【登壇しました】発達障害・精神障害があってもデザインを学ぼう! #ギークリ 振り返り
この記事は、Adobe Community Exprets presents Creative Advent Calendar 2024の6日目の記事になります。
前回の記事はAJABON GRINSMITHさんの「ギークリ「ExtendScript入門の基礎の初歩の最初」ひとり反省」でした。
2024年11月23日に東洋美術学校にて開催された「GEEK CREATORS 2024」で、ミニセッションにて登壇させていただきました。
障害福祉施設での講師業で初めてのセミナー形式の登壇ということで、普段利用者さんの前で直接行うレクチャーやオンライン講義とはいろいろ勝手も違い、いつもと違った刺激をたくさんいただきました…!
今回、周囲のAdobe Community Expertの皆様が、アドビソフトを使ってどういったクリエイティブができるのか、機能を使いこなすことによって得られる様々な体験を高いレベルでセッションされている中、私のセッションは「発達障害・精神障害があってもデザインを学ぼう!在宅ワークで合理的配慮のあるデザインの教え方」と言う、操作ではなく「特定の方にどうやって合理的配慮を工夫しながらアドビソフトを教えるか」という完全に方向性が浮いてしまっているといっていい内容でした。
私がこの内容でセッションをしたいと思ったきっかけは、就労支援施設で毎日利用者さんと向き合う日々の中で、答えの出ない課題や、先人やノウハウがまったくなく、一人で合理的配慮を考えながらデザインを教えるということが、どのくらい世の中に需要があり、私の声が届くのが、挑戦してみたかったという動機がありました。
「皆が当たり前だと思っていることが当たり前にできない」人に、どうやってPhotoshopやIllustratorでデザインする楽しさを知ってもらえるか。
「人生の浮き沈みの中で、生活保護や障害年金に頼りながら就労支援という福祉にたどり着いた人」「福祉サービスを利用してなんとかデザインで手に職をつけたい」という切実な人々に、健常者と同じパフォーマンスを求めることでしかソフトの操作を教えられない現状はどうなのか。
やる気はとてもあるのに、障害特性に対する配慮の仕方を誰も知らなくて、一般的な講義スタイルや教材や書籍だけでは学ぶことが困難な方が日々私の目の前にいて、すがるように福祉に頼って就労支援にやってくる。そういった人たちを前にして、夢中でこたえていくうちに、少しずつ見えてくるものがあって、それを今回プレゼンという形で、GEEK CREATORSで共有させていただきました。
このセッションでまず一番に伝えようと思ったことは、
「ソフト操作をいきなり教えるのではなく、認知特性のヒアリングがとても効果的だった」ということでした。
認知特性とは、人が情報を外部から認識するとき、認識しやすい情報と認識しにくい情報に優位性があることを表す言葉です。
視覚優位(目から入る情報)、聴覚優位(耳から入る情報)、身体感覚優位(身体の感覚から得られる情報)、などがあります。
「書籍をみても全然入ってこない」という方は、聴覚優位があるのかもしれません。Photoshopを操作するところを画面共有してもらいながら、その場で声をかけるととてもスムーズに操作を覚えられたという体験がありました。
また、「講義を受けても1度じゃ覚えることが難しい」という方も多いため、動画で何回も見直せるよう、操作を画面録画して共有することでPhotoshopの操作を覚えられたケースもありました。視覚優位が強い方だったのかもしれません。
また認知特性は、ご本人が認識していないこともあります。
PhotoshopやIllustratorのUIは、慣れてしまえば勘所がつく方が多いですが、慣れるまでどうやって操作を覚えてもらうか、福祉施設も時間は有限で、私の稼働時間も限られている中、様々なタイプの障害特性を持った方に教える現場で有効だったのが「操作を説明しながら画面を見せること」「その録画をアーカイブすること」でした。
それだけじゃ対応できない利用者さんも時にはいらっしゃいますが、この2つがそろうことで、操作を教える合理的配慮としてはかなり幅広い特性の方に対応することができたように思います。
(逆に情報が多いと混乱するのでテキストだけでまとめてほしいという事例もありました)
セミナー後、「どうしても同時に教えなければいけない場合どういう配慮ができますか?」という質問をいただいたので、せっかくなのでこちらでも共有させていただきます。
「今日はIllustratorのペンツール」「今日はPhotoshopのペンツール」と「今どちらのソフトの何の機能をやっているのか」を毎回明示すること、「Illustratorではこうだったけど、今回はPhotoshopなのでこういう仕様になります。とても似ているけど違う部分があるので混乱しやすいですよね」と「似ているけど違うから混乱しやすい」という視点を講師側から利用者視点に立って、感じるであろう混乱やストレスを言語化して先回りして発散することが効果的でした。
就労支援は、障害者総合支援法で指定された福祉サービスです。
福祉の現場で働く者として、クリエイティブ業界からこの障害福祉業界に来た者として、たとえどんなに自分がデザインに自信があったとしても、この業界で教えるという仕事には全然答えがなくて、私がこうして共有している事例ですら「現在の私の」最適解でしかなくて、私がいつも正しいことをしているという手ごたえはまったくありません。日々、これでよかったんだろうか…?と自問自答しながら、利用者さんと向き合っていく毎日です。
