夢物語り【#ショートショート】
夢を見た。
でも、どんな夢だったのか。まるで覚えていない。それでもなぜか“夢を見た”という事実だけは、はっきりと覚えているの。
この感覚を誰かに話しても、きっとわかってもらえないだろう。――他人の夢の話など、最もつまらないものなのだから。
ただ、わたしにはたった一人だけ、わたしが見た夢の話に耳を傾けてくれる人がいた。
ただ、笑ったり悲しんだりはしない。
「おもしろかった」って、一言ぐらい欲しいと願っても罰は当たらないはずよね。
夢のことを語る度に、わたしの心は重くなっていた。
吐き出しているはずなのに、どうして?
その人はわたしの心に住み着いたまま、今もわたしの夢の話を聞いている。
そう、今読んでくれている、あなた。あなたに話しているの。