「茜心」と「ガラスボールリジェクション」のサビのメロディに隠された秘密
先日、「茜心」と「ガラスボールリジェクション」のDメロに関する記事を投稿した。
さらに分析を進めると興味深いことがあったので、ここでは両曲のサビについて記事をまとめる。
2曲のスケールについて
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2曲をイ短調に置き換えてスケールを表してみる。
図1はこの曲のメロディで主に使われている音を低い順に示したもの。
「dim5」と「M7」は正確にはスケールに含まれる音ではないが、曲中において目立って登場するため表記している。
では、この2音の正体は何なのだろうか。
ハーモニックマイナースケールとブルーノート
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イ短調(A miner key)のスケール音は以下の通り。
ラ:根音
シ:長2度
ド:短3度
レ:完全4度
ミ:完全5度
ファ:短6度
ソ:短7度
ここで短7度の音を半音高くしたスケールを「ハーモニックマイナースケール」と呼ぶ。
この2曲にはハーモニックマイナースケールの特性音がサビで登場する。
とはいえ、この2音は昨今のポップス(特にネット音楽)においては頻出である。
トレンドに合わせたヒット曲のメロディ作りにおいて、この2音は重要な要素となっているようだ。
では以上を踏まえてサビの冒頭を見てみよう。
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サビの冒頭から長3度(ミ)とブルーノート(ミ♭)の行き来が目立つ。
2曲ともブルーノートの使い方が同じである。
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サビの後半で長7度(ソ#)が登場するフレーズ。
どちらも1度の音(ラ)から半音下がり長7度(ソ#)へ。その後完全5度(ミ)へ進行するメロディになっている。
その直前、「茜心」の「えがいて」と「ガラスボールリジェクション」の「めばえた」のフレーズも1度の音を4連で鳴らしている部分も共通しており、この2曲の関連性を思わせる。
最も似ているフレーズ
この2曲のサビで最も似ているフレーズが3~4小節目にある。
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歌詞で言うところの、
「(信じ)たいもの信じて」と「(ひとりぼ)っちではいられない」のところである。
聴いた印象としては「違うメロディじゃない?」と感じるかもしれない。
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赤く囲った部分に注目してほしい。
「茜心」はイーブンビートと呼ばれるビートで、表拍と裏拍が均等に並んでいるビート。
「ガラスボールリジェクション」はシャッフルビートと呼ばれるビートで、裏拍が少し後ろになるビート。
ビートをどちらかに統一すると、2つのメロディが全く同じになる。
同時に再生すると裏拍がズレてちぐはぐになってしまうが、物語の中ですれ違ったり、ぶつかったり、なかなか歩幅が合わない様子をメロディで表現しているのではないか。
最後に
今回は「茜心」と「ガラスボールリジェクション」のサビのメロディに着目して記事を作成した。
この2曲にはサビとDメロ以外にも仕掛けがあるように思えてならない。