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書く習慣アプリ忘備録 2024.9
「書く習慣」アプリにて、毎日出題されるお題を使用した小話のログになります。
SF(少し・不穏)多めとなりますのでご注意ください。
9.30 <きっと明日も>
「花が咲くのは?」
「あと1年」
「旅行に行くのは?」
「あと1月」
「空が晴れるのは?」
「あと1週間」
「おやつのケーキは?」
「あと3日」
「幸せなのは?」
「これまでずっと」
9.29 ‹静寂に包まれた部屋›
画面がうるさく瞬いている
此方を見てよと瞬いている
換気扇が回っている
気付いて頂戴と回っている
目覚まし時計がないている
早く起きてとないている
白い腕は伸ばされて
そのまま冷たく冷えてかたまり
一つ一つ全部静かにできるまで
綺麗でいてねと嘯いた
9.28 ‹別れ際に›
「ねえ君、私の君。一つ頼まれてはくれないか」
「なんだい君、私の君。珍しいじゃないか」
「また明日、と。言ってはくれないか」
「君、」
「後生だ、この一度っ切でいい」
「……私は、嘘が言えないよ。知っているだろう」
9.27 ‹通り雨›
ぽたぽたと黒雲が涙を零していた
どうしたのと問えば逸れたのと言う
数時間前の豪雨を齎した雲は
とうに風で流されており
一応と方向だけ指し示せば
ありがとうの言葉を置いて
青空を遅々と流れていく
果たして追い付けるだろうか
水溜りを狭く叩く大粒は
もって二時間だろうけど
9.26 ‹秋🍁›
「絵文字って何なん、スタンプで良くね?」
「それな。読み文字は単色で良いんだわ」
「まじほんと……ねえまじで出てこないんだけど
これ何で変換するの」
「何?……『こうよう』とか『もみじ』とか?」
「どっちも駄目だったんだわ既に」
「えええ、あと何あるの難易度鬼じゃん」
「まじ無理」
9.25 ‹窓から見える景色›
いつも同じ道を行く
いつも同じ景色が見える
、訳じゃなく
季節が変わって店の装いが移ろい
時が過ぎて人々もまた移り変わる
街路樹が朽ち遠山に緑が増え
広い空を刺しクレーンが回る
いつも同じ道を行く
いつか見られぬ景色を行く
9.24 ‹形の無いもの›
名前をつけたら何処にでも有った
名前をつけたら初めて見つかった
名前をつけたら当たり前になった
名前をつけたら過去になった
名前をつけたら関係が変わった
名前をつけたら愛おしくなった
名前をつけたら
名前をつけられたら
いくつかの音で文字でそれだけで
触れられもしない記号の上
名前をつけられない幾つもの
認識出来ない未知の中
それでもその脚が立ち止まる
理由に十分足りるなら
9.23 ‹ジャングルジム›
外をくるくる
隙間をすいすい
頂上とんとん
飛び降り隣に
足の速さだけが
必勝法じゃないんだと
アスレチックの王様は
鬼から逃げ切り笑ってる
9.22 ‹声が聞こえる›
例えば傷付いて
泣き出しそうな時
例えば挫けそうな時
だけじゃなくて良いから
小さくて良い
一言でいい
直ぐに行くから
一生のお願いだから
どうか、呼んでほしい
9.21 ‹秋恋›
コスモスの花を贈った
可愛らしい花言葉を
君が存外気に入ったから
秋になり花弁が開く度
一輪添えて招待した
桃に白に赤に触れ
君は何度も微笑んだ
秋になる度思い出す
花弁開く度思い出す
茶色の花を一輪摘んで
星の輝く空を見る
9.20 ‹大事にしたい›
幸せなのが好きでした
大切な人が幸せなのが好きでした
親が兄弟がお世話になった親族が
最期まで幸せであれば良いと思い
出来ればそれを看取らずに
誰一人も見送らずに
私が一番に消えたなら
多分それ以上は無いのだと
9.19 ‹時間よ止まれ›
生まれて
大きくなって
成長して
大人になって
枯れ老いて
眠りにつく
有限たる生命、その全てが美しく
その全てが素晴らしかったから
全部が永遠であれば良かったのに、と
花を一つ、君に手向けて
9.18 ‹夜景›
地上の灯火は人々の一生で
夜空の燈火が星々の一生なら
星となった君は
次は何処で光を点すのだろう
9.17 ‹花畑›
例えばこんな景色の下で
他でもない君と共に
心弾ませて歩くことが出来たなら!
