視界不良好【#メガネ初恋 #毎週ショートショートnote】
「それではこちらはどうですか?」
「えーっと、右ですかね」
「それじゃ、これは?」
「……左上?」
僕の言葉にうんともすんとも言わないのは、ちょっと酷い。
まるでAIに検査されているみたいだ。
幼馴染みが眼科医として開業したと聞いたので、わざわざ診察に足を運んだというのに。最近衰えを感じ始めた視力に不安を上塗りされた気分だ。
あっているのか、間違っているのか。「よくわかりましたね」と一言添えられるだけでも、こういった検査のモチベーションは変わってくるのだが。
「それじゃ、このメガネをかけてください」
手渡されたメガネを恐る恐るかける。
すると僕の視界は先程よりも鮮明になった。
「では、私はわかりますか?」
声に顔を上げると、そこにいたは僕の幼馴染みではなく、まったくの別人。
僕は来る場所を間違えたのか。
すると、僕の目の前にいた別人がおもむろにかけていたメガネを外した。
「どうやら、よく見えているようね。頬が赤いわよ」
心臓がドクンと大きく鳴った。
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
初恋って実ることが少ない印象があるせいか、どうしてもそれをテーマにすると悲観的になってしまいそうになりますね。なので、今回はあえて可能性が芽吹いた形にまとめました。