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ショートショート:胎児の頃を思い出す

胎児の頃に見た夢を、思い出すように見た。

自分と同じ形のものが無数に海の中を漂っている。
それらは一つの場所に固まり、より大きなものに変わった。
僕も同じように、より大きなものになった。

水の流れに逆らって動けるようになった。
自分より小さなものを食べるようになった。
この頃には、同じ姿のものと一緒に行動するようになった。

あたりが水ではなくなった。
上の方から光が強く照りつけ、体の渇きや温度の変化に苦しむようになる。
手足が動かせるようになって、色々な動きができるようになった。

何よりも大きくなった。
あるものはあらゆる生き物を狩り、あるものはこの世で一番高い木の葉を食べる。
ある日、天からやってきた火の玉により、終わりに向かっていく。

夜から昼へ行動範囲を広げた。
木の上から、大地に住まうようになる。
自分の体以外のものを使用して、周りに干渉していくようになる。
体よりも、周りにあるものを変化させていくことが重要になる。


目が覚めた。
夢の内容は覚えていない。
ずっと昔、産まれるより前の記憶だった気がする。
なぜだか、それが不思議なことだとは思わなかった。

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