弱点
私の弱点を一つ挙げるとするならば、それは、一度好きになった人のことをなかなか嫌いになれないことだと思う。
それは損切りができないというのは少し違って、たとえばどんなに酷いことをされたとしても、本当はこんな事情があったんじゃないかとか、そうせざるを得ないような背景があったんじゃないかとか、それか本心から来るものではないと信じたいと思ってしまう心の動きだ。
言うまでもなく、本当の事情も、背景も、存在しなくて、ただその人はそういう人だったというただそれだけの話だ。結局私は、その人のことなんて何にも見えてなくて、その人の幻想を、ただ見ていただけだったんだ。
普通そんなことしない、と思うことも、私と、他人の普通は違うから、他人は当たり前にする。十数年経っても付き纏う自他境界という言葉。そういえば、私の大好きな宇佐見りんの小説『かか』は、自分と、母親との間にうまく境界線を引けない苦しさ、その葛藤が描かれた話だと思う。どうか映画化がうまくいってほしい。