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ライター・イン・レジデンス、いよいよ始めました
「天国」だったカフェ兼農園の運営に関わっていた時に農園の「1週間体験プログラム」を始めたぼくは、やがて、外から来た人を農園の施設内だけに留めてしまうのではなく、外から来てくれる人と地域を繋げられないかと思い始めた。
一度考え始めたらずーっとそのことが頭から離れず、うまいやり方ができないか考えているうちに、偶然ライターを一定期間滞在させて執筆してもらうという取組みをwebで知った。
そのとき知った「Amtrak Residency」(ライターが寝台列車に乗り、2日間から5日間の乗車時間を鉄道旅行の魅力を発信するための執筆に充てる)。そして「Write A House」(財政破綻したデトロイト市が、増えすぎてしまった空家に借り手を増やすために空家にライターを住まわせ、町の情報を発信そてもらう。ライターが2年間そこで成果を出すと、住まいとなっていた空家がプレゼントされる)というライター・イン・レジデンスはぼくをとてもわくわくさせた。
といっても、自分自身が参加者になりたいという意味ではなく、企画としての面白さにだ。
そのわくわくは、長く考えていた「外から来てくれる人と地域を繋げられないか」という思いと一致したからだ。
ライター・イン・レジデンスにはさまざまな形があり、期間は短いもので2日間程度から3年間にもなるものもあれば、指定される執筆内容はライター・イン・レジデンス企画者の目的に準じて、小説(滞在地域を題材にするものを含む)、旅の魅力の発信、町の情報発信と多岐に渡る。その立て付けは、千差万別で自由だ。
その自由さも面白いと思った。
「ある程度のルールがあり、その中でならどう組み立ててもいい」という状況は発想を触発する。
「Amtrak Residency」と「Write A House」を知った2015年当時は、国内でのライター・イン・レジデンスプログラムの事例は見つけられなかったし、個人が主催するという事例も見つけられなかったが、(というか国内事例が無い時点で英語を読めないぼくの事例探しは一瞬で終わった)誰かの許可を得る必要もない取り組みであることはわかったし、どうやってやるかはともかく「自分で企画してみたい」という気持ちになるのに時間はかからなかった。
こうしてライター・イン・レジデンスの開催を探り始めたが、「ライター・イン・レジデンスはプロのライターが滞在した上で成果物を残すもの」という思い込みもあったため、具体的にどのような仕組みにしたらよいかと頭を悩ませました。
考えるべきことは、開催場所と、開催期間と、プログラム内容と、執筆内容と、費用。できることはできるが、できないことはできない。ならばできる範囲でやってみるしかない。
報酬や実績といった、プロが参加する動機づけができなければ、ライター志望者に来てもらえるプログラムを作ればいいし、長期間部屋を貸すのが難しければ、たとえば数日間程度の短期間にしてしまえばいい、と。
また、「なぜやるのか」という動機を改めて自分に対して突き詰めていくうちに、「志ある未来の書き手を育む」という目的も明確になってきた。もちろん「外の人と地域とを繋ぐ」という目的もそのままに。
やがて、
開催場所は寝泊りも含めて自宅。※妻の承諾を得るのみ!
開催期間は4日間。※妻の承諾を得るのみ!
プログラム内容は、ライター志望者の学びになるもの。
そして執筆内容は、地域の人を取材して記事にする。
と決まった。
(ちなみに妻の承諾は1分かからずにOKでした。)
あとは費用面。
あくまでも個人で始めることなので、「Amtrak Residency」と「Write A House」のように、行政や企業のバックアップは無い。
ならば参加費を設定するのか?設定するならいくらが適正なのか?
正解の無い問題を考えているうちに、考えてもあまりしょうがないように思えてきた。お金を貰えるとか貰えないとかよりも、やりたいことができないことの方が嫌だなと思った。結果、「最低0円からのドネーション制で参加者に決めてもらえばいい」ということにした。
自分が作った料理を、値段を考えているうちに冷めていくのを見るのは嫌だったから。
こうした試行錯誤があって、ぼくの企画するライター・イン・レジデンスの初回は2015年2月に開催。その1ヶ月前に募集を開始した。
※もう少し続きます。