冷凍餃子堕胎
胎児よ、胎児よ、なぜ、
私の内側に躍動する春、ペラペラの薄皮に覆われたぼくたちのひみつが、今日を、未来を、夢を、愛を、暖かな眠りに落ちるまでの時間を、ぶち抜いて生まれてきた。なんて嘘です、浴槽の黒カビが星空に見えて、私はいつだって下を向いてるなって気づいたの。贖う身体、突き出たビニール傘の骨組み、クラスで1番頭のいい男子の自転車のぺしゃんこになったタイヤ、薔薇の蕾の花言葉、こんな言葉を並べたところで届かなかった2.8次元。あなたも私もマーマレードジャム、ぐちゅりと音がして死んだ。
微笑む大人共よ、憐れむがいい、消費すればいい、好きなだけ玩具にすればいい、それを望んでいるなら。怜悧であれば表現なんてしないな
んて言われたらほんと最悪。あの時死ななくて良かったねなんて私の大切を壊したお前には1番言われたくない。私のことクソ傷つけたやつに、お前みたいな子供の詩なんて全然響かないって言われて。ハーゲンダッツってあのサイズ感だからいいんだよねこれより小さくても大きくても許せないよねって言えるくらい大人になったのにまだ私の言葉は、めんどくさくて、ぐちゃぐちゃで生きたくて、イキたくて燃え盛るワンルーム、嗚咽しながらできた詩も「かわいい」で済まされる、ああ、そしたらなにも、
ああこの言葉で届かなかったらもうダメだこの言葉でダメだったらもうダメだああこれで駄目なら死んでしまいたいこれでダメなら死んでしまいたい死んでしまいたい死んでしまいたい死んでしまいたいからこそ。私を遮る言葉たちよ愛する言葉たちよ美しき言葉たちよ今だけは、今だけはしづかに、口を、噤め。
お気に入りのスカートを履いて電車に乗ると必ず痴漢に会うからいつもコンビニで着替えている、隣家の庭に転がる象のジョウロだけが私のかみさま、無人販売所の餃子を盗んだ人は別に餃子がどうしても食べたかったわけじゃないと思う。故郷とは似つかない汚れた夕陽だけ、起き抜けの私を責めず照らしてくれる。雨の日すれ違いざまに彼女が言った「地面がきらきらしてるう」私は、私は。しらない、せかい、しなない、せかい。