怪獣ものがたり#14 『風鬼のそよかぜ』
風鬼の儚いストーリー
風鬼は遥か昔、風の精霊たちが集う天空の国「風天界(ふうてんかい)」に生まれました。風天界は、常に美しい風が吹き渡り、虹色の雲が空を彩る幻想的な場所でした。風鬼は、この国で生まれた最も強力な精霊の一つであり、風の流れを自在に操る力を持っていました。
風鬼の役目
風鬼の役目は、地上の人々に風の恵みを届けることでした。彼は、涼しい風を吹かせて夏の暑さを和らげたり、穀物が豊かに育つように風を送ったりしていました。風鬼の風は、人々に安らぎと繁栄をもたらし、皆から敬愛されていました。
禁断の愛
ある日、風鬼は地上を訪れた際、美しい人間の娘「霞(かすみ)」に出会いました。彼女は村の中でも特に優れた踊り手で、風に乗って舞う姿がまるで天使のようでした。風鬼は彼女に一目惚れし、彼女との時間を過ごすために頻繁に地上を訪れるようになりました。
しかし、風天界の掟では、精霊が人間に恋をすることは禁止されていました。風鬼はその掟を破り、霞との愛を深めていきました。
別れの時
風天界の長老たちは、風鬼の行動を知り、彼に厳しい罰を与えることを決めました。風鬼は永遠に風天界を追放され、地上での存在も許されなくなりました。霞との別れは避けられない運命でした。
最後の夜、風鬼は霞に自分の正体を明かし、永遠の別れを告げました。悲しみに暮れる霞は、風鬼が再び自由に風を操ることができるようにと祈り続けました。
そよかぜの誕生
風鬼は消えてしまいましたが、彼の風の力は地上に残されました。霞の祈りが通じたのか、風鬼の風は今も優しく地上を吹き抜けると言われています。この優しい風は「そよかぜ」と呼ばれ、風鬼が愛する人々を見守り続けている証とされています。
そよかぜが吹く日は、風鬼が霞を思い出し、彼女の元に寄り添っているのだと、村の人々は信じています。そして、そよかぜは風鬼と霞の悲しい恋の物語を思い起こさせ、自然の中に彼らの愛が息づいていることを感じさせるのです。
このように、そよかぜは風鬼の愛と悲しみの物語に由来しており、人々の心に深く刻まれた伝説として今も語り継がれています。
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