「先輩」の話
数年前。断捨離をしていて、
学生時代にお世話になっていた先輩からいただいた手紙が出てきた。
当時、わたしは音楽系の部活動に参加していた。
所属した部はいくつかの音楽系の部活・サークルがある中で最弱だった。
その部に入ったきっかけは、ここなら練習などもきつくなくゆるくいられるのでは、と思ったから。
最弱らしく
先輩方も同級生も少し?コミュニケーションが苦手な個性的な人が多かった。
その人は1つ上の先輩だった。
もしゃもしゃの天然パーマで少し濃い目のお顔立ちだった。
真面目な人だった。
好きな音楽も王道のジャパニーズロックで、だからなのか、洋楽や少し特徴的な音楽が好きなこのサークル内ではちょっぴり浮いていたように思う。
最後は部長をしていたけれど、周囲に面倒がる人もいた。
わたしも気持ちの上では真面目なところが多かったので
先輩とは真面目同士、なんとなく一緒にいたり話したことも多かった。
「大変だね」ってぼやいたりもしていた。
わたしは気持ちばかりが先走る方の真面目だったけれど、
先輩はちゃんとしていた。
最初に戻る。
先輩から手紙をいただいたとき、とてもうれしかったが、手紙をもらうことへの特別な想いはなかった。卒業する先輩とはそんなものかなくらいで。
数年前に改めて手紙を見つけて読み返したとき、
当時は気付かなかった先輩の、人としての誠実さが伝わってきた。
「真面目なだけでわけわからん」奴だったはずのわたしへの感謝と先輩の気持ちが丁寧につづられていた。
なんて真面目で誠実で大人な人なのだろうと感じた。
よくあの部にいたなぁ、違う部だったらどうだったのだろう?
正直に言うと、わたしの中には先輩が、他の部員たちの心を掴みきれないことへのくだらないジャッジメントがほんのりあった。
手紙を読み返す中ですごく恥じたし、申し訳なかったし、その誠実さや大人だった先輩にもっと気付けたらよかったなぁと泣いた。
きっと真面目で有能な人だから、今もどこかで活躍しているのだと思う。
周りも大人ばかりの今ならもっと理解がある人も近くにいてくれるんじゃないかな。