【令和6年王祇祭レポート】⑨春日神社: 棚上がり尋常・餅切り尋常・布剥ぎ尋常
舞台周りにいる「めぐりの長人衆」(おとなじゅう…と読むらしい)
今回、私は上座側のホント真後ろに陣取らせていただいたので、彼らの事を色々知ることができました。
当屋が回ってくる順番で座っているおじさまたち。みなさんの前には1人2台ほど保温ポットが置かれ、お重があったり、つまみがあったりしている。
ちなみにポットの中は、お湯と熱燗(もちろん!)これはどこの酒だから美味いとか、このせんべいんめのー!とか長人衆のおじさまたちはワイワイ楽しそうだ。
そして、このいい感じに酔っ払ったおじさまたちは後ろにいる私たちにも声をかけてくれる。そしてお酒をすすめてくる。飲めないと話すと、お重を出して食べなさい〜と色々くれる。当屋豆腐はもちろん、赤飯やらフルーツやらいろんなの。
おじさまたちの奥様が丁寧に作ってくれたごちそうをご相伴に預かる。
あまりもらって申し訳ないというと、「うちの母ちゃんがせっかくみんなで食べてと詰めてくれたんだから、みんな食べてくれればいいなんだー」と。うん。さすがにお重は1人で食べるには量が多すぎですよね笑
お母さんたちは、みんなでシェアして食べられるようにってたくさん作ってくれるんですね。周りの人にもお分けしたりして、ホント村の祭りに一緒に参加している感があってなんだかほっこりする。
私に色々お話ししてくれたり、食べ物を下さった方は、「来年はここ(隣の席)にいるから、来年も俺の後ろさ来いよ!いっぺ食わせてやる!」と言ってくれましたが、果たして来年まで私のことを覚えていてくださるかは・・・微妙なところ笑
・・・さて、王祇祭の進行に話を戻しますね。
式三番の三番叟が終わりに近づく頃、舞台奥の方では若い衆ががっしり肩を組み、わちゃわちゃと飛び跳ねながら声を上げています。
式三番が終わり、今度は本殿の前の板間をあけるため、グッと両脇に人が移動してきます。
すでにレポート⑦でもお伝えした中に、朝尋常がありましたね。・・・「尋常」ってなんだ?と思ってる方いるかなーと思っていますが…どうでしょう?
もしかしたらもっと適切な言葉があるのかもしれませんが、
尋常とはどうやら、王祇祭で行われる上座・下座の競争のことを指すようでした。
これから始まるのは、棚上がり尋常。
今度は中学生から高校生くらいの年齢の少年が両座から2人ずつ選ばれます。
何をするのかというと・・・
本殿前に4人が向かいあわせに座り、合図が出たら御神酒をグイッと飲み干し、板間を走り、舞台上に2mほどの高さに1畳ほどの大きさの棚があって、舞台の上の若い衆からアシストしてもらい登る。そして、下から突き出された王祇様を棚の上の梁に横にして載せて、座る。
・・・これがあっという間にスタートしてあっという間に終わっちゃう。
それからしばらくは舞台上も、棚の上の少年たちの出番もなく、このタイミングは舞台の方を向いていたらわからない進行があります。
後方の神前(本殿前)にて、神職・当屋頭人・王祇守・提灯持ちが席につき、神前で当屋頭人が無事につとめを終えたことを祝う為の酒宴で”当渡しの式”をします。
その手前では、折守(おりもり)と呼ばれる、2日目の行事を取り仕切る人が【小花、笹巻、くるみ、栗、干し柿、昆布、黒豆】をのせた小さなへぎ(お盆)のセットを作り始め、関係者に渡しているのでした。
私も、縁起物の小花をありがたくいただきました
・・・これ、拝殿に上がっている人にはわかるけど、氏子の人たちのエリア(舞台両脇)にいる人たちには見えないので、『何待ち?』な時間が過ぎていくんですよね・・・。
さてさて、いよいよ祭のクライマックスが近づいてきました。舞台に若い衆がわらわらと出てきて、ちょっとばかし緊張感すら漂います。
布剥ぎ尋常・餅きり尋常が始まります。折守が、小花を投げるのが合図で、棚に上がった若者の一人が王祇様をおろし、それを受け取った人が、神前にダッシュし、王祇様に巻かれた白布を剥いで、来年の王祇守に巻きつける。
王祇守に巻かれた白布は、染められ、来年の当屋頭人がまとう素襖*が作られるそう。*補足説明【素襖】→ (すおう:当屋頭人来ている黒い羽織みたいなもの。武家装束のひとつ)
もう一人の若者は棚の上の梁に結わえられて、銅鑼のようにもみえる大きな丸い餅を下に落とす…餅切りは餅を切るわけではありません。 舞台の上、少年が乗った棚の上の梁にあたりに、大きく丸い餅がかけてあります。この餅を下に落とすというもの。
これは特別な餅で、結え方が秘伝のため、やり方を間違えるとどんどん締め付けて落ちなくなるというシロモノ。しかも、これかなりの重量で、一斗餅で、15キロくらいあるとか!そんなん3mくらい上から落とすのか!という感じ。そして落とされた餅は当屋に運ばれて、みなさんに分けるのだそう。
先ほどの一瞬で王祇おろし、餅切り、布剥ぎが一気に行われ、これで尋常ごとは終了と共に春日神社での神事も終了になりました。いつもながら、あまりのスピードにどこをみていいのか、目が忙しい。
終了しても、アナウンスがあるわけもなく、みんなわらわらと帰り支度を始め、今年初めて参加した人は、え?終わったの?って狼狽えている人もちらほら。
この後、来年の当屋(受当屋)では布受けの儀とかあったりと酒宴があります。今年の王祇祭終わっても、すぐ来年へ準備がスタートしています。
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令和6年の王祇祭レポートはこれで終わりです。
シリーズ9回にもわたる長編になりましたが、読んでくれてありがとうございました!
まとめに…
王祇祭はとても素晴らしく、一度見たらどんなことが行われているか、知りたくなると思うのです。
でも、今まで私が書いたような情報は散見されていて、目的の事柄を調べるのに時間かかる。
王祇祭の最中は黒川の人たちは忙しく、聞くことは難しいかな…と。
私が黒川に関わって5年経ちました。
その間、黒川の人たちに色々と教えていただきました。私のマニアックすぎる質問にも丁寧に教えてくださってありがたかった!
それをまとめてこのように皆様に伝えることができるのが本当に嬉しい!
王祇祭、黒川能のことを知りたいと思ってくれる人の助けに少しでもなれなら幸いです。