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#176 ”水に流して戻る”

最近、TV番組が面白く思えなくなって来たのは、気のせいだろうか? TVへの期待レベルが高くなった? あるいは、TV側の制作能力が下がった?民間放送のスポンサーからの広告料がインターネットの方がTVを上回ったというニュースが以前流れていた。制作費用が安くなれば、スタッフ人数と制作期間の制約がよりキツくなっているのが関係しているだろうなと推測してみたりする。

 そんな昨今、面白いと思える数少ない番組のほとんどはNHKあるいは海外の国営放送が制作した番組。『Humanience』という造語が番組タイトルで、なかなか面白い話題を次から次へと放送してくれて近頃のもっぱらのお気に入り番組。

NHK BS 「なぜ“泣く”のか?ヒトだけが持つ「涙」の不思議なチカラに迫る」

 『涙』についての番組も、知らないことが次から次へと紹介されていて面白かった。以下はネタバレなので、これから見るかたはここで読むのをおやめ下さい(涙)。

 進化の過程で、海水に浸されていた眼球が瞼で涙を補充することで機能を保っており,ドライアイの治療には患者の血液を遠心分離して血清を目に入れると栄養補給がされて治ること。
 ストレスが高まった時には、泣くことで共感機能をつかさどる内側前頭野が刺激を受け緊張を支配する交感神経から、リラックスを支配する副交感神経にわずか10秒程度で切り替わり,通常の睡眠ではこの切り替えには数時間かかるのに比べ、泣くことは睡眠よりも短時間でストレスの解放に効果的だということ。
 涙は群れ(むれ)社会での”助けて”というメッセージで、マウスの実験ではフェロモンが含まれていたことがわかっており、ヒトでももしかしたら何らかのメッセージ物質があるかもしれないと研究が進んでいるとのこと。
 他人の経験で共感して泣ける動物は人間だけで、共感するためには大人になる途中で自分自身も似た経験をしていないと、他者のストレスに共感できない。これには、当たり前のことを改めて番組で聞いて(そりゃそうだ)と共感してしまった(笑)。
 泣くことは我慢すべきことではなく、むしろ群れ社会を生きる人間としての当然の行動で、泣くことで自分自身も「心の安全弁」を作用させてすぐにストレスが解放できる。泣いたあとには、眠くなったり、食欲がわいたりするのはストレスから解放された証とのこと。これも多分,誰もが共通知として持っていることだと思う。

”涙”の字源

 そう言えば、「涙」という感じ、さんずい(氵)に戻るという字の組み合わせなのは、ちょうど今日見た番組の内容とあっていて面白いなと思う。

「氵」(水)+「戻」(はらはらと散る)  
  引用元: https://ja.wiktionary.org/wiki/涙
「涙」字は、当用漢字字体表では「犬」の部分の点が省かれ「大」になった。
  引用元:https://kanjikyoikushi.jp/column/column_20141009_yahagi.html

 ウェブで涙の字源(成り立ち)を調べてみると、「目から水が流れ落ちる」という意味のように思える。

”戻”の字源

戶と、犬(いぬ)とから成り、犬が戸の下を身をくねらせてくぐりぬける、転じて「もとる」「いたる」意を表す。常用漢字は省略形による。 
 引用元 https://www.kanjipedia.jp/kanji/0007248100

 「大」ではなく「犬」が「戸」の下を身をくねらせながら行き来している様子から「もどる」という意味を持つ感じになった”カンジ”のようだ。これにさんずい(氵)を足した「涙」は、”水が行ったり来たり?”と、「なみだ」のイメージとはちょっと離れるので、やはり字源は「戻」まで遡るのはやめておいた方が良さそう(笑)。

最後に涙を流したのはいつだろう?

 ”心の中で泣く”こと、泣いたつもりのことは、日常的に大なり小なりは皆ある気がするのだけれど、「涙の不思議なチカラ」を取り上げた番組を見た後では、「涙」そのものと「流すこと」の二つにとても意味がある気がしてきた。番組でのオススメは、悲しい映画を見て泣くと心がスッキリするとあった。

 悲しすぎるストーリーで映像がリアルすぎ「泣く」を通り越して「打ちのめされてしまう」ことのない、程よいものを今度観てみよう。番組司会者の織田さん、映画の「ジョーイ」を例に挙げて「泣けるぅー」と言ってた。そう、確かに「ジョーイ」は泣けるなぁ。ふと思い出しただけでも、涙が流れて来そう。今度観てみようと思う。