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真っ赤な椅子に座って
渋谷が嫌いだ。人間の多さで息が詰まりそうになるから、よほどのことがない限りは近付かないようにしている。けれども、ユーロライブに行く日だけは特別な気持ちで改札を抜けることができる。
妖艶な色をしたネオンの中にひっそりと佇むコンクリート壁の建物。飲み物を買うために寄るコンビニの棚にはいつだって、この街の夜がはっきりと映っている。
初めて訪れたのはたしか、コントライブ「夜衝」を観たときだった。座席に置かれたフライヤーがキラキラしていてとても綺麗で、クリアファイルに挟んで大切に持ち帰った。幕間に流れていたカネヨリマサルの曲は、今でもたまにあの日の記憶とともに脳内で流れ出す。
帰り道、こんなに面白いんだと感動すると同時に、少し怖くなったことを鮮明に覚えている。この世界に足をつっこもうとしてるんだ、と。詳しい日時を確認したら、もう4年も前のことだった。
先日は、テアトロコントを観に行った。コントと演劇を各組30分ずつ上演するという、定期的に行われている公演。
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劇場に入り、ふかふかとした椅子に座る。開演を待ちながら、薄暗い舞台にそっと自分の姿を重ねては消す。あの頃と変わらない真っ赤な椅子に座った、変われない私。ここに来るといつだってそうしてしまう。どうしてユーロライブにこんなに憧れるんだろうか。
終演後は、アンケートを少しだけ記入してすぐに劇場を出た。
建物の出入口の近くで、隣のLOFT9でやっていたイベントの出演者を出待ちをしている女性がいた。話をするその姿から、彼女はこの時間をとても大切にしているようにみえた。これはこの場所に限らずだが、劇場は出る側も見る側も、多くの人の気持ちが交差する空間だと思う。ずっとそうであってほしい。
時折迷うことがある。自分はコント師にはなれない。正確には、コント師とは呼んでもらえないことがとても多い。コントじゃなくてピン芸。コント師じゃなくてピン芸人。もうさ、わかったって。これからもっとだろうな。女ピンって軽い感じで言ってくる奴らに対しても同じ気持ちを抱いている。
呼ばれ方でネタの濃さが変わるわけではない。正直、そんなことを気にする暇があったらもっとやることがあるということも理解している。
自分の気持ちの問題といったらそこまでだが、そう言うのはいつだって「そうじゃない側」の人間だ。
括られ方を咀嚼できずに、しかめっ面で腕組みしている心の中の小さな自分を、「まずは声量を大きくして、次のネタ見せの準備をしようね」となだめて、なんとか気を紛らわせた。
熱くなった顔を、冬の風がすぐに冷やしてくれた。坂道を下っていると突然大粒の雹が降ってきて、多くの人が雨宿りをしていた。
珍しく隙間のある渋谷の街を、私の中で最大限涼しい顔ですいすいと歩いた。うとうとしながら電車を乗り継ぎ、最寄り駅に着いたら傘はもう必要なかった。
【2月のライブ予定】
お取置き全てお待ちしております✉️
ご質問どんなことでもDMください。Xもやっております️
●2/2 (日) 新道竜巳の女芸人フェス
10:00開演 高円寺北区民集会所第1集会室
→2回目です!初めての場所で、迷わないか今からすこし心配
●2/8(土) オリーブゴールド
18:00開演 新宿Fu-
→マセキに属すためのライブです!なんとか9回目になりました。私は今受けている事務所オーディションはここだけなので、そういう気持ちで向かいます!とっても観に来てほしい
●2/9(日) ライジングオレンジ
17:00開演 新宿Fu-
→前の月のオリーブゴールドから2組、先輩のライブでネタをやらせていただきます!ようやく出られることになりました😿嬉しい頑張ります!
●2/16 (日)夜 ライブあります
→Xでお知らせします