Ⅹ. 導関数と微分法【基礎微積分学:大学数学】
前回導関数の定義に対して見てみた。
今回は、「この関数の導関数はなんなのか」について話していく。
(追記 23-08-02)足りない部分を追加しました。その結果かなり長い記事になってしまいましたが、ご理解ください。その代わり説明はわかりやすいように頑張ったつもりです。
……正直言って長くなった原因は導関数の証明のせいな気がしますが。
1. 基本関数の導関数
まずは基本的な形の関数の導関数について見てみる。
現在の知識段階で証明できるものもあれば、今は証明できないものも含まれている。
① 乗数関数:$${\displaystyle\frac {\rm d}{\,{\rm d}x\,}\,c=\bm 0}$$
② 累乗関数:$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}\,x^n=\bm{nx^{n-1}}}$$
証明は今現在はできない。4.3で証明する。
$${n}$$はなんの実数でも大丈夫。流石に$${0}$$はダメだが。
$${x\in\mathbb{N}}$$のときは現状の知識でも証明できる。こちらは二項定理を用いた方法。
③ 三角関数
・$${(\sin x)'=\bm{\cos x}}$$ / $${(\cos x)'=\bm{-\sin x}}$$ / $${(\tan x)'=\bm{\sec^2x}}$$
・$${(\sec x)'=\bm{\sec x\tan x}}$$ / $${(\csc x)'=\bm{-\csc x\cot x}}$$
$${(\cot x)'=\bm{-\csc^2x}}$$
$${\sin x}$$の導関数だけ証明してみる。
他の関数もこれと似たような形で導関数を求めることができる。
④ 逆三角関数
・$${(\sin^{-1}x)'=\displaystyle\frac1{\,\sqrt{1-x^2}\,}}$$ / $${(\cos^{-1}x)'=\displaystyle-\frac1{\,\sqrt{1-x^2}\,}}$$
・$${(\tan^{-1}x)'=\displaystyle\frac1{\,1+x^2\,}}$$
こちらは現在は証明できない状態。4.1で証明する。
⑤ 指数関数:$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}\,e^x=\bm{e^x}}$$
⑥ 対数関数:$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}\ln |x|=\bm{\frac1{\,x\,}}}$$
こちらも現在証明できない。4.2で証明する。
2. 複雑な関数の導関数
2.1. 関数同士の四則演算+α
・和/差:$${(f\pm g)'=\bm{f'+g'}}$$(複号同順)
・乗数倍:$${(cf)'=\bm{c\cdot f'}}$$
・積:$${(fg)'=\bm{f'g+fg'}}$$
・商:$${\displaystyle\frac{\,f\,}g=\bm{\frac{\,f'g-fg'\,}{g^2}}}$$
2.2. 合成関数の導関数 - 連鎖律(Chain rule)
こちらはなんか不思議なことになっている。
文字通り合成関数、つまり$${(f\circ g)(x)=f(g(x))}$$のような形の関数の微分。
別の表し方をすると、関数$${f\!:\,X\longrightarrow Y,\;\;g\!:\,Y\longrightarrow Z}$$に対して $${\displaystyle\bm{\frac{\,{\bf d}g\,}{{\bf d}x}=\frac{\,{\bf d}g\,}{{\bf d}f}\cdot\frac{\,{\bf d}f\,}{{\bf d}x}}}$$
ということになる。
高校数学では「$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}y\,}{{\rm d}x}}$$を分数として扱うな!!!」と口すっぱく言われたと思うが、大学数学じゃ割と分数として扱ってよさそう。
$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}g\,}{{\rm d}f}\cdot\frac{\,{\rm d}f\,}{{\rm d}x}=\frac{\,{\rm d}g\,}{\cancel{{\rm d}f}}\cdot\frac{\cancel{{\rm d}f}}{\,{\rm d}x\,}=\frac{\,{\rm d}g\,}{{\rm d}x}}$$みたいなところあるし。
かなり先にある積分でも$${{\rm d}x}$$とかを普通に掛け算できる一つの記号として扱う節がある。置換積分での$${t=f(x) \longrightarrow {\rm d}t=f'(x)\,{\rm d}x}$$と言えば伝わる人には伝わるはず。
また、これは合成・される関数が増えても同じ適用される。
