プロセスマイニングの可能性と現状について|〈後編〉プロセスマイニングを広げるための課題
この記事は、2021年8月10日行われた、株式会社SHIFT主催「89(バグ)祭り」のトークセッションの内容をまとめたものです。
動画のご視聴は、こちらからどうぞ。
〈前編〉プロセスマイニングのイメージは、こちらからどうぞ。
6. 日本におけるプロセスマイニングの現状と課題
長尾
プロセスマイニングの現状と今後の課題に、話を移していきたいと思います。現状、いくつかの指摘がありましたが、プロセスマイニングの活用を現実にするために、何が必要で何が足りないのか、あるいは何が一番の障壁になっているのかをお聞きしたいと思います。
企業名は結構ですが、こんなお客さんでこんなことになっているよというような現状をお願いします。
田口
寺島さんがおっしゃったように、日本企業にはプロセスという概念がないんですね。部門ごとに動いて、お互い気働きで協調動作をする中で、大きな一連のプロセスをまあ何となくうまくやってきたというのが、日本の強みでもありますし、今となっては弱みに転換してしまっていると思います。
目の前の業務にはすごく詳しいし、一生懸命やるんだけども、それが全体として貢献しているのか足を引っ張っているのか、そんなことはどうでもいいという感じで、それを俯瞰的に見る人たちが日本にはいなくて、そういう人を育成し、ちゃんと定着させるという活動を寺島さんたちがIIBAという団体でやっていらっしゃるんですね。
言い換えると、そういう人がほとんどいないというのが、まず最大のボトルネックです。海外の企業を見に行くと、ほとんどの企業でプロセスオーナーという人たちがいるし、プロセスアナリストという専門家が大概いるんですね。
日本の場合は、IT企業さんとか、IT部門の方がプロセスマイングのカンファレンスに出てくるんですが、現場のプロセスに責任を持っている人たちっていうのがいないので、出てこない。日本では始まってはいるけれど、プロセスマイニングが定着しているとは言えないのが、現状だと思っています。
7. プロセスマイニングを広げるための課題
長尾
寺島さん、課題っていうのは何だと思いますか。
寺島
まず、日本企業の経営陣が、プロセスが大事だっていうことに気付かないといけない。自分たちがビジネスをして、構造とか、プロセスとか、ビジネスアナリストの世界では、ビジネスアーキテクチャーと言うんですけれど、いろいろな用語も含めて、自分たちの得意なビジネスが何かってことをわからないといけないですね。
これを、全部現場に押し付けているっていうのが問題ですね。これまでは現場の人たちが優秀だったからよかったんですね。田口さんが言われているように、これからいろんな部門が連携しようとしたら、そこはお互いにわかっていかないと、全体を最適化できませんから。
そういった意味で、プロセスはすごく大事ですよというのを、マネジメントとして気づかないといけません。ツールも含めて「プロセスの見える化」っていうのをきちっと全社的に進めましょうっていうそういう基本を作っていかないとやはりまずいんじゃないかなと思いますよね。
長尾
時代が違うというか、業務処理手順書はうちあるだろうみたいなことですね。昔からある業務手順書というのと、今行っているプロセスっていうとは、ちょっと質が違うよということなんですよね。
田口
そもそも業務手順書があったとしても、今日参加されている皆さんの中で、会社の手順書を見たことがあるという人は、1%~2%、そもそもいるかっていうことですね。
長尾
現場の工夫によって、どんどん改善してきているというところが、ドキュメントには何も残っていないということですよね。具体的には、何から取りかかればいいのでしょうか。
8. 何から取りかかるべきか
田口
ここ数年来ずっと、DXということが言われています。これが曖昧にとらえられていて、AIを普及することだとか言われていますけれども、欧米企業の事例を見ていると、結構明快ですね。本業をいかに強化し革新していくかということですね。本業というのは、製造業で言うと、調達、生産、物流、販売という一連のプロセスです。
これを通じて、顧客体験をいかに行動化していくのかということが大きなテーマですね。それにならって、日本企業もう新規事業をやるとか、他社とアライアンスを組んで、今までやっていないことをやるということではなくて、本来やっている業務をもっと革新していくためにはどうすればいいのかっていう発想に立ち戻っていただく。
今の業務ってどうなっているの、どこがボトルネックでどこがアドバンテージなの、どこで価値を生んでいるの、どこに人手が膨大にかかっていてどこが自動化されているの、みたいなことをすべて可視化していくということですね。
これが見える化されると、人手がこんなにかかっているから、ここはAIでやろう、ロボットでやろうとかですね、そういう発想に行ける。これがデジタライゼーションなのですけどね。
ところが、難しくDXを捉えすぎている、全然これまでやっきてないことをやらなきゃいけないというふうに思ってしまっているところがある。そこをもうちょっと整理してほしいと思います。
長尾
寺島さんいかがですか。
寺島
田口さんがおっしゃったように、儲けている既存事業をいかに効率化するか、生産性を上げるかというのもDXの課題のひとつですよね。RPAをたくさん入れていますけど、どこを戦略的にRPAに変えていかなきゃいけないのか、プロセスありきで見ないとうまくいかないんですよね。
儲けている業務を、どうすればもっと利益を出していけるかという視点に立つと、プロセスの見える化から手を付けるというのは、非常に有効な話だと思うんですね。
ある製造業の会社が、グローバルで、自分たちのプロセスを全部見える化しようとして、それをやったことにより、業務の改革みたいな形でIT部門がやったのですけど、その部門のポジションが上がって、発言力が強くなって、すごく仕事がやりやすくなったって話があるんですね。
DXでやるべきことがわからないのだったら、まずにここからスタートしましょうかっていうのは、誰でもわかるんですよね。
まず、問題点から見える化しないと、わからないですからね。
9. 現場にプロセスマイニングを入れようとすると反発がある
田口
現場にプロセスマイニングを入れようとすると、結構反発があるんですね。俺たちははちゃんとやっているから、俺たち以外のところでマイニングしてっていう話は、結構聞いたりします。じゃあ、その現場が関わっている事業がどれぐらいの売上高があって、どれくらいの利益率があるのかですね。儲かってはいるのだけれども、2桁には全然届かないというケースが結構あるんですね。
たとえば、利益率を2ポイント上げられるとすれば、それなりの企業だったら数億、数十億のリターンがあるわけで、プロセスマイニングの課題でよく言われるのが、ツールが高いとかコンサルフィーが高いって話があるんです。すぐ1,000万円~2,000万円はいってしまいます。しかし、1億、2億リターンがあれば、1,000万円~2,000万円かけるのは、全然オッケーな話なんですよ。ここらへんのValue for moneyの発想がちょっと弱いのかなという気はします。
10. まとめ
長尾
本日は非常に限られた時間でございまして、まだお話ししたいことは、たくさんあるのですが、一応まとめとして、プロセスマイニングの必要性だとか、そういった可能性はご理解いただけたかなと思います。
弊社では、プロセスマイニングの紹介ウェビナーなども、実施しています。また、さまざまな情報をノートで発信したり、社内でCelonis(セロニス)認定エンジニアの数を増やしたりもしています。
ぜひ、ここに上がっているような情報源を探っていただいて、ご理解を深めていただければと思います。
今日は短い時間だったものですから、もっと生々しい話もあると思うんですけれども、またの機会にということにしましょう。「89(バグ)祭り2021」ということで、プロセスマイニングとは何かということをご理解いただけたと思います。
本日は、ご静聴ありがとうございました。
寺島さん田口さんありがとうございました。
Airitech(エアリテック)
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