音楽的観点から見る「茜心」と「ガラスボールリジェクション」
2023年3月15日に発売されたLiella!のアルバム『Second Sparkle』。
同アルバムに収録された2つの曲に注目してみる。
「茜心」と「ガラスボールリジェクション」
米女メイのソロ曲と若菜四季のソロ曲だ。
この2人は言わずもがな、作中で絡みの多い組み合わせだ。
『ラブライブ!シリーズ』ではこれまで多くのカップリングが生み出されてきたが、この2人からは友情以上のものを感じる場面が他のカップリングに比べて多い。
Liella! 4th LoveLive! Tour ~brand new Sparkle~ で初披露された楽曲だが、
当時から演出面において、他のソロ曲とは一線を画すものがあった。
(「茜心」を歌い終わった薮島朱音さんと、これから「ガラスボールリジェクション」を歌う大熊和奏さんを左右それぞれのモニターで同時に映し出すなど)
しかし、「ラブライブ!スーパースター!! Liella! ユニットライブ&ファンミーティングツアー 心・技・体!極上大冒険!!」神奈川公演で披露された2曲の演出に我々はさらに驚かされることになった。
共演
2024年8月3日に行われた公演で「茜心」が披露された。
4th ライブを彷彿とさせる演出で懐かしさ感じていた観客も多いだろう。
しかし、4th ライブとは全く違った演出がCメロで起こった。
ステージに大熊和奏さんが登場した。
予想しない出来事に観客は驚いた。
そして、Dメロの後半からは大熊和奏さんも歌唱に加わり、そのまま曲の終わりまでパフォーマンスを共にしていた。
翌日、「ガラスボールリジェクション」が披露された際も、同じタイミングで薮島朱音さんが登場し、会場は大いに盛り上がった。
この演出を音楽的観点から考察してみる
さて、では何故Dメロからの共演となったのか、2曲を採譜して見てみる。
2曲は原曲のキーが異なるため、今回はハ長調(C Major Key)に直して比べてみる。
上の画像はDメロの最初の4小節。
メロディ、コード進行、共に一致しているのが分かる。
物語を振り返ったうえで改めて歌詞を見ると、これらは自分自身への語りかけであると受け取れる。
スクールアイドルに憧れながらも、一歩を踏み出せないメイ。
上手に笑うことができない自分を守ろうとする四季。
5小節目からの4小節。
ここでは少しずつ前を向き始めている2人の心情が見て取れる。
7小節目の赤い枠で囲われたパートに注目してほしい。
この2音だけはこのDメロにおいて音階が一致していない。
なぜ作曲のめんま氏はここだけ音階をずらしたのか、物語を元に考察してみる。
Liella! に加入するまでの2人は、四季がメイの背中を押す関係になっていた。
同じ科学室にいた2人だが、メイはスクールアイドルに憧れを抱いていて、四季はそれを知っていて、メイにスクールアイドルになってほしかった。
「今なら叶うさ」と思い立ったことで一歩メイがリードした。
四季もそれを後ろから見るつもりだった。
その関係性がこのメロディに表れているのではないだろうか。
だが、メイも四季の気持ちに気付いた。
四季もスクールアイドルに興味を持っており、「自分には無理だ」と、かつてのメイと同じことを思っていた。
「四季が近くにいてくれたら頑張れそうな気がするんだ」とメイが言ったように、最後には2人足並みをそろえて入部した。
だから四季がメイに追いつくかたちでメロディが一致していく。
ここから先はDメロの終わりまでメロディが一致している。最後だけコード進行が違うが、これはこの後の展開を考慮してのことだろう。
さて、注目したいのは歌詞だ。
常々、ここの歌詞には疑問を抱いていた。
歌詞逆じゃね?
このDメロの後半。
「茜心」の歌詞は四季がメイに、
「ガラスボールリジェクション」はメイが四季に言っているように感じていた。
Dメロ後半のそれぞれの歌詞
まずは「茜心」。
歌詞は以下の通り。
証明するんだ 必ずできるって
不安も打ち砕いて 今
もっと燃えあがれ
自身がスクールアイドルになることに不安を抱いていたメイ。
メイには情熱があって可愛いから、必ずスクールアイドルになれるよ。
そんな四季の言葉に見える。
「もっと燃えあがれ」
これはメイの内に秘める想いを茜に染まる空に例えた歌詞。
四季の願いなのではないだろうか。
では次に「ガラスボールリジェクション」。
変わっていけるよ
いま僕が見てる煌めき
もっと鮮やかに もっと広がってけ
「変わっていけるよ」は、中学時代から人との付き合い方が変わらない四季に対してメイが呆れていたシーンに関連づいていると思われる。
「いま僕が見てる煌めき」は科学室で「GO!!リスタート」を踊っていた四季を見たメイが、四季も実はスクールアイドルに興味を持っており、内なる想いを秘めていることに気付いた時の心情。
それが「ガラスボール」を飛び出して日の目を浴びてほしいというメイの願いなのではないだろうか。
なぜDメロから共演したのか
Dメロの歌詞に2人の心情が表れていることを感じ取ったが、それより前、もとい最初から2人でパフォーマンスしてはいけなかったのか。
僕の答えは「このタイミングだから良い」ということ。
実はDメロ以前の歌詞ではお互いが向き合えていない。
お互いを意識している様子が見て取れる歌詞を抜粋してみる。
・君とだから行けるんだ(茜心)
・風穴あけた君が叫んだ早くもっと出ておいでと(ガラスボールリジェクション)
実は「茜心」の1番はメイがきな子に対して言っていることがほとんどで、
2番は自分自身への問いかけがメインだ。
「君とだから行けるんだ」はメイがかのんに諭された時に感じたことだろう。(「君」は四季のこと)
「風穴あけた君が叫んだ早くもっと出ておいでと」
この歌詞はひとつ前の項目でも触れた四季の人付き合いについての話。
高校では頑張ってみる、と言ったものの相変わらずの四季にメイが語りかけているが、四季はその言葉に向き合っていない。
「茜心」のDメロより前の歌詞はメイの自分自身への向き合い、そして四季と向き合おうとする決意の表れ。
「ガラスボールリジェクション」のDメロより前の歌詞はメイが四季の方を向いているか、四季がメイの方を向いているかであって向き合えていない。
そんなちぐはぐな状況から向き合うきっかけとして同じメロディを歌ったのではないだろうか。
ユニットライブにおけるラストサビ
「茜心」はラストサビを全て2人で歌ったことに対し、
「ガラスボールリジェクション」は最後のワンフレーズだけ四季のソロで締めた。
これはおそらく、ガラスボールに閉じこもっていて、その殻を「リジェクション(拒否)した」のは四季であり、メイは「外の世界」に出てきた四季を受け止めた立場だからではないだろうか。
これがもし歌詞の「ガラスボールリジェクション」もメイが一緒に歌っていたら、メイもガラスボールに閉じこもってしまっていたことになってしまう。
最後に
簡単にではあるが、この2曲を音楽的観点から考察してみた。
実はもっと語りたい部分はあるが、長くなりすぎてしまうので今回の記事では主にDメロにスポットを当てて考察した。
全く違う曲なのに途中で同じメロディを挿入することでそれぞれを歌う2人の関係性を思わせる構成に、発売当初感動したのを覚えている。
アニメだけでなく、ライブの幕間アニメや、雑誌の表紙や小話など、いたるところで2人のただならぬ関係は見て取れる。
それがソロ曲にまで表れるのだから、今後の2人の関係から目が離せない。
3期での2人に期待が高まる。
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