空っぽの【#心お弁当 #毎週ショートショートnote 】
それは私が初めて就職した幼稚園の遠足の日のこと。
地元の大きな公園へとみんなで遠足に出かけた。
お昼になり、芝生が広がる広場で班に分かれてレジャーシートを敷き、各々が持参したお弁当を食べる。
私も班を担当することとなり、数人の園児とともにレジャーシートに腰を下ろした。
すると、一人の園児が鞄からお弁当を出さずに俯いていた。名前は確か、心くんだ。
「心くん、どうしたの? お弁当忘れちゃった?」
そう言いながら、心くんの鞄を探るとプラスティックのお弁当箱が見つかった。
「なんだ、あるじゃない。もしかして、お腹痛いの?」
心くんは首を横に振る。何か訳があるのだろうか。
私は心くんのお弁当箱を手に取る。その瞬間、すぐに違和感を覚えた。
やけに軽い。中身が入っていないようだった。
蓋を開けてみると、中は空っぽ。よく見ると蓋の裏側に文字が書いてあった。
そこには『こころおべんとう』と、書かれていた。
その字は、とても綺麗で無機質な字だった。
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
複数の意味を含んだお話です。結末をどう捉えるかはおまかせします。