#142 神田日勝@Eテレ 日曜美術館
魂の震える”人生”を知ると、”すごいなぁー”と思うと同時に、”よーっし、頑張ろうかなぁ”と思います。今までにそれほどの経験はないのですが、この一週間で2回も、偶然にもNHK テレビ番組で出会う好機がありました。まずはその1。
NHKの朝ドラの「なつぞら」は見ていたのですが、劇中の画家兄弟に実在のモデルがいたとは知りませんでした。時々日曜の朝に見る「日曜美術館」で神田日勝さんが取り上げられていました。神田日勝記念美術館で収録された番組中では、奥さんが日照さんの作品の解説をしていて、それがまたグッときました。
番組中で奥さんがおっしゃるには、家族の団欒を描いた一枚の絵では、「実際には農家の仕事が忙しくて、こんな情景はありませんでした。きっと、これはこうなると良いなぁと想像して書いたんだと思います。」とのこと。見たままを描かないのが芸術とは分かってはいるつもりでしたが、驚きました。当事者が言うのですから、きっとそうだったんだと思えます。そう言えば、詩歌や小説の中には、現実とは”逆の情景”(憧れ)が描かれている例がいくつもあります。
神田さんの作品を見ていると、画風が”黒”から”鮮やかな原色”へ変わっていっても一貫しているのは、北海道の原生林を切り開いた開拓農民の自負である”農耕馬”で耕した大地を感じさせる画題が共通していて”信念”が一本通っている人なんだなと思えます。(なかなか人生で通し続けられない、軸線です。)
番組中で奥さんが語る他のエピソードは、当時地域のみんながおしゃれして、髪型を油で固めて革靴履いて野球をしているのを、神田日勝さんは下駄履いてシャツ一枚で”飾らない自分”のままでそれを眺めていたそうで、奥さんはそれを見て面白い人だと思ったとのこと。石油の空き缶やボロな革靴の”汚い絵”を書いて今に飾る日勝さん、それを”匂いを感じる面白い絵”と思い興味を持った奥さん。ネタバレになるので、詳細は省きますが、ウーン、人生の”悲哀”と”切なさ”と”愛しさ”をいっぱい感じる番組で、久々に”魂が震えました”。まさに”琴線”に触れた気がします。
ベニヤ板に釘を打ち付けてつくった手製の”キャンバス”に、ペインティングナイフで叩きつけて、削って描く独特な画風、魂の躍動を感じる絵でした。いつか北海道に行く機会があれば、一度訪ねて実物をぜひ見たい美術館を一つ見つける事が来たこの日曜日は、ちょっと得した気分の1日の始まりでした。