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ITOMACHI HOTEL 0 水音 収録体験記
こんにちは。AISOの日山です。
今回、愛媛県西条市 ゼロエネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』に『AISO』を導入いただきました。まずは概要を。
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>ゼロエネルギーホテル〈ITOMACHI HOTEL 0〉が開業 [TECTURE MAG]
隈研吾建築都市設計事務所が建物を設計、インテリアとランドスケープデザインをDugout Architectsが担当されており、敷地内には自噴する(!!)地下水「うちぬき」を体験できます。
西条の人と水との大切な関わり。水という恵みの循環。
雨が山に降り注ぎ土から滲み出てくる、それは川となり、流れて、山間部に集落ができ、棚田に水路ができる。平野部に近づくにつれ流れは大きくなり憩いの場となる。市街地では”うちぬき”となってまた生活に恵みを与える。
ITOMACHI HOTEL 0のAISOには、現地で実際に収録したその水のあり方をインストールし、循環するように再生するBGM設計を施しています。
愛媛県西条市へ訪れる機会があれば是非体験してみてください。
>ITOMACHI HOTEL 0(いとまちホテルゼロ)公式ウェブサイト
そして以下からが、その収録体験記。
ヒアリング・リサーチを通してのコンセプトメイク・フォーカス、そしてデザイン(収録まで)について書き留めておきたいと思いましたので、乱筆で恐縮なことですがここに残します。
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前談
企画・運営のGOODTIME 明山さんとのヒアリングのなか、ホテルの名前にもなっているゼロエネルギー、そして、新街区「いとまち」と西条の人たちとの関わりが少しずつ浮かび上がってきて。
漠然と、でも強く「水の音が必要だ」と思いました。
ただ「水の音」を起用することは、日本は水の豊かな国ですし、また昨今のフィールドレコーディングの流れもあり、ITOMACHI HOTEL 0をあらわす要素として、強いものとは言えないのでは……そう思う自分もいたのは正直なところ。
しかし、その考えはすぐに変わります。
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1日目 闇の山頂
その数週間後、建設中のITOMACHI HOTEL 0を訪れることに。
本当は現場確認のためという話だったのですが、やはり水音への思いは止められず、録音機材をバッグに忍ばせて。
羽田から飛行機で数時間。初めて降り立った松山空港。
「滑走路が濡れている!!!」
機内から、水に濡れて色が濃くなり時折キラキラ反射する路面を見て、!マーク3個分くらい興奮したのを今でも覚えています。
「今この数時間前に雨が降っていたんだ」
「今まさに、山に、土に水が染み込んでいる」
「うちぬきの始まりの始まりだ!」と。
松山空港でレンタカーを借り、西条市へ向かう途中、山々を掻い潜る。
稜線がしっかり見てとれ、傾斜は大きく、岩肌が多い。時期もよく、緑・黄・桃の様々な植物が見られた。地元九州で見た山々とはまた違う、荒さと力強さ。
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高速をおり、西条市に到着するや否や、田畑沿いの空き地に車を止め、「今から音を録ってやるぞ!」と思いを乗せて、雲の帽子をかぶった山の写真を一枚。
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腹ごしらえも重要よね、と、GOODTIME 山口さんにお薦めいただいていたカフェ・レストランへ立ち寄る。
お店のご夫婦がとても良い方で、ご主人は西条生まれとのこと。この地を知りたく、この地の人を知りたく、興味抑えられずヒアリングモード。
詳細は長くなるので控えるが、ここに住んでいる人、刺さる話があった。
「休日、川を見ながらのんびりするのがが好き」
その言葉もなんだか心に残って。
食事を終え、山へ。目指すは、西条を流れる最も大きい川「加茂川」の上流。国道194号。
深い時間ではないけれど山は山。水源を求め国道から峠道に入ると闇・闇・闇。一部のみを強めのコントラストで照らす車のライトと水の音だけを頼りに上へ上へ。
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見つけた水の音は「ポツポツ」「ポタポタ」雫の音。山に降り注いだ雨が、土を通り、今まさに滲み出てきている音。
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そこから数歩移動すると、雫は集まり、小さな流れができていた。
車のエンジンを切って、闇(とその恐怖)の中たくさんの音を録り続け。野うさぎと出会う嬉しい出来事もありながら、その日は下山。気づけば日付はもう変わっていました…..。
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2日目 うちぬきツアー
次の日は打って変わって市街地のうちぬきツアーへ。GOODTIME 山口さんにご案内いただき、街の至る所で噴き出しているうちぬきを一つ一つ体験。頭では理解していても不思議な光景で。学校の前、交差点の角、小さな公園、一番驚いたのは漁港の先端(周り全て海水なのに真水が噴き出している)にまで!
