2015年、ナヒリについての仮説 そんなこともありましたね


もう5年近く前になる2015年春頃から(正確に言うと公式記事「ソリンの修復」が公開された2015年3月27日から)背景ストーリー好きの間で一つの噂が流れました。タルキール~戦乱のゼンディカーの物語が進んでいくにあたり、かつてエルドラージを封じた一人であるナヒリが行方不明である。それを知っているらしいソリンの態度が非常に怪しい……という所で、多くの人が一つの仮説に行き着きました。ソリンが創造した守護天使アヴァシンは……ナヒリなのでは? というものです。その後の展開で否定されましたが、当時真面目に考察した文章がこちらになります。記事にならなかったのは主にボリューム不足のためです。

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『タルキール龍紀伝』の歴史では、ソリンがウギンを目覚めさせました。ですがソリンとウギンとの再会が語られたその公式記事「ソリンの修復」(http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0014545/)にて、ソリンはエルドラージ封印メンバーの三人目である《石術師、ナヒリ/Nahiri, the Lithomancer(C14)》の行方について尋ねられるのですが、その際の彼の挙動は明らかに不審でした。

(記事より引用)
「面晶体の魔道士は? ナヒリは何処におる?」
「羞恥」という概念はソリンから消失して長かった。何千年もの時の間に、人間としての彼の脆さと不安は成長し、花開き、そして枯れ落ちた――長い時を生き、彼は後悔というものに動じなくなった。そして、それでも、長い時の中で初めて、ある心地の悪い感情が彼の内で増大した。不快な痒みが、ある重要な物事をしくじった、その責任を彼が――彼一人だけが――負うという感情が。それは正確には自責ではなかった。彼の心の中、自責というものがかつてあった場所にこだまする、ただ鈍い、調子外れの響きだった。
「彼女は――ここにはいない」 特定の声色を出すことなく、ソリンは言った。

まるで「自分のせいで喧嘩別れした彼女を連れて来いと言われて困っている彼氏」のようですが、これを読むに、ソリンの責任でナヒリが何か良くないことになっている模様。そして二人の間に一体何が……と考えてすぐ「ある存在」に思い当たり、ぞくりとした人は私だけでなくどうやら結構いたようです。
ソリンの創造物、白い髪に白い肌をしたあの天使。

《希望の天使アヴァシン/Avacyn, Angel of Hope(AVR)》

アヴァシンは元々「ソリン自身がモデル」なのですが、今見るとその外見は……もしかしてナヒリを「使った」のでは? という疑念が頭をよぎりました。そして悪いことに、色々と「辻褄が合う」のは事実です。列挙してみましょう。

■白い髪に白い肌の外見

■ソリンはアヴァシンを創造する際に「とても愛しいものを捧げねばならなかった」

公式記事「信仰の現状」(http://mtg-jp.com/reading/translated/stf/002808/)に、ソリンがアヴァシンを創造するにあたってどれほどのものが必要だったか、が書かれていました。

(記事より抜粋)
ソリンは彼にとってとても愛しいものを捧げねばならなかったと私は思う。マナと魔力に加えて、アヴァシンを創造するために必要な魔法を一つに集めるために。ちょうどリリアナが力と若さを永遠のものとするために大悪魔からの助けを必要としたように。(中略)もしかしたらソリンは彼自身の小さな、取り戻すことのできない一片を断ち切って、それを彼の創造物へと与えたのかもしれない。彼女へと真の、永続の、世界を守護する生命を与えるために。私はそれが盲腸や足指の先なんかだと言うつもりはない。何かもっと深い、奇妙な、より貴重なものだ。

例え旧世代プレインズウォーカーといえども、無から「次元の守護天使」を創造することは不可能らしいです。「素体」となるものが必要だったのかもしれません、それも何か特別な。

■獄庫と面晶体の形状・機能の類似
(カード画像 《獄庫/Helvault(DKA)》《号泣の石/Keening Stone(ROE)》)