$${A\xrightarrow{\;\;\;f\;\;\;}B\xrightarrow{\;\;\;g\;\;\;}C\xrightarrow{\;\;\;h\;\;\;}D\xrightarrow{\;\;\;i\;\;\;}E\xrightarrow{\;\;\;j\;\;\;}F}$$なら
$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}j\,}{{\rm d}x}=\frac{\,{\rm d}j\,}{{\rm d}i}\cdot\frac{\,{\rm d}i\,}{{\rm d}h}\cdot\frac{\,{\rm d}h\,}{{\rm d}g}\cdot\frac{\,{\rm d}g\,}{{\rm d}f}\cdot\frac{\,{\rm d}f\,}{{\rm d}x}}$$という中々酷いことになる。
プライム記号を使ったら$${(j\circ i\circ h\circ g\circ f)'(x)}$$は
$${f'(x)\cdot g'(f(x))\cdot h'((g\circ f)(x))\cdot i'((h\circ g\circ f)(x))\cdot j'((i\circ h\circ g\circ f)(x))}$$になる。酷い。
でも実際これが問題として出たんだな、これが。
既に尺が長くなってはいるが、例題を見せよう。
2.3. 指数・対数関数の導関数の拡張
さて、先ほどの1で導関数を説明するとき指数&対数の底を何の説明もなしに$${e}$$にしていたが、それは底を$${e}$$にした方が一番綺麗だから。
じゃ底が変わると導関数が変わるのか。変わる。
まずは指数から。底の変換公式をフル活用する。
ほぉ、係数として$${\ln a}$$が加わるのか。
そう思えば$${\ln e=1}$$だし、$${(e^x)'=e^x}$$になるのも納得。
それじゃ次は対数。
お~……。基本的に$${x}$$がいるところに$${\ln a}$$をかけると大丈夫そうだな。
ということで底に$${e}$$がなくても問題なしになりました。ちゃんちゃん。
2.4. n階導関数
まぁ終わらないんだが。ここでは$${\bm{n}}$$階導関数について触れていく。
区切り方は「$${n}$$階 / 導関数」。まさに$${n}$$回微分した関数。
まず一階導関数は普通の導関数、$${f'(x)=\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}f(x)}$$。
二階導関数は導関数をもっかい微分したもの。つまり$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}\left\{\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}f(x)\right\}}$$。これを$${f''(x)}$$、もしくは$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}^2\!f\,}{{\rm d}x^2}=\frac{{\rm d}^2}{\,{\rm d}x^2\,}f(x)}$$のように書く。
もちろん導関数$${f'(x)}$$が微分可能な時にだけ成立する。
三階導関数も同様に二階導関数の導関数。$${\displaystyle\{f''(x)\}'=f'''(x)=\frac{{\rm d}^3\!f}{\,{\rm d}x^3\,}}$$。
そしてこれを一般化したのが$${\bm{n}}$$階導関数。
$${(n-1)}$$階導関数を微分するか、原始関数を$${n}$$回微分するかして求められる。
表すときには流石に$${'}$$を$${n}$$個書くわけにもいかないので、
$${f^{(n)}(x)}$$、もしくは$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}^nf\,}{{\rm d}x^n}}$$と書く。
用途としては……
点$${\mathrm{P}}$$の時間$${t}$$による位置を$${x(t)}$$とすると、
その導関数$${x'(t)}$$は点$${\mathrm{P}}$$の速度、
その二階導関数$${x''(t)}$$は点$${\mathrm{P}}$$の加速度。
微分の応用パートでまた違う用途も説明する。
2.5. 逆関数の微分法
さて、2.1で「$${{\rm d}y/{\rm d}x}$$は分数として扱っても大丈夫そう」と言ったのだが、ここでそれが本当になる。
逆関数、つまり$${f(x)}$$が与えられたとき$${f^{-1}(x)}$$の導関数を求めることができる。
……なんと。$${f(y)}$$を$${y}$$に対して微分したのは$${f^{-1}(x)}$$を$${x}$$に対して微分したものの逆数らしい。
疑わしくはあるが、$${\displaystyle\frac{{\rm d}y}{{\rm d}x}=\frac1{\displaystyle\frac{\,{\rm d}x\,}{{\rm d}y}}}$$であるのは本当なので納得するしかない。
3. 陰関数とその微分法
3.1. 陰関数(Implicit f.)
