧迫(心臓マッサージ)の「理想的な方法」については,世界的にもまだ明確な方法が確立されていません.乳児の場合については,研究報告があまりなされていません.
 
 成人のガイドラインとしては,1分間当たりに100〜120回,5cm〜6cmの圧迫と解除,絶え間なく続けることは,高校の保健体育や自動車運転免許証取得時,一般市民向け講習会などで広く伝えられています.救急車到着の平均時間は約10分の間,一人で絶え間なく行うのはとても難しく,実際の救急時には,複数人の人の助けがあるのが望ましいです.救急車・AEDの依頼を頼む人,到着までの胸骨圧迫を交替できる人がいるのが理想です.
 
 一般的に,初めて胸骨圧迫のトレーニングを受けて2分間適切に行い続けることは難しいです.一見体力がありそうな人でも,意外と1分で疲れ果てる人がいます.逆に,出来なさそうに見える人でもしっかりと2分間できる人がいます.疲れる前に交替して救急車の到着を待つ間,胸骨圧迫を継続するためには,複数人で2分毎に交替して繰り返し続けるのが理想です.

分かりやすく伝える

私のお気に入りの音楽バンドBump の歌い初めに、

 “簡単なことなのに どうしていえないんだろう
 言えないことなのに どうして伝わるんだろう”

Bump of Chickenの唄「花の名」

があります。
  さて,ある人間の動作の理想形(お手本)が分かったとして,どうしたら分かるようにつたえられるでしょうか?
 
動きを見せれば伝わるでしょうか?
(例えば,一輪車に初めて乗りたい時,お手本を見て同じように動いたつもりでもすぐには乗れません.私は20才を超えてから乗ろうと思い,約一か月かかりました(笑))
 
文字では?
 意外と多すぎる情報より,必要な情報だけの方が伝わることがあります.例えば,建築コンペのデザインを伝えたいときには,白黒写真や発泡スチロールで作成した模型など,色が無いモノクロで陰影だけの方が,良し悪しが伝わります.
 あるいは、映画がつくられた現在でも,文字で読む読書は健在です。その究極は、5・7・5の17文字だけで気持ちを伝える俳句,過剰な装飾が無いむしろ引き算しきった後に残った“詫び・寂び”(わびさび)を大事にする日本文化では,少なければ少ないほど良しとする傾向があると思います.(心の中で持ったら表情や所作で相手が理解するという“以心伝心”ですね(笑)) 

<Goal>

  • なぜ疲れるのか?(どうすれば疲れないのか?)

  • 理想的な(質の高い)胸骨圧迫動作とは何か?(どこがキモで,なにが無駄か?)

  • どうやって伝えるとわかりやすい?

<方法>

ヒト動作の測定: モーションキャプチャを使った人体関節の3次元位置(精度±0.2mm程度),力,加速度,筋肉を収縮させるために脳から運動神経を伝わってくる表面筋電位信号などを測定します.
 
解析自作のプログラムの他に,米国スタンフォード大学の研究グループが公開しいている解析ソフトOpenSimを用いて,関節トルクや筋肉毎の発生力を求めます.
 
胸骨圧迫:熟練者(救急救命士)の動作と非熟練者の測定データとの比較から,質の高い動作の重要項目を探します.測定には,訓練用人形を使用します.
 

おまけ(私の専門分野のあしあと)

 学部4年生からの今までの37年間の研究歴を振り返ると、学生時代は電子工学(半導体工学)を6年間(学部・修士・博士)で研究していました。
 高専就職後は電子計測回路やマイコン制御プログラム関連科目担当することになりました。半導体から制御工学・生体計測・生理学・運動学へと次第にシフトしてきました。
 バイオメカニクス(BioMechanics)と呼ばれる分野で主に行ったのは、ヒト生体骨格筋の脳からの電気刺激で収縮たんぱく質(アクチンとミオシン)による筋収縮を数値モデル化し皮膚表面で測定した活動電位でロボットアームを人の動きに近い制御することを目指して研究していました。
 少し前から、ヒトの運動計測、特にスポーツ(空手や弓道など)を対象として測定をし始めました。市販の加速度センサや自分で作った表面筋電位測定回路を用いて、計測データをパソコン上で解析しました。
 2年前に念願のモーションキャプチャ測定装置を購入してからは、より精度の高いヒト運動計測を開始することができ始めています。
 振り返れば、骨格筋に関する研究で得た生理学の知識は、運動解析時にも役立っており、一見バラバラな研究も長い目で見ると繋がっているなぁーと最近思っています。(熱処理を行った半導体物性の変化は、今にはあまりつながっていませんが、、、。モデル化や数値解析など、研究の基本的な進め方は今にも関連はしています。)

研究紹介Links: 

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