真っ赤なピエロ【#告白水平線 #毎週ショートショートnote】

「ねえ、どうして地球は丸いかって考えたことある？」

彼が海岸に腰掛けながら唐突に言葉を漏らし、私は少し間を置いてから首を横に振る。

「科学的にも根拠はいくつかあるらしいんだけど。俺の説を聞いて欲しい」

「いいよ」

「ありがとう。
俺はまず、地球が丸いなら俺たちは丸いボールの上で生活していることになると考えた。小さいボールの上に乗るのは不安定。それがもし巨大なボールだったとしても、不安定なことに変わりないだろう。
それじゃ、地球はもっと大きいはずなのに、俺たちは不安定さを感じてない。いや、それは感じていないだけで、本当は不安定なまま生活しているだけなんだと思ったんだ。
つまり、この地球で暮らしている限り、安定なんてない。いつ転んでしまうかわからないってことなんだよ。だから、地球は丸いんだ」

彼が何を言いたいのか、よく分からなかった。

「だから、俺は、きっと君の手を離すことはない。だって俺はピエロだからね。玉乗りは得意だし」

戯けてみせる彼の顔は、水平線に涼む夕陽に照らされて真っ赤だった。

（439文字）

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たらはかに（田原にか）様の企画に参加させていただきました。
この後、この彼の表情はきっと暗がりで笑っていると思います。ピエロなので。