ゲートウォッチの奇跡

『モダンホライゾン3』合わせでエルドラージ周りのストーリーが再掲されています。そこで思い出した話をひとつ。

https://mtg-jp.com/reading/ur/OGW/0016437/

こちら、ゲートウォッチ結成回でプレインズウォーカー4人が「誓い」を述べます。そしてその口上はフレイバーテキストと同じなのですが、翻訳の際に問題がひとつありました。

「多元宇宙の繁栄のため、私はゲートウォッチとなる。」

それはジェイスの一人称。物語では「俺」なのですが当時のカードでのそれは「私」。FTに合わせるにしてもいきなりここだけ違う一人称になるのは違和感をまぬがれないよな……困ったな……と思っていました。が。

ジェイスはチャンドラを見つめながら、一歩進み出た。「ギデオンの言う通りだ。俺たち四人には特別な力がある。俺たちにだけ与えられた機会が、責任とすら言ってもいいものがある――こんな脅威と戦うために力を振るうんだ。そう、エルドラージ。だけどひとつの次元に留まらない脅威はまだ他にも存在する。プレインズウォーカーはどんな危険からも逃げられる、なんて言われていることは知っている。けれど俺たちは逃げずに戦える者でもあるんだ」

 「きちんと言って」その顔に浮かべた憤怒をかすかな微笑みで解き、ニッサは言った。

 「何を?」

 「誓いみたいに、きちんと言って」

https://mtg-jp.com/reading/ur/OGW/0016437/

「きちんと言って」。当時ラヴニカ次元にて「ギルドパクトの体現者」という公的な地位にあったジェイスは、公人として振舞う際には普段よりもフォーマルな言葉遣いを心がけていたのでした。ニッサが「きちんと言って」と押したことで、ジェイスは畏まった口調で誓いを立てます。

ジェイスは彼女へと笑みを返した。「いいとも。俺は……」そこで彼は額に皺を寄せ、唇からは笑みが消えた。「私は想像を絶する脅威を見てきた。エルドラージが脅かしているのはゼンディカーだけではない。もし私たちがここを見捨てたなら、エルドラージを放置したなら、あれらは次元から次元へと貪りながら進み、やがてはラヴニカまでも不毛の地と化すだろう。今この時にも、エムラクールは次に食らう次元を探し、久遠の闇を彷徨っているのかもしれない」

https://mtg-jp.com/reading/ur/OGW/0016437/

こうして奇跡的にこの場面の一人称をFTと合わせることができたという話でした。