獄庫の由来は公式記事「銀の牢獄」(http://mtg-jp.com/reading/translated/stf/002796/)にあります。そして面晶体は、ナヒリが大地から菱形の岩を作り出し、ウギンが魔法文字を刻んだものです。そのやや細長い形の微妙な類似、「根本的に滅ぼすことができないものを封じ込める」という機能の一致。

■初代ソリン及び君主ソリンの奥義はどちらも「プレインズウォーカーを隷属させることができる」

《ソリン・マルコフ/Sorin Markov(ZEN)》《イニストラードの君主、ソリン/Sorin, Lord of Innistrad(DKA)》

《ソリン・マルコフ/Sorin Markov(ZEN)》の奥義はいわゆる《精神隷属器/Mindslaver(SOM)》ですが、プレイヤーもプレインズウォーカーです。血を吸い、下僕にするという吸血鬼能力のフレイバーがわかりやすく表れていますが、プレインズウォーカーをも支配できてしまう。物語中では、襲ってきた人間を吸血鬼化して隷属させるという事はたまにやっていました。他のプレインズウォーカーに対してこの能力を使用するような場面は今のところありませんが……。

■アヴァシンはプレインズウォーカーやイニストラードの外の世界の存在を知っている

公式記事「狩人は憐れむなかれ」にてアヴァシンは、明確にイニストラード以外の世界の存在や、その間を渡る者達がいることを知って話していました。また『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2015』のイニストラード面においてアヴァシンは「私達」というプレインズウォーカーに出会い、その力を試していました。

■何もなければナヒリは寿命を迎えている

時のらせんブロックの大イベント「大修復」によってプレインズウォーカーの性質は変化しました。一番大きなものの一つが「不老性を失った」というものでしょう。現在のプレインズウォーカーは何か特別な策を講じない限り(悪魔と契約する、元から不老種族である、etc)いずれは年を取って寿命を迎えます。そしてナヒリの種族であるコーは特に長命というわけではないようで、ゼンディカーアートブックにも「古のプレインズウォーカーは不老の灯を有しており、そのためナヒリは自然な寿命を越えて生きながらえていた」というように書かれていました。なので大修復後もナヒリが生きているというのは何か特殊な事が起こっていると考えて間違いなさそうです。

■公式記事「プレインズウォーカー達の現状2015」の記述

(記事より抜粋)
彼が守るべき次元が一つだけならば、物事は遥かに単純なのだが。

第36回にも書きましたが、つまりゼンディカーでエルドラージに対処することとイニストラードを守ることが両立しない? ちなみに疑惑の記事「ソリンの修復」の締めもこれとほぼ同じでした。

(記事より抜粋)
自分の世界だけを気にかけていれば良いのなら、物事はもっとずっと単純に済むのだろうが。

大事なことなので二度言いました? 何故?

とはいえ、アヴァシン創造についての明確な時系列は今のところわかっていません。それに何より、エルドラージの封印を保持するためにはナヒリの存在が不可欠です。いくらソリンが「闇の心の持ち主」だとしても、そんな彼女を自分の故郷の次元のために「使って」しまうのか? という疑念がどうしてもあります。
公式記事「まどろみから目醒めて」では一千年ほど昔、ナヒリはソリン&ウギンへとSOSを送るも二人はやって来ませんでした。時期的にウギンはまだ面晶体の繭の中で眠りについていたのでしょうが、ソリンは何故ナヒリの呼び出しを無視したのか。その記事ラストでナヒリはソリンを心配し、彼を探すべく旅立ちました。果たしてこの後、二人の間に何が起こるのでしょう……?

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何度も言うけれど、私はまた仲の良い二人を見たいんですよ。灯争大戦では一応最後には共闘していたけれど。共通の友人であるウギンもいなくなってしまった。ゼンディカーライジングにナヒリは出てくるのでしょうか?