このセッションを準備する中で、私が一つ確かなものとして芯にしていることは「Photoshopを使えてデザインができて楽しかった」「Photoshopが好きだ」という気持ちに改めて気づきました。
どんな人でも、その人らしく学ぶために、私ができることは「Photoshopを使えて楽しい」という気持ちを軸に、利用者さんと毎日向き合っていくことだと思っています。
私は偶然障害福祉の世界で講師をすることになり、発達障害や精神障害の方と日々向き合っているうちにそれが仕事となりましたが、それは私の人間性が良いとか福祉の崇高な精神があるとか、そういうことではなく、ただ日々がむしゃらに障害福祉の現場で、人とPhotoshopとデザインに向き合ってきたことが、たまたまとことん向き合う性格とマッチして、仕事になっただけなんだと思っています。
私自身もとても不器用な性格なので、施設経営層とうまく歩調を合わせること、不特定多数の集団の空気を読むこと、自分の中で筋が通らないことを黙って受け流すこと、Adobe Community Expertとしてもっとキャッチーなテーマに消化したり、アピールすることはとても苦手です。
このセッションも、人を多く集められるようなテーマではないし、私自身もフリーランスやデザイナーとしての実績がほかのAdobe Community Expertとならぶとけして目立つものではない中、こうしてGEEK CREATORSという場所で、こんな異色のセッションをする機会をいただけたことにとても感謝しています。
障害のある方と向き合いながら、力不足で悔しい日々もあったり、環境由来の制約でどうしても十分な配慮が出来ない時もあり、挫折を感じることが多い仕事ですが、私はそういったことをうまく受け流せずいつも「どうしたらよかったか?」と突き詰めて考えてしまうので、本当はあまり対人援助に向いていないかもしれないと思うことも数多くあります。
そんな葛藤の日々の中、福祉業界でこういう活動をする私をAdobe Community Expertとして認定していただいたことで、視界が広がったこと、頑張れたこと、他のプロの方との交流で救われたことがたくさんありました。
今後私がちゃんとAdobeにとってメリットをもたらせる存在であれるか、またこうした機会をもらえるかはわかりませんが、今回GEEK CREATORSという場所で沢山の人から反響をいただけたことがとても得難い体験で、こういう扱いにくい私でも、まだ誰かにできることがあるかもしれないと思えました。
空気を読んだり他者と利害を一致させ続けるのが苦手な私なりに、Adobe Community Expertとしてやれるところまで頑張って活動し続けようと思います。
そしてこれからも、明日も、障害福祉の現場でデザインを教えることを頑張っていこうと思います。
最後に、私を登壇させていただいたGEEK CREATORS 2024実行委員会の皆様、東洋美術学校の皆様、開催に向けて尽力していただいた皆様、本当にありがとうございました。
アドビソフト大好き!というほかのCommunity Expertの方のセッションが本当に楽しく、来場者の方の空気もよく、楽しいイベントに参加させてもらえたという実感でいっぱいです。
当日関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。
DTPの勉強会の忘年会に参加予定です
去年から出たいと思っていたDTP勉強会の忘年会に今年は参加予定です。
もしいらっしゃる方は忘年会でお会いできればと思います!
http://dtpstudy.blog51.fc2.com/blog-entry-141.html
一応まだフォームがあるので、申し込みができるのかな…?
何かご迷惑おかけしたら下げますのでよろしくお願いします。
本当はこちらも気になっていてすごく参加したかったのですが日程がかぶってしまったので、私の代わりにどなたかぜひアドビアプリ自動化もくもく会もよろしくおねがいします!
Adobe Blogでセッション内容を紹介していただきました
アドビの岩本さんが私のセッション内容についてAdobe Blogで紹介していただきました。お聞きになられていたことに気づいていなかったのでびっくりしました!
Adobe Blogに載る日が来るとは思わなかったので、妹や家族にいっぱい報告してしまいました。本当にありがとうございます。
https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/12/05/cc-design-event-geek-creators2024tokyo-report
以下は慣れない宣伝です
今回のセッションのアーカイブ動画を、メンバーシップ限定で公開しています。
今回沢山の方から質問をいただいたり、合理的配慮が必要な立場にいる方、もしくは合理的配慮の方法を知りたい方、いろいろなケースの相談や質問を受けて、私にできる事例共有をもっと発信していきたいと思いました。
noteのメンバーシップ機能という慣れないものを作ってみたので、まだコンテンツは少ないですが良かったら必要な方は有料ですが加入いただけると幸いです。
discordでの個別に質問できるプランも用意しています。
【セミナーアーカイブ】
20241123発達障害・精神障害があってもデザインを学ぼう!
https://note.com/aisanlab/n/n11266d661ee9
※機能をわかってないところがあるので、見えない!などありましたらぜひ教えてください…!