9.16 ‹空が泣く›
「泣いているよ」
「引っかき傷が傷んだんでしょ」
「泣いているよ」
「炙られて熱かったんでしょ」
「泣いているよ」
「煙がしみたんでしょ」
「泣いているよ」
「呆れて諦めちゃったんでしょ」
「絶滅と崩壊に?」
「変わり映えしない愚かさに」
9.15 ‹君からのLINE›
日に三度
時々もっと
光る画面
未読でごめんね
透ける指先
9.14 ‹命が燃え尽きるまで›
神を見た
捧げられた宝玉に触れ
満足に微笑む神を見た
誰もが心奪われ
誰もが魂囚われる
愛しく慈しむ眼差しに
ある人は木を掘った
ある人は機を織った
ある人は弦を鳴らし
ある人は字を連ねた
皆神に焦がれた
あの眼差しを受けるに足る作品を
あの微笑みを間近に受ける僥倖を
心を込めて
魂を削って
命を燃やして
精根尽き果てて尚
神に焦がれた
慈愛に焦がれた
そしてそしてそのくには
神が微笑み歩く宝物庫は
作品以外は何もかも
誰もかも残ってはいない
9.13 ‹夜明け前›
帰ってこれてよかったね、と言う
よっぽどの悪い噂があったから
あんなところに行くなんて、と言う
お世辞にも良いところじゃなかったから
これからは真っ当に生きなさい、と言う
一応にも若い年齢であったから
でもさ、でもさ、そういうお前ら
私がしんどかったとき、皆見て見ぬふりしたくせに
嘘でも偽善でも紛い物でも抱き締めてくれた、
顧客でも商材でも私を見てくれた、
あの人を、あの人達を、愚弄する資格があるとでも
9.12 ‹本気の恋›
空を愛し花を愛し
海を愛し星を愛し
光を愛し時を愛し
美しい物ばかり愛する
そんな君が美しいから
どうか僕のことなんか
絶対一生涯全く永遠に
気付かないで下さいな
9.11 ‹カレンダー›
世間の行事
家族の誕生日
友達の記念日
君との約束
無表情な空白を
塗って貼って描いて潰して
そうして生まれた唯一の
たった一日の真っ白に
僕はその日と決めたのだ
9.10 ‹喪失感›
すうすうつめたいよことなり
ひんやりつめたいなめらかさ
なんにもしゃべらなくて
なんにもわらってくれない
さみしいさびしい
よことなりのきみ
それでもそれでも
それでもわたし
きみのしんぞうがほしかった
9.9 ‹世界に一つだけ›
雪の結晶 水の流れ
光の加減に気紛れな風
手を振った君の表情すら
何一つ何一つ変わらない
同じ事など二度と無いのだから
9.8 ‹胸の鼓動›
心臓の音を聞くのが好きだった
君が抱き寄せて話すとき
楽しかったこと嬉しかったこと
悲しかったこと悔しかったこと
言葉と共に色為すリズムが好きで
嘘のこと物語のこと
現実のこと本当のこと
隠し事を筒抜けてしまう心が好きだった
ある日君は居なくなって
そしてある日帰ってきて
作り物の体で血肉のない身体で
泣いて泣いて帰ってきて
ごめんねとべたつく黒い涙
ありがとうとせめて拭った
音のない臓器でも
二度と真実を見抜けなくても
それでも帰ってきてくれた
約束を破らずにいてくれた
それだけでもう十分だった
9.7 ‹踊るように›
赤が舞い
黄が散り
茶が落ちる
はらりはらはら力無く
くるりくるくる風の中
降り積もった道の上
暖色のカーペット
枯れを踏み砕き
萎れを潰し鳴かせ
全て土ヘと還す様に
夏色を脱ぎ去り
秋へ手を伸ばす
9.6 ‹時を告げる›
もう朝だよ、と声がする
手を伸ばす先、仄かに笑う音
そろそろ出る時間だよ、と声がする
慌てて濯ぐ口、焦らなくても大丈夫
もう切り上げたら、と声がする
上げた視線の先、疲労の重み
ご飯食べないの、と声がする
見つめていた画面、柔い目隠し
寝る時間だよ、と声がする
一人切、温かな布団の中
私を生かす声がする
私の好きな音がする
9.5 ‹貝殻›
海を聴く
硬い外殻に耳を合わせて
波を聴く
空っぽの虚に雑音を響かせて
声を聴いた
あの日遠く泳いで行った
小さく消えた君の髪を
9.4 ‹きらめき›
狐の嫁入り
架かる虹
雫華やぐ空の下
いつも君を思い出す
9.3 ‹些細なことでも›
紙の一枚
髪の一本
皮の一枚
息の一つ
瞬の一秒
それだけの
それだけなのに
たったそれだけで
届かない
9.2 ‹心の灯火›
湧き上がる感情が勇気だと
震える拳が興奮だと
正義と秩序を謳い立つ君の背に
それは恐怖であり
それは憎悪であり
紛う事なき危険信号であることを
告げるには
少し
情を掛け過ぎてしまった
9.1 ‹開けないLINE›
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