陰関数。微積を履修していないとほぼ初見単語だと思われる。
どんな関数なんじゃ、というと、こんな関数。
……それ自体じゃ関数にならなくね? と思うかもしれない。
ご名答。陰関数を陽関数に表すとそれが一つだけになるとは限らない。
早速例を見てみよう。
陰関数 $${x^2+y^2=25}$$を$${y}$$に関して解くと、$${y^2=25-x^2}$$、$${y=\pm\sqrt{25-x^2}}$$。
つまり$${x^2+y^2=25}$$は$${y=\sqrt{25-x^2}}$$と$${y=-\,\sqrt{25-x^2}}$$の二つで構成されているということになる。
実際にグラフを描いてみるとこうなる。
普通に円。そういや高1の円の方程式でもやったね、これ。
$${(x-p)^2+(y-q)^2=r^2}$$は点$${(p,\;q)}$$が中心で半径が$${r}$$の円の方程式という。
3.2. 陰関数微分法
さて、これの微分をどうするか、という話になる。
なんでそんなことするの……? っていう反応もあるかもだが、陰関数の形に直すことで計算しやすくなるときもある。
一応前提として、陰関数を陽関数の形に直したとき、それが全部微分可能だと判断されたときのみこのテクを使える。でもまぁ、問題に出るくらいなら微分可能であるはずなのでそうと仮定してやっていこう。
まずは一つ目の陰関数微分法。これから長くなりそうなときはIm.f. D.と略す。
つまり、$${\displaystyle\frac {\rm d}{\,{\rm d}x\,}\{P(x)+Q(y)\}=0 \Longleftrightarrow P\:\!'(x)+Q'(y)\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}=0}$$で、
最終的な$${\displaystyle\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}}$$は$${-\displaystyle\frac{\,Q'(y)\,}{P(x)}}$$になる。
でも綺麗に$${P(x)}$$と$${Q(y)}$$に分かれない場合が多いので、これを覚えるのはあんまりおすすめはしない。
また違う陰関数の例を見て、それの$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}y\,}{{\rm d}x}}$$を実際に求めてみよう。
$${x^3+y^3=6xy}$$← これの微分をやれと。
一旦すべてに$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}}$$をかぶせよう。
$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}x^3+\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}y^3=\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}6xy}$$、これを計算するわけだが、
$${{\rm d}/{\rm d}x\,(6xy)}$$はどうするのか。
まぁ思っているよりは簡単。積の微分法を使う。$${(fg)'=f'g+fg'}$$というやつ。
上手くやっていくとこうなる。
$${\displaystyle3x^2+3y^2\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}=6y+6x\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}}$$
これを$${{\rm d}y/{\rm d}x}$$に対して解くと
$${\displaystyle(3y^2-6x)\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}=6y-3x^2}$$、$${\displaystyle\frac{{\rm d}y}{{\rm d}x}=\frac{\,2y-x^2\,}{y^2-2x}}$$。
よし、解けたね。この$${{\rm d}y/{\rm d}x}$$が陰関数微分法の成果物と言える。
これの使い道としては、やはり接線の傾き&方程式だろう。
$${\mathsf{gr.}\{f(x,\;y)=0\}}$$上の点$${(a,\;b)}$$で引いた接線の傾きは$${\displaystyle\left.\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}\right|_{x=a,\:y=b}}$$で、
点$${(a,\;b)}$$で引いた接線の方程式は$${y=\displaystyle\left.\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}\right|_{x=a,\:y=b}(x-a)+b}$$になる。
実際に本に載っているやつをそのまま持ってきてみる。(表記は違うが)
先程$${{\rm d}y/{\rm d}x}$$は求めたので、実際に代入しよう。
$${(3,\;3)}$$での接線の方程式は$${y=\displaystyle\left.\frac{{\rm d}y}{\,{\rm d}x\,}\right|_{x=y=3}(x-3)+3}$$になる。実際に計算していこう。
$${y=\displaystyle\left.\frac{2y-x^2}{\,y^2-2x\,}\right|_{x=y=3}(x-3)+3}$$
$${y=\displaystyle\frac{2\cdot3-3^2}{\,3^2-2\cdot3\,}(x-3)+3}$$
$${\bm{y=-\,x+6}\;\;\blacksquare}$$
実際にグラフに描いてみるとこうなる。
おお、ぴったり。よかったよかった。
そしてこれは、逆関数の導関数を解くために使っても大丈夫。
$${y=f^{-1}(x)}$$は$${x=f(y)}$$と同じ感じなので、これを陰関数と見立てて$${x}$$に対して微分すればOK。
せっかくなので$${\ln}$$をこの方法を使って4で証明していく。
お楽しみに(?)。
3.4. 対数微分法(Logarithmic D.)