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うちぬきは、西条の人たちの生活と密接である事が深く深く伝わった。公園で遊ぶ子供たちの飲み水になり、学校の課外授業の場となり、時にはその美しさと音色による癒しの場にもなっていて。最も多くみられたのが水汲み。生活用水として幾つものタンクに水を入れている光景を何度も見た。のちの山間部調査でも水汲み場を複数見つけて。
うちぬきツアーが終わる頃は、もう日が沈みかけ。ITOMACHI HOTEL 0に隣接する「いとまちマルシェ」前の広場にあるうちぬきを眺めながら、改めて西条特有の水と人の関わりを考え、山頂と平野部の間のそれについても体感すべきと強く思う。
いろんなうちぬきの音を聴いてきたけれど本当に独特で。とにかく優しい。自噴という絶妙な水圧だからか、ビチャビチャでもバチャバチャでもない。ホヨホヨ、フピャフピャ。もうそれは楽器のよう。心地よく、時々和音すら奏でていた(その時のツイートを埋め込んでおきます)。
水音、水音、水音。いくつもの水音を録る。そして、この地域での水と生活の近さを思い知る。雨が降り注ぐ山頂から海岸の先っぽまで。録りまくって分かった。
— Go Hiyama / LisM / 日山 豪 (@GoHiyama) March 27, 2023
いま目の前の水はこんな音を奏でています。 pic.twitter.com/YRcxIcwkHr
3日目 再び山へ
そのまた次の明朝。改めて街から山頂へ向かい、少しずつ下山しながら音採集を重ねていく。
道中でも水汲み場でタンクを運んでいる夫婦、川辺で水面を眺めながら安らぐ女性の姿も。
ここまで音を聴き続けていると頂上付近から下流へかけて水音の変化がわかってくる。ポタポタからチロチロへ。そこから渓流になっていくと飛沫や泡の音がする。ゴツゴツと力強い岩場の間を通り抜けたり、渦になっていたり、流れの速度も様々で。遠くからは、山で反響を繰り返すサーっという川の音が曖昧な輪郭で聴こえてくる。
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しかし、人の手が加わるとまた大きく変わる。国道から上へ下へと外れる急傾斜の細道に入り、いくつかの集落を訪れてみる。そのうちのひとつには美しい棚田風景があり、水路がしっかりと整備されていた。水流の速度は上がり、直線的で動きに無駄がない。水を溜める箇所ではドプンドプン鳴る。
自然と人間が交わるところ。それが音でも伝わって。驚きと少しの恐怖があった(ちなみに、こちらの棚田ではものすごい音量で歌謡曲が聴けます。気になる方は『西条 棚田 演歌』で検索してみてください。何か出てくると思います。)
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街に程近い下流。うちぬきの手前。そこまでくると大きく整備された川に姿を変える。緩やかな流れの箇所では水際までいけるような階段がいくつもあり、土手道には桜が咲き、露店が出ているところもあった。
先に女性が安らいでいた場所と同じところへ行ってみる。水流を弱めるためなのか規則的な形状をしたコンクリートの川底。そこを流れる水の音は柔らかく、でもその大きな川幅を感じる音像へと変化して。上流に比べると何か安心感がある。確かにこの場所は癒されるなぁ。
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そして、ここまで聴いてきた水は地面の下でも流れ、うちぬきとなり市街地の至るところでホヨホヨと音を立てて顔を出す。
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西条。そこの水の道。その恵みと人たち。
録れた。厳選して100音弱。道筋に沿って、滲み出て、流れて、顔を出すまでをAISOにインストール。ITOMACHI HOTEL 0のBGMとして、その循環を表してくれていると思います。
西条にお住まいの方も市外からお越しの方も、ここを訪れる皆さんへ、耳からも伝えたいという思いを込めました。ギターやピアノの音たちも添えています。もしお近くにいらっしゃることがあれば、聴いて(聞き流して?)いただけると嬉しいです。
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>ITOMACHI HOTEL 0(いとまちホテルゼロ)公式ウェブサイト