対数微分法(略:Log D.)。これまた新しい微分法だが、いったい何者なんだ。
対数ってついてるくらいだし対数を使うのか?
はい、大正解。対数に入った真数は$${\ln A^p=p\ln A}$$みたいに指数を係数に引き出せるという結構魅力的な性質があるため、指数にややこしいものが乗っているときによく使われる。
$${y=f(x)}$$を微分するとき、
指数が面倒そうだったら両辺に$${\ln}$$をつけて$${\ln y=\ln f(x)}$$のような形にして、
またIm.f. D.を使って最終的に$${{\rm d}y/{\rm d}x}$$か$${y'}$$のみを抽出すればOK。
イメージとしては$${y=f(x)^{g(x)}}$$を$${\ln y=g(x)\ln f(x)}$$に直して全ての項を$${x}$$に対して微分する、という感じ。
ということで、$${y=x^x}$$とかいうなんか禍々しい関数もLog D.を使って導関数を求めることができる。
やってみよ~、どうなるんだろ。
なぜか微分をしたら何かが増えるという。多項関数じゃ減るのが基本だったからちょい新鮮。
4. パスした導関数の証明
4.1. 逆三角関数の導関数
逆三角関数、$${\sin^{-1}x}$$と$${\cos^{-1}x}$$と$${\tan^{-1}x}$$。
逆関数の微分法でやってみる。
……が、尺が長くなるのもアレなのでこちらも$${\sin^{-1}x}$$のみ証明していく。
他のヤツも、
$${\displaystyle\frac{{\rm d}}{\,{\rm d}y\,}\cos y=-\sin y}$$と$${\sin x=\sqrt{1-\cos^2 x\,}}$$($${\cos^{-1}x}$$の定義域内)、
$${\displaystyle\frac{{\rm d}}{\,{\rm d}y\,}\tan y=\sec^2 y}$$と$${\sec^2x=1+\tan^2x}$$を使って色々やればOK。
4.2. ln xの導関数
さて、$${y=\ln x}$$の証明が1の段階ではできないと言ったが、Im.f. D.を身に着けた私たちにとっては屁でもない(?)。
$${y=\ln x}$$を陰関数の形に直す。対数の定義を用いて$${e^y=x}$$にしよう。
ここで$${\displaystyle\frac{\,{\rm d}y\,}{{\rm d}x}}$$を求めれば$${\displaystyle\frac{\rm d}{\,{\rm d}x\,}\ln x}$$を求めたとも言えるだろう。
上では$${\ln x}$$ではなく$${\ln |x|}$$だったので、$${\ln x}$$だけじゃなくて$${\ln\,(-\,x)}$$もやってしまおう。
$${y=\ln\,(-\,x)}$$を陰関数の形に直すと$${e^y=-\,x}$$
あれ、変わんないのか。都合がいいですねぇ。
ということで$${\ln x}$$の導関数は$${\displaystyle\frac1{\,x\,}}$$だと堂々と胸を張って言えるようになった。
底が$${e}$$ではない(底の条件を満たす)実数になっても同様の証明ができる。
4.3. xⁿ(n∈ℝ)の導関数
最後に、今度は指数微分法を使って$${y=x^n\;\;(n\in\mathbb{R})}$$の証明をやってみる。
二項定理証明では$${n\in\mathbb{N}}$$だったからね。
ちなみにここで二項定理は$${(a+b)^n}$$で$${n}$$が自然数であることが前提だから使えない。ということで大人しく指数微分法を使おう。
おーけー、これでまた$${n}$$が自然数じゃなくとも$${(x^n)'=nx^{n-1}}$$と堂々と胸を張って言えるようになった。
これで微分法の基本は終わり。このあとは微分の応用……のはずだったのだが、
YKが受けていた講義ではパスされた導関数の用途について軽く触れていこうと思う。本当に軽~~くなのであんまり期待はしないでほしい。何せ履修していないのだ。
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